無料なのに難関校に続々合格――足立区が運営する受験対策塾が話題 担当者に“誕生の背景”を聞いた(1/4 ページ)
「後輩にもこの仕組みは絶対に残してほしい」という生徒まで。
「英数2教科、週に1回、100分の授業」「夏・冬合わせて計15日間の集中講座」「任意参加の特別講座(国理社)」――これは民間の塾の話ではない。足立区が運営する「足立はばたき塾」。そこでは、区営にもかかわらず、難関高校までをも視野に入れたハイレベルな授業が展開されているという。しかも、なんと授業料は無料。一体、なぜこれほどに手厚い教育支援が可能なのか。その背景や内情について、足立区教育委員会の担当者に取材した。
区営塾には珍しく“上位層”を対象に
「足立はばたき塾」は、足立区の区立中学(全35校)に通う全ての中学3年生を対象とした無料の塾として、2012年にスタートした。授業は週に1回、数学と英語の2教科をそれぞれ100分ずつ開講。その他にも、夏と冬には計15日間の集中講座や、英数以外の3教科(国・理・社)の特別講座、年3回の進路進学説明会など、民間の塾さながらの充実したサポートを提供している。
定員は25人のクラスが4つの総勢100人。区営の塾には珍しく「学力到達度」によってクラスが分けられており、そのため入塾テストを含めると、年に3回学力テストが実施されるという。また、9月から翌年の1月まで5カ月連続、外部の学力模試を受けるなど、志望校合格に向けたチューニングの機会も用意されている。
このように難関校を狙う上位層をターゲットとしている点に、はばたき塾の特色はある。はばたき塾の事業目的は「家庭の事情などにより、塾等の学習機会が少ないが、成績上位で学習意欲が高く、将来の夢の実現に向けて難関校高校等への進学を目指す中学生に対し、民間教育事業者を活用した学習機会及び受験情報を提供し、志望する高校への入学を支援する」というもので、さまざまな事情(※)で塾に通うことの難しい難関校志望者を対象としている。
※入塾までは「学校での告知(中学2年生時の1〜2月)」「世帯の所得審査」「入塾テスト」という流れになっており、「世帯の所得審査」は国の就学援助をベースに、所得や家族構成などで複合的に判断する。
実際、昨年の2021年度には、東京都が指定する進学指導重点校に3人もの合格者を輩出。進学指導特別推進校や進学指導推進校なども含めると、計32人もの学生がはばたき塾から志望校への進学を果たした。
区営の塾といえば、一般的に成績が芳しくない学生を対象とした補習をメインとするイメージがあるが、なぜはばたき塾はこのような体制になったのか。担当者の田巻さんによると、それは意外なことに“学校側の提案”が発端だったという。
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