近年、動物の虐待や飼育放棄、悪質な業者による販売、不適切な飼養が社会問題となっています。個人や団体、地域が行き場をなくした動物たちを守るため、日々保護活動に取り組む一方で、動物たちが命を失う悲劇は後を絶ちません。
昨今、COVID-19(新型コロナウイルス感染症/以下、コロナ)の影響でペットを飼う人が増加。一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査によると、2021年の新規飼育者は犬がわずかに減少しているものの猫は昨年より多く、ともにコロナ前より増加している結果となっています。
そんなペットブームの裏には、多頭飼育崩壊や飼育放棄などの問題が潜んでいます。家族の一員としてかわいがられるペットたちが多くいる一方、飼育放棄されたたくさんの犬猫たちが愛情を求め、里親を探しているのです。
そこで、ねとらぼ生物部では保護動物と暮らす読者にアンケートを実施。寄せられた数々のエピソードと写真を紹介するとともに、尊ぶべき命の輝きや、愛する家族との暮らしの喜びを伝えていきます。
第9回は飼い主・くろこさんと暮らす母猫さん。ガリガリに痩せていた母猫さんとくろこさんが交わした“ある約束”、そして大家族誕生までのエピソードをご紹介します。
―― 母猫さんとの出会いと、保護当時の状況を教えてください
くろこさん:秋田県の田舎の話です。2020年6月のある日、自宅の庭に置いている野良猫用のごはんを妊婦の猫が食べに来ました。
妊婦の猫は妖怪みたいにガリガリに痩せていたのにおなかが大きかったので、ごはんを食べに来たときに「あなた、悪いようにはしないから家で産みなさい。ちゃんと病院にも連れて行ってあげるから」と話しかけました。
捕獲しようとしましたが、逃げられてしまい失敗。その後も妊婦の猫はごはんを食べに来ていたのですが、来るようになってから2週間ほどしたらおなかがダルダルになっていました。
「子どもを産んだんだな」とは思ったのですが、子どもの居場所を見つけられず……。母猫だけ捕獲すると子猫が死んでしまうので、近所で野良猫が赤ちゃんを産みそうな場所を探し回りました。
子猫が産まれた(と推定される)日から40日ほど後、母猫が子猫6匹を家の野良猫用のエサ場に連れて来ました。多分、「ごはんはここよ」と子猫たちに教えてあげていたのだと思います。
そのときオス猫が現れ、子猫たちが一目散に逃げました。子猫たちはなんと自宅の中に入り、階段を上って2階に逃げて行ったのです。
2階を調べてみると、閉めていたはずの部屋の引き戸が少し開いていて、部屋に入ると押入れと引き戸が少し開いていました。その押入れの布団の隅に、子猫たちが固まって隠れていました。
押入れの布団はふん尿の臭いと跡があり、母猫はここで子猫を産んでお世話をしていたようでした。散々近所を探し回ったのに……。「家で産みなさい」と声をかけたことを理解していたようです。
―― 猫ちゃんたちの現在の様子を教えてください
くろこさん:その後、子猫6匹のうち、4匹は里親さんに、1匹は息子夫婦の家に、母猫と子猫1匹はわが家で育てることにしました。また3カ月後には、おそらく父猫と思われるオス猫も保護できたので、みんな仲良く幸せに暮らしています。
―― 最後に、保護動物に対する思いを聞かせてください
くろこさん:全ての猫を保護することは手が足りなくて出来ませんが、みんな幸せになってほしいと思います。
(了)
ガリガリに痩せ、まるで“妖怪みたい”だったという母猫さん。くろこさんの優しさを母猫さんがすなおに受け取り、家のなかで出産していた事実に胸があたたまります。
くろこさんと母猫さんが出会ったとき、お互いの心がきっと通じ合ったのでしょう。安心できるおうちで、これからも家族仲良く健康に過ごしていってくださいね!
ねとらぼ生物部では、引き続き「保護動物のエピソード&お写真」を募集しています! 犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
愛する家族との出会いのエピソードや、クスッと笑ってしまうかわいいお写真など、お気軽に【こちら】までお寄せください。皆さまからのご応募、お待ちしています。
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