築100年を越える建物や、学生による自治、大学との対立など、さまざまな方向から注目されている京都大学の吉田寮(京都市左京区)。その吉田寮に、性別問わず使用できる「オールジェンダートイレ」「オールジェンダーシャワー室」があるのを知っていましたか? なぜ「オールジェンダー」にしたのか、性別で分けなくても安心して使えるのか。吉田寮自治会の「セクハラ対策特別委員会」に関わる寮生Aさんに聞いてみました。
吉田寮の「オールジェンダートイレ・シャワー室」とは
吉田寮には100年以上前に建てられた「現棟」と、2015年に建てられた「新棟」とで成り立つ、学生が性別問わず生活する「混住寮」です。吉田寮自治会(寮生全員が参加)は、2009年から吉田寮の「新棟」建設について大学と交渉を開始。建物の設計については2012年から大学と交渉しています。完成当初の案内図に「男子トイレ」、「女子トイレ」をイメージさせる表示デザインがあったものの、オールジェンダートイレとして使用できる構造のトイレが建設されました。また、シャワー室も浴室と脱衣所が同じ個室内にあるものが作られました。
なぜ「オールジェンダー」なのか
「性別のあり方は人によって異なるため、ハッキリと男あるいは女に当てはまらない人や、トランスジェンダーの人もいます」(寮生Aさん)
吉田寮は混住寮のため、そういった人たちも寮に住む可能性があり、男女で分けた施設にすると、入浴やトイレの際にいちいち男か女で選ばないといけなかったり、「あなたはこちらを使うべきではない」と他の人から見られたりということが起こって、使いづらくなってしまうこともあるといいます。
トイレやシャワー室は男女別のものが圧倒的多数で、特にトイレは大学の講義棟やサークルボックスなども男女別なので、寮生Aさんらは大学に対して「せめて吉田寮の新棟には、オールジェンダートイレがあってもよいのではないか」とも主張したそうです。
また不必要に性別で分けることには、悪い影響があると考えてもいます。
「個人ではなく、男や女っていうカテゴリーで相手を見て、それが固定化されると、コミュニケーションの阻害になるんじゃないかと思っています」(寮生Aさん)
寮の中で性別によって使える空間を分けることで、そういった傾向を強めると思い、オールジェンダーのシャワー室やトイレを作ることにしたそう。
とは言っても、「オールジェンダー」の必要性を感じない寮生や、トイレや入浴など、非常にプライバシーが大切になる場面で、ちがう性別の人と空間を共有することに不安を感じる寮生もいたかもしれません。どのように意見をまとめたのでしょう。
「大学と交渉する前に、寮内で何度もジェンダーなどについての勉強会や話し合いを重ねました」(寮生Aさん)
さらに、関西クィア映画祭の協力を得て画男女別トイレの問題を取り扱ったドキュメンタリー映画「トイレのレッスン(Tara Mateik and the Sylvia Rivera Law Project/米国/2003)」の上映を行うなどして理解を深めた結果、自治会は「トイレをオールジェンダーにしよう」と全会一致でまとまったそうです。
現棟も「オールジェンダー」
1913年に建てられた現棟も「オールジェンダートイレ」ですが、新棟とは違った経緯が。現棟はもともと男子学生だけの寮だったため、空間が男女で分けられていませんでした。
「自治会が寮の運営をする中で、大学にも男子以外の学生もいることや、外部の人から他の性別を排除して男性だけの集団をつくることは、自分たち以外の性別を見下し、低いものとして扱う習慣につながるという批判がありました。議論の結果、男子だけの寮だということは不適切であるため、1970年代には入寮資格を女子にも拡大することになりました」(寮生Aさん)
男子寮として運営されていた建物に女子が入ってきたことで、性別で空間を分けない生活ができていったそうです。
どうやって安全・安心を確保するか
現在、「オールジェンダー」として使用されている、吉田寮のトイレやシャワー室。今のところ、自治会には「使いづらい」といった声はあがっていないそうです。疑問視するような声は、主に日常的に出入りしていない、ふらっと来たような人から発せられているとのこと。
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