複数vs複数の念戦闘
暗黒大陸編では「相互協力型」や「寄生型」など1人では使用/制御できない能力が次々に登場している。クラピカに対しイズナビが「念の戦闘は相手が複数ならこっちも複数が大原則」「それ程に能力の相性やコンビでの攻撃は個人の力を凌駕しやすい」と教えており、船内ではいかに相手陣営のハメ技を回避して自らの勝ちパターンに持っていくか、といった駆け引きが展開されそうだ。ちなみに冨樫先生は先の対談で「能力のルール内でハメ技みたいなものが起きないように考えるのが、また難しいんで。あの、どんどんその、ネットで考察されてしまうんで…」とも話している。
幻影旅団vsヒソカ
旅団の目的
幻影旅団はもともとカキンの王族が船内に持ち込んだお宝を盗むため、乗船する手筈だった。暗黒大陸に興味があるかは不明で、宝を奪えたらあっさり帰るかもしれない。しかし、天空闘技場でクロロが団員の念能力を借りてヒソカに完勝したところ、まさかの死後の念によりヒソカが復活し、コルトピとシャルナークを失ってしまう。盛大に喧嘩を売られたことで、ヒソカを狩ることが最優先事項となり、全団員がヒソカを狙って個人または複数人で行動している。
興味深いのはゾルディック家の長兄・イルミまで参戦したこと。ヒソカにヒソカ自身を殺すよう依頼されて旅団に加わったといい、「もちつもたれつだったけど 最後はどちらかがどちらかを殺すと思ってた」と心境を語っている。複数人に襲われることが高確率で予見されるときヒソカはどう動くのか。あえて単体で迎え撃つのか、さすがに協力者を得るのか。協力するとしたら誰か等々、旅団vsヒソカの行く末は見逃せない。
ゾルディック家との因縁
忘れてはいけないのはゾルディック家と旅団の因縁だ。過去にシルバが団員の1人を殺し、その際にクロロとも手合わせをしたようで、子どもらには「旅団には手を出すな」と伝えていた。ヨークシンシティ編では十老頭の依頼で再びシルバがゼノを連れてクロロと戦い、終始優勢に進めたが、土壇場でクロロが依頼していた十老頭の始末をイルミらが先に達成してお開きとなった。
蟻編ではカルトが入団し、団員らの近くにいるのは「兄さんを取り戻すため」だという。この兄さんが誰を指すのか不明だが、消去法でイルミ、キルア、アルカが消えると「ミルキ」が残る。ミルキといえば人形好きで、人形といえば念能力「オーダースタンプ(人間の証明)」を想起させる。もしかしたらクロロがミルキの能力を盗み、それを取り戻そうとしているのかもしれない。
クラピカの任務
個人目標
今のシリーズの主人公といえばクラピカだ。一番の目標は仲間たち(緋の眼)を取り戻すことで、最後の保有者を知るため十二支んに入り、その持ち主であるツェリードニヒに近づくためハンゾーやビスケ、イズナビまで頼った。第8王妃オイトには、あくまで“手段”として接触したはずが、結果的には彼女と第14王子ワブルの護衛のため、念の存在を王族関係者全員に伝えて王位継承戦を膠着状態に追い込むなど、一騎当千の活躍をしている。その働きぶりにはビヨンドの指示で乗船したビルも心を動かされるほど。
オイトとワブルの命を守りつつ、ツェリードニヒから緋の眼を回収する。読者視点からするとどちらも相当な難易度にみえる。さらに旅団との関わりもある。0巻にはクルタ族の犠牲者は「家族はそれぞれ向かい合わせに座らされて体中に刃物を刺され生きた状態で首を切られていた」という凄惨な記述がある。緋の眼の色を鮮やかにするためと推測されているが、これがどうも旅団のイメージと合致しない。ツェリードニヒが虐殺に絡んでいたのか、あるいはシーラとパリストンがネズミつながりで何かあるのか疑問点は多い。
チーム目標
十二支ん入りしたことで、ビヨンドたちを制御しつつ厄災のどれかを攻略という難易度Aの任務もこなさければいけない。その一環としてビヨンド脱走のリスクを下げるため、新大陸の上陸直前にサイユウを捕獲し、ビヨンドとのつながりを示す物証をあげる。これはミザイストムとクラピカだけで指揮する必要があり、失敗すると暗黒大陸での任務がより難しくなる。王位継承戦でそれどころではないかもしれないが、難題を複数抱えている。
なお、エンペラータイムの発動中、1秒につき1時間寿命が縮む制約が明かされた。発動すれば実に3600倍の速さで死に向かう。出航2日目の時点で12時間使っており、1800日(約5年)縮んだ。残りの寿命が仮に100年あっても、約10日発動したら尽きてしまう。クラピカに必要なのは暗黒大陸の究極の長寿食ニトロ米かもしれない。
キルアとアルカ
前章はキルアとアルカの物語だった。そしてアルカに潜むナニカは、暗黒大陸出身だと33巻に明記されている。「あい」というセリフからしても、5大厄災の一つ「欲望の共依存 ガス生命体アイ」の可能性が濃厚だ。ネテロが暗黒大陸を訪れた際、グルメハンターのリンネとゾルディック家のジグが同行していた描写もある。
キルアはアルカを溺愛しているものの、ガス生命体アイと良好な関係を築いている。これはネテロの指令――暗黒大陸より抱えた「厄災」のいずれかを攻略し「希望」を持ち帰ることをほぼ実践している。もし他の個体でも同じことができるなら攻略は目前で、キルアと十二支んが接点を持つのか要注目だ。いずれにせよ、まずは10週が読めることを本当にありがたく思う。
(高橋史彦)
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