“スマホではなく、PCでなければならない事情”が明確なのは、「情報通信技術の活用能力を有する人材を育成する」「就職活動などを見すえ、ITスキルを養う」のようなもの。これもよく見られる理由の1つで、ざっくり言うなら「もうじきPCを使わなければならない時期が来るから、早めに覚えておこう」というものです。
立命館大学の学生約1000人を対象としたアンケート調査(2017年度)によると、タッチタイピングに習熟している学生は少なく、「ほぼキーボードを見ずに文字入力している」人は約15%。約7割の人が「たまに見ながら」「頻繁に見ながら」打っているという結果になっています。
「2000文字のレポートを課された場合に、あなたはどのように作業をするか」という設問に対しては、約8割が「最初から最後までPCで作業をする」と回答。約1割が「スマホで下書きしてから、再度PCで入力している」と答えており、調査結果に基づく論文の中では「クラウドサービスの理解度が低いことの表れ」と分析されています。最終的にはPCを使っているため、「若者のPC離れ」というよりは「若者のPC不慣れ」が起こっているのかもしれません。
必携ノートPCのスペックは学校、学部によってマチマチ
ちなみにノートPC必携の場合、大学側がOSやスペックの指定を行うことが多く、筆者が調べた限り、よくある構成は以下のようなもの。
- OSはWindows/Macの新しいもの
- 無線LAN接続機能
- Microsoft Office、ウイルス対策ソフト(大学側で無償提供)
- バッテリー駆動時間はマチマチだが、「学校で充電しなくても使えるように」などと説明されることがある
- メモリ、プロセッサなどの指定がある場合は「core i5/7」「メモリ4〜8ギガ」程度が多い
学部によってスペックが異なる場合もあり、例えば、広島大学では医学部だけ「タッチペン対応」という条件がつけられています。おそらく他学部では使わない専用ソフトなどがあるのでしょう。
PCと学習内容の関連性が強いほど、こういった指定は厳しくなる傾向があるらしく、東京情報大学では、総合情報学部の学生は基本的に「大学特別仕様必携ノートパソコン」を使用。これは実際にPCを使ってネットワーク設定などを学ぶ際に、メーカー独自のセキュリティ機能などが邪魔してしてまうと、講義の進行を妨げるためだとしています。
なお、「Microsoft Surface」はノートPCではなく、「タブレットPC」と呼ばれることもありますが、一部大学では指定要件に「着脱式キーボードでも可」と書かれているほか、同端末が大学推奨PCとして販売されているケースも。端末選びの制約は、講義の内容次第といったところでしょうか。
「スマホで何でもできる時代」だからこそ
ここまで見てきた通り、スマホ全盛の現代においても、大学におけるPCの必要性は変わらずに存在していると考えられます。
冒頭のマイクロソフトの広告も、SNSの反応を分析するツールによれば約9割がポジティブに解釈しており、「うまい広告」「やはりPCは必須だと思う」などの意見が目立ちました。
「最近の若者はなんでもスマホで済ませてしまう」という見方は、一面では確かに正しくもあるのでしょうが、それはあくまでも学生時代までの話。その先を見据えるのであれば、PCスキルの獲得は必須――大学機関のPC必携化の流れには、そんな考えがあるように見て取れます。
「スマホでなんでもできる」が故に、逆にPCリテラシーを体系的に習得できる場が求められているというのが、今の「大学におけるPCの必要性」の一つの回答といえるのではないでしょうか。
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