「暴力と搾取」「法律の罪深さ」描く問題作、『闇金ウシジマくん』作者の新作『九条の大罪』にみる共通点と主人公像(2/2 ページ)
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曽我部の弁護を引き受けた九条はあえて金本のことはうたわず(自白せず)、全ての罪を1人でかぶるようにと曽我部に指示し、曽我部本人もその提案を受け入れるのですが、これは金本に罪を一緒に背負わせることで報復を受けるより、短期間刑務所に曽我部を避難させて環境を整理する方が最終的には依頼人である曽我部にとっての利益になると考えた九条の作戦でした。
曽我部と金本はもともと父親同士が主従の関係に陥っていたことから、曽我部親子は金本親子から激しい暴力を受けたり、体の目立つ場所に「うんこ人間」という手製の入れ墨を入れられており(しかも素人が施した入れ墨は医者でも消しづらいという)、曽我部の境遇を考えるとどうしても金本だけが無罪放免となるのは胸が痛みます。
しかし、ここで終わらないのが真鍋作品です。その金本ですら半グレの中で確固たる地位を築いている“本物の悪人”・壬生憲剛にはかなわないという弱肉強食の社会と格差が目をそむけたくなるほどリアルに描かれています。
また、第2集では、家族の手に負えなくなった要介護の老人たちが半グレが運営する介護施設に預けられる様子が描かれており、介護ビジネスの闇とそれを容認せざるを得ない家族の事情、遺産相続などの問題が提起されています。
強者が弱者から搾取するという構造はこれまでにも度々描かれてきたテーマですが、それに対し、『闇金ウシジマくん』では金を貸し、『九条の大罪』では弁護をする。“社会のリアル”を別の視点から楽しめるのは真鍋作品ならではといえるでしょう。
恐ろしいほどの観察眼を持つ作者
『九条の大罪』には、九条だけでなく、さまざまなタイプの弁護士が登場しています。まずは東大法学部を首席で卒業し、将来を嘱望されていたのに、何故か評判の悪い九条の元でイソ弁をしている烏丸真司(からすましんじ)。
そして九条の恩師で正義と依頼人の利益を追求する流木信輝(ながらぎのぶてる)。欲望の塊でありながら九条のことを息子のようにかわいがっている山城祐蔵(やましろゆうぞう)。そして九条を勘当し、和解できぬまま亡くなった父親と、第2集時点で4人の弁護士が登場しています。
性質の全く異なる弁護士が九条を取り巻く中、作者は今後も続々とエリート弁護士が登場する可能性を示唆しており、ただでさえポテンシャルが高いキャラクターが登場している本作に新たなキャラクターが登場するとすればどれだけ面白くなってしまうのかと胸が高鳴ります。
緻密な取材と鋭い観察眼、そして類まれなる描写力で真鍋昌平さんにしか描けない世界を紡いでいる『九条の大罪』。第2集は5月28日より発売中です。
(C)真鍋昌平/小学館
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(Kikka)
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