ところで西九州新幹線って「開業区間が中途半端」じゃないですか?:月刊乗り鉄話題(2021年8月版) 「西九州新幹線」の素朴な疑問11選(3)(1/2 ページ)
開業区間が「ちょっと中途半端」な気がする……。フリーゲージトレインはどこ行った……?。2022年秋開業、西九州新幹線の「?」を解消する素朴な疑問まとめ、3回目です。
2022年秋に開業する「西九州新幹線」。楽しみですが、いろいろ「?」なこともあります。前回は西九州新幹線の最高速度、所要時間、料金の疑問を解説しました。最終回の今回は「在来線はどうなるのか」「開業区間が中途半端……な謎」の疑問を解説します。
目次
- 【疑問 1】 西九州新幹線はどこにできるの? どこを通るの?
- 【疑問 2】 「長崎新幹線」じゃダメだったの?
- 【疑問 3】 どんな電車が走るの?
- 【疑問 4】 列車名は何になるの?
- 【疑問 5】 最高速度は?
- 【疑問 6】 開通で所要時間はどれだけ短縮される?
- 【疑問 7】 料金は高くなる?
- 【疑問 8】 沿線の見どころは?
- 【疑問 9】 周辺の鉄道はどうなるの?
- 【疑問 10】 ところで西九州新幹線って「開業区間が中途半端」じゃないですか?
- 【疑問 11】 もし、新鳥栖〜武雄温泉間もフル規格で開通したらどうなる?
【疑問 9】新幹線の周辺の鉄道はどうなるの?
西九州新幹線が開業したら、周辺の鉄道路線はどうなるのでしょう。
長崎本線の肥前山口〜諫早間はJR九州が引き続き運行します。博多からの特急列車は肥前山口〜肥前鹿島までとなり、上下14本程度まで減便されます。
この特急列車の名前は何になるのでしょうね。かもめは新幹線に使われてしまいましたし、リレーかもめも博多〜武雄温泉を走り新幹線に接続する特急列車と紛らわしくなります。かつて長崎本線で使われた列車名から「ちくご」がふさわしいと思われます。
普通列車は2021年現在の「運行本数を維持」します。肥前浜〜諫早間は電化設備を撤去し、気動車あるいは蓄電池電車で運行することになりそうです。この運行形態を少なくとも西九州新幹線の開業から「3年間は維持する」約束です。
ちなみに他の地域は、整備新幹線が開業すると同区間の在来線はJRから分離され、第三セクター会社が引き継いで運行しています。これは、赤字必至の在来線をJRにぶら下げたままでは、新幹線を走らせても赤字になりがちだからです。JRが新幹線を引き受けてくれません。
しかし、西九州新幹線は在来線の経営分離に一部の自治体が反対したため、整備新幹線の着工条件を満たさなくなりました。そこで、線路設備のみJRから分離し、第三セクター会社が引き受けます。その上で、列車の運行をJR九州が担当する方法となりました。「上下分離方式」といいます。JR九州は最短でも23年間は在来線を運行する約束になっています(関連リンク)。
【疑問 10】ところで西九州新幹線って「開業区間が中途半端」じゃないですか?
西九州新幹線は長崎県寄りの路線長67キロの新幹線です。
長崎や諫早から嬉野温泉や武雄温泉に行くときにとても便利です。長崎空港も長崎駅からバスで50分前後かかりますから、西九州新幹線で新大村駅へ行き、そこから連絡バスを使う方が早くなるかもしれません。
でも本当は「福岡や熊本へ直通」できたほうがいいですね。武雄温泉〜長崎間だけ新幹線で、しかも乗り換えアリ。ほかの新幹線とも乗り換えられない。確かに中途半端です。
これは歴史的にややこしい事情があります。もともと“長崎新幹線”はフル規格で建設するつもりでした。フル規格とは、東海道・山陽・九州新幹線などと同じ設備です。軌間(レールの間隔)1435ミリ、大型車体、交流電化などです。ところが、建設、運行するはずだった国鉄が経営破綻し、分割民営化されてJRグループができました。
民間企業となったJRに高額な新幹線建設を任せると、また国鉄のような赤字体質になってしまうかもしれません。その一方で、新幹線会議用予定地の自治体は「我が街に早く新幹線を」と早期建設を求めます。
そこで政府は、もっと安価で、早く建設できる新幹線を考えました。既存の在来線を新幹線規格に改造する「ミニ新幹線」と、基本的に在来線規格の線路を使い、一部区間だけ新幹線のように高速で走行できる線路を作る「スーパー特急」方式です。
ミニ新幹線は秋田新幹線や山形新幹線の形で実現しました。その他の整備新幹線計画も「ミニ新幹線」または「スーパー特急方式」にいったん決まりました。
長崎新幹線はスーパー特急方式でした。一部区間だけ新幹線のように高速で走行できる線路、それが今回開通する武雄温泉〜長崎間です。このまま建設していれば「かもめ」は乗り換えなしで高速化できました。
ところが、1998年に長野オリンピックの開催が決まると、ミニ新幹線方式の予定だった北陸新幹線の軽井沢〜長野間はフル規格に変更されました。これ以降、各地で計画されていた新幹線についても「やっぱりフル規格がいい」となりました。九州新幹線(鹿児島ルート)も当初はスーパー特急方式で、新八代〜鹿児島中央間だけが高規格新線の予定でした。しかし、全区間をフル規格に変更して開業しています。
“長崎新幹線”は長崎県側が「フル規格にしたい」と願いました。しかし、佐賀県は反対しました。理由は費用負担とメリットのバランスです。
国鉄時代の新幹線は国が作り、国鉄が運行しました。しかし、JR化後の新幹線建設条件は「建設する距離に応じて自治体も建設費の一部を負担する」「並行在来線はJRから分離する」でした。多くの自治体が新条件を了承する中で佐賀県は応じませんでした。「スーパー特急で十分」だったわけです。
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