2019年でいちばん「ギャッッッ!!!」ってなった映画「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」についてダベる会をやりました:マシーナリーともコラム(4/4 ページ)
「平成を生きた者たち」なら響く映画。
仮面ライダーから凸凹の勇気をもらおう!
しげる:俺は完全素人だからあんまり特別な感情ないんだけど、仮面ライダーってコンテンツはファンから見てどうなの? どういうふうに考えながら見てるの?
とも子:ん〜、なんだろ……。単純に見てて面白いってのもあるし、時折トンチキ展開が生まれてしまうところもいとしいし……。あとなんだろ、なんとなくこう、元気があるコンテンツだなあって思ってるところはある。エネルギッシュだなあって。
しげる:元気?
とも子:そう、元気。コンテンツとしての勢いとか売上とかってのよりはもっとフワフワした……。厚かましいくらいにギラギラしてる感じっての? だってほら見ろよジオウのツラなんてよ! 顔に「ライダー」っで書いてあるんだぞ。こんな厚かましいやつガンダムで見たことないぞ!
しげる:そういえばあえてツッコまなかったけどなんで顔にライダーって書いてあんの!?
とも子:うーん、これは別になんかで関係者が話してたのを読んだとか、ソースがある話じゃなくて私が勝手に思ってる臆測なんだけど。仮面ライダー、とくに平成ライダー以降って初見で「今度の仮面ライダーこんなデザインなの!?」ってギョッとするような、既存の仮面ライダーとイメージが全然違うみたいなのが強いし、毎年「こんなの仮面ライダーじゃねえ」って言われ続けてたんだよね。もちろんこれはあらゆるシリーズものコンテンツでは言われがちな言葉ではあるんだけど、それにしても仮面ライダーは好き嫌い関係なく「そこまで冒険しなくて良くない!?」って思うようなものを毎年出していってたのは確か。もうマヒしちゃって完全に慣れたけど龍騎、ファイズ、剣、響鬼とかすごいよなコレ。逆にカブトが発表されたときに「今年はぱっと見でもういきなりカッコいいけどどうしちゃったの!?」ってびっくりしちゃったくらいだもん。
しげる:確かに龍騎を最初に見たときはむちゃくちゃ驚いた。
池谷:焼肉屋の網とか言われた記憶がある。
とも子:でもジオウはさ……「こんなのライダーじゃねえ!」って言われても「なに言ってるんですか……顔にライダーって書いてあるじゃないですか!」って死ぬほど主張してくるじゃん!
池谷:言い逃れできない! まあそうやって、ただカッコいいってだけじゃなくてツッコミどころみたいなのを用意してるって意図もあるよね。
しげる:あと、見てて気になったんだけど武器にも文字が書いてあるんだね。
とも子:これすごいんだよ。剣にケンって書いてあるじゃん? これ刃を回転させると銃になるんだけど、するとケンのところも微妙に変わってジュウに変わるんだよ。
しげる:なんだこれ!
とも子:あと足の裏にキックって書いてあるし。ベルトの裏にはベルトって書いてある。
しげる:なんなの!?
とも子:一説にはジオウって時の王者でジオウなんだけど字、文字の王者とも言い換えられるよね〜的なギャグなんじゃないかと……。
しげる:なんかそういう……そういう仕込みとか見てモヤモヤしない?
とも子:「今年も面白いことやってんなぁ〜!」って思う。映画の最後の方でさ、どさくさに紛れて歴代平成ライダーに混じって一般市民が戦ってるシーンがあるじゃん。あれにもジーンとしちゃってさ。
池谷:ヒーローに勇気付けられた市民が立ち上がる的な意味で?
とも子:いや、なんというか……平成ライダーってさ、20年続けてきてすごかったわけだけども、仮面ライダーって、仮面ライダーがやっていってるだけでは成立しないわけじゃない。仮面ライダーが戦ってる姿を見て、われわれ視聴者が心を動かされたりオモチャを買ったりすることで成立するわけじゃない。経済的にさ。われわれという観測者がいて初めて成立するんだよ。
しげる:まあ誰にも見られてないとしたらねえ。
とも子:つまり平成ライダーが守ってきた20年っていうのは、ただ仮面ライダーが悪と戦ってきた20年というだけじゃなくて、そこには私たちの介在があったんだ、共に戦ってきたんだ、だからそんな20年を消し去ろうという蛮行には共に戦わなきゃあならねえんだ。そういうシーンだと受け取ってンッっっっっっっ!!!! ってなったね。
しげる:なるほどね……。あのさ、2019年って「アベンジャーズ:エンドゲーム」も公開されたけどあれもやっぱりMCUの歩みを見せて、見てる人たちにも回想を促す映画だったじゃん。「ああ、俺『アベンジャーズ』やってたころ何してたっけな〜」って。それで最終的には最大の敵と戦うためにこれまでの登場人物が総集合して一緒に戦うわけじゃん。
とも子:まあ近いし、時期的にある程度意識もしてたんだろうな。お互いヒーローだし。東映とマーベルはスパイダーマンとかバトルフィーバーJとかお付き合いもあったしな。あのさ、映画のクライマックスでさ、タイトルロゴキックがあるじゃん。
しげる:タイトルロゴキックなあ〜!
※タイトルロゴキック……「Over Quartzer」クライマックスでボスキャラに歴代平成ライダーが全員でライダーキックをぶちかますのだが、そのときライダーの姿が歴代タイトルロゴに変化していくというものすごい演出がある
池谷:あれすごいよね! なんなの?
とも子:あのタイトルロゴキックと、歴代平成ライダーの変身ベルトが次々に大映しになるところでさ! あのシーンで……完全に泣いてしまってさ!
