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「トロピカル〜ジュ!プリキュア」、アニメ好評もおもちゃで苦戦のワケ 2021年上半期決算から見えたことサラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

「トロピカル〜ジュ!プリキュア」、アニメは好評なのに関連商品の売り上げが悪いのです……。なぜ……?

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ニチアサ3作品の苦戦

 ここでもう一度、今回のバンダイナムコHD上半期決算短信を見てみます。

 2021年上半期で伸びたコンテンツ、下がったコンテンツを見てみると数字を落としているのは「ドラゴンボール」と「ニチアサ3作品(プリキュア、仮面ライダー、スーパー戦隊)」のみなのです。

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ニチアサ3作品がマイナスとなった2021年上半期

 「アイカツ!」や「ウルトラマン」は新シリーズの立ち上げに伴う増収、「機動戦士ガンダム」は「映像関連」の売り上げおよび「ハイターゲット向けの玩具」が好調だったことが決算説明会資料から読み取れます。

 自社グループ内に映像制作部門、音楽制作部門があるコンテンツおよび家庭用ゲームやアプリ、ハイターゲット向け玩具が展開できるコンテンツは比較的好調だったようです。

 今、不調なのはいわゆるニチアサのような「バンダイナムコグループが映像作品を制作せず、かつテレビ放送と連動しておもちゃなど関連商品を売るビジネス」なのです。

「テレビ放送だけをやればうまくいく時代はない」

 「テレビ放送だけやればうまくいく時代ではない」

 バンダイ代表取締役社長(当時)、川口勝氏は玩具業界紙『月刊トイジャーナル』の2021年新春インタビューで、定番キャラクター商品の売り上げ不調について問われた際にそう語っています。

本誌 定番IPの苦戦に関しては従来型のキャラクターマーチャンダイジングが通用しなくなってきているということもあるのではないでしょうか?
川口 コロナ禍の影響なのか従来からの戦略の全体的なパワーダウンなのかは難しいところですが、番組が休止している中で、子供たちがどうやってIPの情報に触れたのかを考えるとタッチポイントも従来とはかなり変化してきていると思います。TV放送だけをやればすべてうまくいくという時代はなくなってきており、色々と工夫をしないといけないでしょうし、これまでと同じことをやっていれば同じような売り上げがついてくるという状況ではないと思っています。
(※強調文は筆者による)
引用:『月刊トイジャーナル』(東京玩具人形協同組合)2021年1月号(P25、26)

 テレビ放送によりキャラクターを認知してもらい、番組内や合間のCMで商品を映して子どもたちに買ってもらう、という従来のキャラクタービジネスに対して「これまでと同じことをやっていれば同じような売り上げがついてくるという状況ではない」と語っています。

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アニメ本編ではおもちゃが魅力的に描かれている

 また、同誌では2020年の年末年始商戦においても、定番キャラクター商品が不調だったことについて、バンダイの反省点として「スーパー戦隊、プリキュアの立て直しができなかったこと」および「仮面ライダーの計画を落としたこと」があげられています。

今回の商戦で反省すべきは、ここ数年苦戦が続いてきたスーパー戦隊とプリキュアの立て直しができなかった点、そして仮面ライダーの計画を落としてしまった点です。
これら定番キャラクターの厳しさに関しては根本的な要因がどこにあるのか、今までのやり方ではもう難しいのではないか、そうした検討は既に始まっています。
2020−2021年末年始商戦総括 バンダイ アジアトイ戦略部デピュティゼネラルマネージャー本間隆史氏
(強調文は筆者による)
引用:『月刊トイジャーナル』(東京玩具人形協同組合)2021年2月号(P24)

 バンダイとしても落ち込みの要因がコロナ禍の影響だけだとは考えていないようで、「根本的な要因がどこにあるのかの検討」および「今までのやり方ではもう難しいのではないか?」と従来のビジネススタイルに疑問を持ち始めてきているのです。

 「日曜日の朝にわざわざリアルタイムで番組を見ないと始まらないビジネススタイル」は今の社会には適さなくなってきているのかも知れません。

少子化も進む

 「トロピカル〜ジュ!プリキュア」、アニメ自体は本当に良い内容で、Webを見ても自分の周りをみても子どもたちの評判もとても良いのです。

 2021年10月に公開された「映画トロピカル〜ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!」も、観客動員ランキングで初登場第1位(興行通信社調べ)となったり、東映アニメーションの決算短信でも「プリキュアのイベントが健闘し増収となった」ことが記載されるなど、決して「プリキュアというコンテンツ自体が低調では無い」のです。

 ただ関連商品(おもちゃ)が売れていないだけなのです。

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アニメ本編は絶好調な「トロピカル〜ジュ!プリキュア」

 これにはもちろん少子化の影響もあるものと思われます。

 2020年は出生数が84万1000人となり「ふたりはプリキュア」がスタートした2004年と比較しても、27万人減(25%減)となっています。

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出生数の推移(厚生労働省人口動態調査より筆者が作成)

 この先、少子化も進みますます市場はシュリンク(縮小)していくものと思われます。

 子どもの数が減る以上、売り上げを維持していくためには「子ども1人当たりが使う金額を上げる」「ターゲットを広げていく」かになると思われます。

 少子化に対し、2021年「トロピカル〜ジュ!プリキュア」ではキッズコスメ「Pretty Holic」を立ち上げ、未就学児だけではなく小学生児童を取り込んだり、映画においても「Yes!プリキュア5GoGo!」や「ハートキャッチプリキュア!」など過去の人気作とのコラボレーションによりかつての視聴者層を呼び戻す施策をとったり、小学生にも人気のYouTuber、Fischer’s(フィッシャーズ)との動画コラボや人気バラエティー番組「相席食堂」へキュアサマーが出演したりするなど、対象年齢を広げようと模索している姿も見られます。

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映画では過去作とのコラボが見られるようになってきた(画像はAmazon.co.jpから)

プリキュアは子どもたちのための作品

 プリキュアシリーズは社会の変化に柔軟に対応し17年間も続いています。

 日本の経済状況や「ノウハウが蓄積されたライバルコンテンツ」の台頭などもあり、この先もプリキュアのターゲット層の変化や拡大が行われていくのかもしれません。

 ただ、これまでずっと貫かれてきた「プリキュアは子どもたちのための作品」という点だけは絶対に無くさないでほしいと筆者は思います。

 子ども向けアニメーションのトップランナーとして走り続けてきたプリキュア、この先どんな新しい展開が待ち受けているのでしょうか。楽しみですよね。

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