書店チェーン大手の文教堂グループホールディングス(文教堂HD)が経営不振に苦しんでいます。2018年8月期決算の時点で債務超過に転落しており、19年8月末までに解消しなければ原則として上場廃止になりますが、困難だとして私的整理の一種「事業再生ADR」に踏み切り、上場維持を目指します。
文教堂HD(川崎市)は1898年(明治31年)創業、会社としては1949年設立という老舗書店で、18年8月末時点で全国に161店舗を展開しています。書籍取次大手の日本出版販売(日販)が16年8月から筆頭株主(28.0%)となり、大日本印刷(23.6%)が2位株主です。
書籍に限らず、CD・DVDや文具、ゲームの販売やレンタルビデオ店も含む複合型店舗も展開しているのが特徴です。ただ、こうした商材はネット通販やデジタルコンテンツの普及などもあり、リアル店舗での販売は縮小しています。
市場環境を背景に、文教堂HDの業績は悪化が続いています。2013年8月期は売上高約346億円に対し、本業のもうけを示す営業損益は1400万円の赤字、最終損益は2億8900万円の赤字に転落。これ以降、黒字だったの17年8月期のみで、18年8月期は売上高は約274億円まで落ち込み、営業損益は5億4500万円の赤字、最終損益は5億9100万円の赤字でした。売り上げの縮小とともに赤字体質から抜け出せなくなっており、18年8月期で約141億円という有利子負債も負担になっています。
期限内の債務超過解消は困難
赤字が続いた結果、18年8月期末には2億3358万円の債務超過に転落。「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在」しているとの注記が付きました。
債務超過は、会社の資産を負債が上回っている状態のこと。東京証券取引所は、こうした企業は上場に適さないとして、1年以内に債務超過を解消できなければ上場廃止にするという基準を設けています。東証JASDAQ(スタンダード)に上場する文教堂HDは「上場廃止に係る猶予期間入り銘柄」となり、19年8月末までに債務超過を解消する必要がありました。
ですが、2019年8月期第2四半期(18年9月〜19年2月)の時点で売上高は前年同期比で10%減。不採算店舗の撤退で損失を計上したこともあり、営業損益、最終損益とも赤字でした。債務超過額は同期末で約6億円に悪化しています。
上場廃止決定までのリミットが2カ月後に迫った6月28日、文教堂HDは、これまでの取り組みでは期限内に債務超過を解消するのは困難と判断し、「事業再生ADR」を第三者機関に申請、受理されたと発表しました。
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