切り絵を積み重ねて立体的な造形を生み出す“彫刻切り絵”の考え方を説明した動画ツイートが「やっぱり分からない」と話題です。編集部は作者の輿石孝志さんにインタビューして、実際の考え方についてさらに深堀りしてみました。
ツイートを投稿したのは、輿石孝志さん。輿石さんは「頭の中どうなっているのと、よく言われるのですが、本当こんなパラパラと層積図面を想像して作ってます」と言って、制作過程を映した動画をアップロードしました。
動画では切り絵が素早く重ねられていき、みるみるうちに美しい彫刻が出来上がる様子が見られるのですが……。うーん、やっぱり分からない。
Twitterでは、動画を見てなお「いやいやいや」「頭の中どうなっているのですか」とそのすごさを称賛する声が。中には彫刻の断面が積み重なって立体的になっていく様子を見て、「頭の中にCTスキャナを標準装備ですね」と医療用のCTスキャンを想起する人もいました。
「想像って言うか、完成図が頭の中にあって、それを分解して行けるんやろなぁ……」という推測もありましたが、実際のところどのように考えて制作しているのでしょうか。輿石さんにインタビューしました。
―― 彫刻切り絵を制作する際の考え方と、大まかな工程を教えてください。
輿石さん: 最初に大まかな外観デザインを決め、それから部分的パーツを考えます。パーツが出そろったら、奥行き順や視覚効果をもたせる順に配列していきます。100層の場合あらかじめ800レイヤーぐらいを作っておき、あとから100にまとめる感じになります。
―― 1つの作品あたりの制作期間はどれくらいなのでしょうか?
輿石さん: 30層ぐらいの物だと、気分がのっていれば3日ほどで制作できます。のっていないときは、途中で作業をやめ、やりかけのままストックしておいて、できる時に進めるという感じですね。また、100層以上ある大物だと構想に1〜2カ月、図面に3〜4カ月、制作に1カ月くらいかかります。
―― 彫刻切り絵を制作し始めたころと現在で、難しいと感じることは変化しましたか?
輿石さん: 始めのころは暗中模索状態だったので、10層ぐらいの段層構造を考えるだけでも知恵熱が出ていました。今はもっと効果的な新しい表現や構造など、初期と比べものにならない高度な物が作れる様になっていますが、今度はその都度探究心が上乗せされていくので、より難しさがこじれていってる気がします。
―― 最後に、彫刻切り絵に興味を持っている人にメッセージをお願いします。
輿石さん: ありがたい事にたくさんの方に興味を持っていただけるようになり、今ではグラフィック社から『立体の模様を作る彫刻切り絵』という書籍を出版したり、「NHKカルチャーセンター」の方でナイフを使った彫刻切り絵教室などを開催したりしています。興味のある方にはぜひチャレンジしていただいて、平面の模様が立体になって見える視点の面白さや気付きなどを一緒に共有できたらうれしいです。
輿石さんは10月24日から10月29日にかけて、東京都銀座の「GALLERY ART POINT」で開催されるグループ企画展「Stream 2022」に参加予定で、最終日の29日は在廊とのこと。輿石さんの生み出す美しい知恵の結晶を間近で見られる貴重な機会です。
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約5時間かけて全部の作品モノマネを撮影したそうです。