MaaSって何? CASEって何? 交通のラストワンマイル問題に挑む「ニッポン発」の小難しくない自動運転(2/2 ページ)
おぉこれは老後が安心……!! ヤマハ発とWHILLの取り組みに期待。
「自動運転車いす」で解消する、広い公共施設のラストワンマイル問題
交通のラストワンマイル問題に挑むもう1つのメーカーは、新世代電動車いすを開発する国内ベンチャーのWHILLです(関連記事)。
WHILLはCES 2019で、自社の電動車いすを自動運転対応までに進化させ、空港などの広い公共施設内などで「移動サービス」を提供する取り組みを発表しました。
こちらは、移動手段(モビリティー)のサービス化を意味する「MaaS(Mobility as a Service)」と呼ばれる取り組みの一環です。MaaSは旅客機、鉄道、バス、タクシー、自家用車、自転車などの移動手段を、これまでのように個別の会社、方法、料金制度で捉えるのではなく、シームレスに統合しが「1つのサービス」として考える概念のことです。
現在は電車ならばきっぷ代、自家用車ならば車両代や維持費、ガソリン代や高速代などと、同じ「移動する」にしてもそれぞれ別のモノ、コトとして考えていると思います。それを「どこからどこまで行く。料金は○円です」……とここまでシンプルになるイメージです。
そのために「現在の交通体系の概念から一変する可能性がある」とされ、日本でも急速に注目され始めています。同社は先だって、小田急電鉄が音頭をとる「小田急MaaS」(関連記事)に参画することを発表しています。
では、このMaaSの考えの中で電動車椅子が自動運転の機能を持つと、どんなことができるようになるのでしょう。想定されているのはこんなケースです。
あなたはお年寄り。足腰が弱ってしまったので、若い頃のように広大なショッピングモールを自由に歩き回れなくなり、買い物するのにも不便が生じるようになりました。
こうした施設には、大抵の場合車いすの貸し出しサービスはあります。しかしそれを利用するには介助者が必要です。家族、ヘルパーさん、施設のスタッフなどでしょうか。
行きたいのに1人では難しい。でも、他人に手伝わせるのは申し訳ないし、窮屈である。あなたはこんな風に遠慮してしまい、出掛けることさえもおっくうになってしまうかもしれません。
ここに適合するのが、近未来パーソナルモビリティー(関連記事)です。そして、最終目的地までのラストワンマイルを埋める有力候補が「自動運転対応の電動車いす」です。
自動運転対応なので、スマホなどで呼び出せば、自動的に自分のいるところまで来てくれます。あのお店へ行ってちょうだい。あの品物はどこに売っているの? エレベーターはどこ? トイレに行きたい。初めての施設でも、初めて乗る車いすでも、センサーと自動ブレーキによって人や障害物にぶつからず、自分の行きたいところへスイスイと連れていってくれるのです。同時にITの進化によって実用化されつつあるリアルタイム翻訳機能などによって言葉の壁さえなくなっているかもしれません。
……こうした「サービス」が公共施設で当たり前のようにある世界、現実感があるので比較的想像しやすく、そしてかなりワクワクし、楽しみではありませんか?
WHILLが想定する事業モデルは、同社が自動運転電動車いすと利用プラットフォームを提供し、施設側(例えば、駅や空港、店舗など)がサービスを運営するというものです。CES2019への出展も、事業の展開に当たって自動運転の研究開発やサービス運用のパートナーを探すためとしていました。
ブースで研究開発中の自動運転モデルに試乗できました。今のところ、自動運転は車椅子を呼び出すシーンまでに留め、乗車したら自動ブレーキなどの運転支援はしながらも基本は自身で運転します。
手元のモニターで目視できない背後の障害物までを確認でき、自動ブレーキで衝突を回避できるサポート機能もあります。確かに安心できると感じました。
自動車業界のトレンドワードとして近年盛んに使われる「CASE」という言葉があります。
CASEは、Connectivity(接続性)の「C」、Autonomous(自動運転)の「A」、Shared & Services(共有とサービス)の「S」、Electric(電動化)の「E」の頭文字を取った単語のこと。これらが発展し、相互に関連し合うことで自動車業界や産業に100年に1度の大きな変革をもたらすといわれています。
一方で、超高齢化社会を迎える日本。だからこそ日本のメーカーはその技術力を生かし、率先してラストワンマイル問題に取り組み、自然にCASEの概念として捉えながら世界へも展開しようとしています。
ラグジュアリーな自動運転車には、未来感、そして大きな夢や希望があります。その一方で、同じ自動運転やMaaS、大枠ではCASEの実現がテーマながらも、こうしたパーソナルモビリティーはより身近で現実的に感じられます。
それは多分「これは未来の私たちのためにあるものだ」と分かりやすく感じられるからのような気がします。社会や法律などのスムーズな適合や解決も期待しつつ、今後の進展に要注目です。
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