朝食もろくに取れず、なんとか間に合ったラッシュの満員電車のなかでああもっと、丁寧に暮らしたいと思う。忙しければそれだけ豊かな暮らしから遠のいて、だからこそこんなんじゃなくて、もっと……インスタで見る暮らしニスタたちのような、穏やかで、ゆとりのある、そして上質な、そう「ていねいな暮らし」がしたいと切望する。
そんなことを思っていたのは都内で働いていた去年のことで、今は地方に越してきて来年度までの1年限りで専業主婦をしている。目指しているのは、夢に見た憧れの「ていねいな暮らし」。茶葉で紅茶を淹れてみたり、ギョーザを初めて皮から作ってみたり、観葉植物を育て始めてみたり。
生活が楽しくなるような、気分よく使えるような、自分の生活を愛せるようなアイテムを、少しずつ生活に取り入れている。2018年に我が家にやってきたのが、炭酸水メーカー「SodaStream(ソーダストリーム)」だ。
ビール、炭酸水ペットボトル、ソーダストリーム
私はビールが好きだ。できれば毎晩飲みたいと思う。けれど休肝日も必要。そんな時にこそ活躍するのが炭酸水。ビールはのどごしだ。炭酸水ものどごしだ。炭酸水はビールに求めているものをそこそこに満たしてくれる。
ビールが一番だけど、炭酸水だってその爽快感はなかなかのもの。お茶や水じゃつまらないな、と思う食事時に、炭酸水があれば料理がぐっとおいしく感じられる。しかもカロリーゼロ、プリン体ももちろんゼロ。ビバ! である。そういうわけで週の半分くらいは夕食時に炭酸水を飲んでいる。
はじめはせっせとAmazonで安い炭酸水ペットボトルを箱買いしていたのだけど、いかんせんボトルのゴミが増える。両手にペットボトルのゴミ袋を下げながら、どうにかならないだろうか……と思っていたところに見つけたのがソーダストリームだった。
構造はとてもシンプル。本体にガスシリンダーを設置して、水を入れた専用ボトルをセットしボタンを押すだけ(電池や電源コードも必要ない)。手動で押した分だけ炭酸が注入される。本体とガスシリンダー、専用ボトルがセットでAmazonだと一万円前後で買える。ガスシリンダーはなくなれば近くの家電量販店で交換する仕組み。1本2160円のガスシリンダーで、およそ60リットル(500ミリペットボトル換算で120本分)の炭酸水ができる、とうたわれている。
1回に注入する炭酸の度合いによって消費ペースは違いそうだが、私の体感では1日1リットルのボトルを消費するペースで2カ月もっているという感じなので、ちょうど説明の通りに消費していることになる。ペットボトルを買っていたころよりもお得だし、何よりゴミが出ない。大量のペットボトルを保存する場所もいらない。むしろお得かどうかを今ではあまり気にしないくらい、スマートでクリーンだという点で私はこちらを選ぶ。
そのまま飲む以外にも、ハイボールやチューハイを楽しんだり、シロップで割ってジュースにしたり、楽しみ方はたくさんある。
またソーダストリームは置いてあるとちょっといい感じの家電でもある。まだお客さんに「これ何?」と言われたことはないけれど、聞かれればいつだって「ああコレね、コレ実は炭酸水をね……」なんてソーダストリームのロゴをなぞりながらカッコつけて言う準備はできている。ちょっと試しに炭酸水、作ってみる? なんて。
ていねいな暮らしとは
書いていてなんだかただのソーダストリームのまわし者のように思えてきた。炭酸水メーカーを使っていることがはたして「ていねいな暮らし」をしていることだと言えるだろうか……。
けれどソーダストリームがわが家にやってきてから、いい時間を過ごしているな、と思い返すことはいくつもある。普段はダイニングテーブルで食事をするけれど週末はテレビの前のローテーブルにビールやらおつまみやらを並べて夫と二人で映画や録画していたお気に入りの番組をだらだらと観る。ビールが二缶ほど空くと、夫が「ハイボール飲む?」と言って井川遥よろしくとびきりの、ハイボールを作ってくれる。もちろん、ソーダストリームを使って。
これはおそらく普遍的なことだけれど、人に作ってもらったご飯はおいしい。そして、やっぱり人に作ってもらったお酒も、こんなにおいしいのだ。あるいはお客さんがやってきた時。お酒のあまり得意でない人も、ジュースじゃ味気ない。ちょっと自分も飲みすぎたかな、という時だってじゃあ炭酸水作るね、と立ちあがってキンキンに冷えた炭酸水を出す。なんとなく、そうなんとなくだけれど確実に「今、いいな」と思える時間がそこにはある。
他方、「ていねいな暮らし」はともすると、揶揄(やゆ)の意味合いをもって響く言葉でもある。時間があるからできることでしょ? 働いていたらそのちょっとの手間が面倒なんだし、やっぱりできないよ。そんな誰かの声も頭の中で聞こえてくる。
けれど、私が、いやわれわれが掲げた「ていねいな暮らし」とは、きっと生活を愛することだ。忙しくても怠惰でも、けれども連綿と続く私のこの生活を、私のやりたいように、私に居心地のいいように楽しんで、愛していきたいと思うこと、思ってならばやりたいことをやってみること。それぞれの、生活を少しだけいい感じにしてゆくこと。忘れてはならないのは、それが「私の生活」であるということだ。私が快適に、私が心地よく暮らしを選んでゆくこと、そして作ってゆくことは誰にも否定されることなく、すべて正解なのだ。そこに間違いなど、ないのである。
せっかく選ぶなら、惰性や妥協ではなく、ちょっと考えて好きなものを選びたい。
せっかくなら、私は生活を、いや私の生活を愛したい。
愛すべき私の生活に、ソーダストリームは今や欠かせない。ラブユーソーダストリーム。
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