しげる:ナハハ(笑)。
とも子:なんでかっていうと、まずそれまでで「仮面ライダーたちが戦った20年」を見せたわけじゃん。で、さっきも言ったけどそれプラス「私たちが仮面ライダーを見ながら生きてきた20年」が来るじゃん。
しげる:うん。
とも子:で、さらにそこに! ベルトとか! タイトルロゴとかが乗っかることで! その2つの20年をつなげるために! このタイトルロゴとか! 変身ベルトのオモチャとかデザインとか! そういう仕事をしてきた人たちもがんばってるんだよ!!! って気持ちを受信してしまってそれが完全に胸に刺さって「グアアアアーーーーッ!!!!!」ってなって泣いちゃった。
しげる:(引き笑い)
とも子:グワーッ!! プレックスとかボーイズトイ事業部の方々!!! ドギャアーッ!!! ってなって死んだ。
しげる:オタク……オタクの泣き方だ。
とも子:「全て」なんですよ。「全て」の漢字が、「総合」の「総」の方の「総て」。
しげる:やかましいわ!! いや、分かるけど。プレックスの方たちのことを考えて泣かなくてもよくない!?!?
とも子:ジオウのTV版のオープニング映像も良くてさ……。最後に歴代平成仮面ライダーのタイトルロゴの“仮面ライダー”の部分だけバババババーッ!! って連続して出てきて最後にひゅーんっ、仮面ライダージオウ〜ッ! って出てきて泣いちゃうんだよね。うわぁー! タイトルロゴだぁーっ!! って。
しげる:俺、全然分からない感覚なんだけどやっぱり「うわー! 歴代仮面ライダーだぁ!」って列挙されると涙腺緩むもんなの。
とも子:列挙のされ方によるけどね。
しげる:でもさっきから聞いてるとそういう感じじゃん。「20年の重みーっ!!」ってバキーって殴られると重みにつぶされて泣くんでしょ。
とも子:なんだろ……ね……。そういうことなんだと思うんだけど。
池谷:まあまさに「エンドゲーム」みたいな感じだよね。
とも子:いや、むしろ『プロレス・スターウォーズ』とか『グラップラー刃牙 外伝』の観客の人たちみたいな感じ。
しげる:ああーーーーーーーー!!!!!! 分かる!!!!!!! 分かる!!!!! 急に分かった!!!!!!!
とも子:「うわわわ〜〜〜ッッッ! 馬場さ〜〜んっ!!!」ってなるんだよ。
しげる:今日お前がした話のなかでいちばんスッと理解できた!!! アンドレが悲しげな笑みを浮かべてるのを見てるときの観客の気持ちなのかあ! ああそうかあ! 仮面ライダーのオタクってのは……一人一人がみのもけんじ先生みたいな感覚なわけですね!
池谷:全然分からん。
しげる:急に全てが納得できてしまった。『プロレス・スターウォーズ』っていわれると、完全に分かるな〜〜。
とも子:じゃあ今日の結論は「『Over Quartzer』は『プロレス・スターウォーズ』」ということで……。
池谷:俺がまったくついていけてないんだけど!
しげる:いや『プロレス・スターウォーズ』とか『プロレススーパースター列伝』って実在の人物ばっかり出てくるマンガなんですけど、ウソばっかり書いてあるんですよ!
とも子:えっ、ちょっと待ってそれって……「信長」じゃん!
しげる:ガハハハハハハ(笑)! ホントだ信長だあ! 歴史がいかに作られるかという。
編注:映画に出てくる信長はいわゆる「魔王」のイメージとは180度異なるひょうきんな人物で、「歴史なんて後世の人が勝手にイメージしたものに過ぎない」といったことが前半で語られる
とも子:「俺たちにとっては歴史だけど、猪木さんにとっては今なんだ……」と。
しげる:そういうことですよ! あのさ、猪木って『プロレススーパースター列伝』が連載してたときに詰めかけたフアンに「猪木さーん! いつも『スーパースター列伝』読んでます!」って話しかけられて「なんですかそれ?」って言っちゃったらしい。
とも子:そのレベルで知らなかったのかよ! いつも「アントニオ猪木・談」って書いてるのに!
しげる:全部梶原一騎が書いてるからね。そうかぁ〜〜、『プロレス・スターウォーズ』かぁ……。でもまあ、あのマンガはみのもけんじ先生の夢の映画っていうかさ! 「もう一度馬場と猪木に共闘してもらいたい」ってところがスタート地点だと思うんだけど。
とも子:「Over Quartzer」はそういう映画かっていうとちょっとスタート地点は違うよな。あれはどっちかって言うと「俺たち、こんな感じでその場その場でやってきてるけど……でも20年輝き続けてるぜ!」っていう究極の開き直りだからな。
しげる:「がんばったんだから、いいだろ!」って言う感じのな!!
とも子:しかも現実問題として「だって変身ベルト毎年すごく売れてるも〜ん」って言えちゃうというね。
しげる:そうだけど! そうだけどさぁ〜! ねえいいの、いいのオタクはそれで? とも子はそれでいいの?
とも子:いやもうキャッキャキャッキャだよ! 大喜びだよ!
しげる:すげえなあ〜!
池谷:究極の自己肯定映画だよね。自分で自分のことを僕は凸凹です! って下げておいて、でもそれでいいじゃん! って言い出すという……。
とも子:でもさ、結局自分のことを慰めるのって自分しかいないわけじゃん。
しげる:そうだけどさあ〜!
とも子:まあそういうわけでこの映画はすごい勇気をもらえる映画だから! みんな見て! ということで!
しげる:まあ見終わったあとにいいもの見た感はあった。
池谷:満腹感ある。
とも子:凸凹にやっていきましょう。
しげる:何も積極的に凸凹にしようねって話ではなかったよ!?
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