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「勝手に産んどいて、ちゃんと責任を持って育ててくれ」19歳ニート息子から逃げ続ける相談者と妻の闇 「テレフォン人生相談」先週のハイライト(2/2 ページ)

ヤバイ息子の相談かと思いきや……。

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捨てることが最高の愛

 この日の回答者は心についてのエッセイストとしてお馴染みのマドモアゼル・愛。

 突然、デパートで見かけた親子の話をはじめる。その親子は、4〜5歳の子どもをひとりでエスカレーターに乗せていたという。

 「無責任に見えるようだけども、子どもをある程度信頼っていうか、ほったらかして。そうすると親に『こうしろ』『ああしろ』っていう依存も、子どもは消えていくから」

 小さい頃から母親の厳しい教育方針を押しつけられてきた息子。父親は母親にバカにされているし、人生の意味を聞いても薄らボンヤリしたことしか答えてくれない。そんな積み重ねが息子を追い詰めていったのかもしれない。

 「心配性の人はついつい見すぎちゃうし、助言しすぎちゃうし。それで、その助言や心配の中でも一本、単純すぎる芯が通っていれば子どもも混乱しなかったと思うんですよ」「『弱いお父さんが何を言うのか』という子どもの感想はきっとあったような気がする」

 年収を理由に自分を罵ってくる妻から逃げてきた相談者。そして妻も、教師として息子と向き合うことしかできず、母親という立場から逃げ続けてきたのだ。

 「年収で人間の価値が決まる? 『何言ってるんだ』って言わなくちゃいけなかったんだよ、ホントは」

 ここで新事実が明かされた。実は妻だけではなく、相談者自身も家を出て近くの賃貸で暮らしているというのだ。

 「できるだけ息子、親に頼りたくないんじゃないかっていうことで、良い意味での見放しと言いますか、見守るというスタンスで……」「息子なりに親のありがたみを分かってくれるかっていうのもありますし……」

 「今やってることは、みんなで逃げましたって話なんだよね」

 いや、その通り。親のありがたみを分からせるためにひとり暮らしをさせるという方針は分かるけど、息子を追い出すのではなく、父・母がそれぞれ別のアパートに出ていくって……。息子からしたら、自分と向き合う気がないと両親から宣言されたようなものだ。

 「1日おきに私、夜、(息子の住む家に)顔出しには行くんですけども……。ご飯をまとめて炊いて冷蔵庫に入れて、それだけですけども」

 「それで一言二言でも話すでしょ、やっぱり?」

 「自立する……」

 「それが余計なのよ!」「何が自立よ。自立できないからこういう問題が起きてるわけじゃない。まず、信頼を取り戻すことでしょ? アナタも怖がってんだよ、子どものこと。怖がって、そして理想も言ってんのよ。お母さんと似てんだよ、実は」

 今さら急に自立をさせようとしても無理があるので、親子関係の原点に戻り、ご飯を食べること、お風呂に入ること、そういうところから絆を取り戻すしかないとアドバイス。

 「お父さんは息子を嫌ってるのが分かんのよ、もう。自分の人生にとって負の財産なんですよ。そしてそういう息子がアナタは本当は嫌いなんですよ、そういう対応を取ってるんです。だから問題は解決しないんです」

 加藤諦三が引き取る。

 今回の問題は、親子3人とも現実を受け入れていないことが根幹にあると指摘した。

 「母親が子どもを嫌いっていうのは、ここが最大の問題なんですよ。まず息子は、自分が母親に嫌われているという、そっから人生のスタートですから」

 相談者と妻は子どもを受け入れることができない親になってしまった。そして息子は「自分の親はこんな親だ」という現実を受け入れていない。

 「これ、この息子の運命ですから。その運命を息子が受け入れさえすればいいんですよ。それで最後には、受け入れられなければ捨てることです」

 ニート息子のヤバイ行動についての相談かと思っていたら、両親の闇が浮かび上がってきた今回の相談。両親からここまで逃げを打たれた息子の気持ちを考えるとつらい。

 もともとは相談者をバカにするための「人間の価値は年収で決まる」だったとしても、母親から繰り返しその言葉を聞かされてきた息子が「いい学校、いい会社に入らなければ存在価値がない」と追い詰められてしまうのは当然だろう。

 この日の締めの言葉はこちら。

 「捨てることが最高の愛ということがあります」

 厳しい選択だが、相談者は息子を、息子は両親を捨てるというのもひとつの手なのかもしれない。


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