どっちだ? と思ったらゲスト2人とも犯人だった
被疑者2人に揺さぶりを掛けていくキントリ。何も書いていないメモを意味ありげに対局者の部屋へ持っていき、向こうの部屋で自白が始まったように思わせる手を打ったり。将棋のような丁々発止のやりとりである。
ゲスト2人のうちのどちらかが犯人なのは確定済み。……いや、違う。今回は2人とも犯人だった。駒から毒キノコの粉末は検出されなかったが、代わりに下剤の成分が検出された。大庭を退席させるため、日名子は下剤を、あずさは致死量に満たない毒キノコを盛っていた。理由は、この男が八百長を持ち掛けてきたから。大庭は日名子を勝利させ、対局後の会見でウソ泣きをするよう日名子に命じていた。
日名子とあずさの真剣勝負に、男が茶々を入れてきた。2人は敵でもあるし、女流棋士の境遇にあらがう同志でもある。将棋へ真摯に向き合うため、2人は偶然にも同じタイミングで同じ行いをしていた。殺意はなかったが、下剤と毒キノコが合わさったことで計算外の毒性が生まれ、結果的に殺人になってしまったのだ。
名子とあずさはスタイルが異なる棋士。奔放に攻める攻撃型が日名子で、あずさは定跡を重んじる鉄壁の守備型だ。有希子はあずさに言った。
有希子「お2人は、案外似てますよ」
あずさ「橘さんと私が? あり得ません!」
将棋に対して真摯という根っこを見れば、2人はやはり似た者同士。だから、図らずも殺人になってしまった。
天海祐希は松井珠理奈に負けていた?
一歩踏み込み、うがった見方をしてみたい。筆者は途中まで、この事件は2人が共謀した計画殺人だと思っていた。というか、今でも疑っている。今回の結末を額面通りに受け取っていいものか。本当に2人に殺意はなかったのか?
両者は、何十手もの先を読むトップ棋士だ。「ちょっとこらしめようと各々が謀ったが、運悪く毒が合わさって偶発的に死に至った」と思わせる巧妙なトラップ。決定的な悪手にならないよう、数十手先を読んで計算していた着地点。この2人なら、それも全然あり得る。毒の相乗効果で大庭が死ぬのも想定済み。2人が殺人罪からまぬがれることも想定済み。2人はせいぜい傷害致死罪止まり。この説を前提に考えると、両者の将棋の腕(先を読む能力)は、いよいよ超一流である。
それにしても、松井珠理奈にこの役を任せるのも意味深だ。AKB総選挙やじゃんけん大会について「本当にガチなのか?」と疑問視する声はいつも存在した。それを逆手に取ったかのような今回の脚本。唐突に売り出しが掛かる若きニュースターという仕掛けも、秋元康っぽくてなんか生々しい。
読んでしまうし、勘ぐってしまう。まさに、心理戦のような刑事ドラマだった。
寺西ジャジューカ
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納口龍司
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