働く夫と専業主婦からなる世帯の数を、共働き世帯が上回ってからはや20年以上。2017年には議会に子どもを連れてきた熊本市議がバッシングを受けるなど、いまだ労働者の子育てには逆風が吹き続けています。
2019年1月、政府は子どもを職場に連れてくる「子連れ出勤」を推奨すると発表しました。果たしてこの推奨宣言で、事態は変化するのでしょうか。ベビーカレンダーはこの「子連れ出勤」について、現在子育てをしている、あるいは今後子育てをする人2172人を対象に意識調査を実施しました。
子連れ出勤自体へのイメージは悪くない
「政府による『子連れ出勤』の推奨に賛成ですか? 反対ですか?」という質問には、「とても賛成」が20.2%、「まあ賛成」が36.6%で、半数以上が「子連れ出勤」に賛成していることがわかります。賛成する主な理由としては「子育てと仕事を両立しやすくする」が69.4%、「子どもと過ごす時間が増える」61.8%、「働き方の選択肢が増える」60.5%です。
それに対して「とても反対」と「やや反対」が合計30.5%と、およそ3人に1人が反対の立場を表明しました。理由は「業務に集中できず、仕事が滞る」が64.5%、「保育環境の整備や保育園の拡充など、ほかに優先すべきことがある」が49.5%、「子どもの遊びや行動が制限され、子どもにとってもストレスになる」が48.3%を占めています。職場は子どもにとって気持ちのいい環境であるとは考えられていません。
保育士がいるなら子連れ出勤したい
実際に、「もし、あなたの勤務先で『子連れ出勤』が認められ、さらに企業内保育所・託児所などの保育環境が整っている場合、子連れ出勤をしたいと思いますか?」という質問では、「とても思う」「まあ思う」の合計が80.2%に達します。しかし「もしあなたの勤務先で『子連れ出勤』が認められた場合、子連れ出勤をしたいと思いますか? ただし、勤務先には企業内保育所・託児所はなく、簡易的なキッズスペース等がある程度とします」という質問に対しては、「あまり思わない」と「まったく思わない」の合計が半数を超えます。ネックは会社が「保育士のいる」キッズスペースを用意してくれるかどうかにあるのです。
厳しすぎる現実
労働者の展望はあまりかんばしくありません。自分もしくは配偶者の勤務先で子連れ出勤が認められている人の割合はわずか7.7%です。このうち、半数以上は自分もしくは配偶者の勤務先に保育所や託児所がある場合でした。
実際に子連れ出勤をしたことがある人は、全体のたった6%でした。子連れ出勤をしたことによって職場の人が子育てに理解を示してくれるようになったという体験談も寄せられましたが、その一方で子連れで朝の満員電車に乗らなければならないつらさを吐露する声もありました。
そして全体の63.2%の人が、日本で子連れ出勤は浸透していかないだろうと考えています。この数字は、浸透していくだろうと予想した人の割合である20.1%を大きく超えているのです。
やはり子連れで出勤するためには、越えなくてはならないハードルが非常に多いといえます。まずは保育所・託児所の設置が急務ですが、それだけではなく、労働環境全体を見通した対策が必要であると考えられます。
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時には自分を甘やかしてあげてほしい。