近年、動物の虐待や飼育放棄、悪質な業者による販売、不適切な飼養が社会問題となっています。個人や団体、地域が行き場をなくした動物たちを守るため、日々保護活動に取り組む一方で、動物たちが命を失う悲劇は後を絶ちません。
私たちの身近な場所で繰り返されている、動物たちの殺処分や衰弱死などの厳しい現実。しかしまた一方で、動物との心あたたまる出会いや愛に満ちた生活が、保護活動によって生まれ、営まれていることも事実です。微力でも地道に保護という選択を伝え続けていくことが、動物たちの命を守ることにつながるかもしれません。
そこで、ねとらぼ生物部では保護動物と暮らす読者にアンケートを実施。寄せられた数々のエピソードと写真を紹介するとともに、尊ぶべき命の輝きや、愛する家族との暮らしの喜びを伝えていきます。
第4回は漫画家・kokewo(@kokemomoume)さんと暮らす猫の梅ちゃん(現在の年齢:8歳)。“猫風邪”の恐ろしさを知ったkokewoさん夫妻の奮闘と、梅ちゃんの回復までの軌跡をご紹介します。
―― 梅ちゃんとの出会いと、保護当時の状況を教えてください
kokewoさん:先住猫3匹との生活が始まり、ようやく落ち着いてきた9月半ばのある日、私たち夫妻は近所の産直センターへ買い物に行きました。そこで、1匹で鳴き叫んでいる子猫を発見しました。
子猫は寒かったのか、エンジンのかかった駐車中の車の下にいました。乗車していた男性は子猫の存在に気付いていなかったようで、「このまま発進していたら……」と考えるとゾッとしました。
その後、私たちは子猫を車が来ない草むらへいったん移動させて買い物へ。買い物が終わり草むらを見ると、子猫はまだ同じ場所にいました。
当時、迎えたばかりの先住猫たちの住み分けや体調に不安があったため、「このままにはしておけない」と思いつつも1日様子を見ることに。母猫が近くにいる可能性も考えましたが、翌朝見に行くと子猫はまだ同じ場所にいました。
子猫の姿を見た瞬間、私は1日様子を見てしまったことを後悔しました。子猫はたった一晩で猫風邪が悪化し、片目が涙でふさがっていたのです。子猫は体力がなくなっていたから、その場から動かずにいたようです。あの衝撃は今でも忘れません。
―― 梅ちゃんの現在の様子を教えてください
kokewoさん:先住猫たちとのテリトリーの問題に悩み、一時は里親に出すことを考えましたが、わが家に迎えることを決心し、「梅」と命名。猫風邪による右目の涙は8歳になった今でも時々出ていて、現在も点眼を続けています。
お兄ちゃん猫との初対面時、梅はびびって生まれたての子鹿のように震えていましたが、その後はまるでうそのようになじみ、今では仲良しです。
1匹、どうしても他の子となじめないおばあちゃん猫がいるのですが、梅はそのおばあちゃん猫にも果敢にも寄り添い、おばあちゃん猫は根負けしたのか、今では唯一、一緒にいても平気な関係になっています。
―― 最後に、梅ちゃんへの思いを聞かせてください
kokewoさん:梅との出会いは9月の半ば、朝晩の冷えも出てくる時期でした。猫風邪は放置しておくと成猫でも弱ってしまいますが、特に子猫は体調が急変しやすいそうです。
当時の私は猫を迎えて1年足らずの超初心者で、何も分かっていませんでした。猫風邪も恐ろしいですが、知識のなさも恐ろしいものです。猫風邪がたった一晩で急変してしまうことに驚くと同時に、安易に考えてはいけないと感じました。
そんな私を手助けしてくれた保護団体「かにさんズにゃみりー(@kanisanzunyamily)」のスタッフ・ハルさんに感謝です。ハルさんは先住猫を保護、譲渡くださった仮ママさんです。
現場でいろいろ経験されている方から言われて気付くことが多くありました。ハルさんがいなかったら梅はわが家に来ても適切な処置ができず弱っていたかもしれません。
個人はもちろん、保護団体も保護活動を続けていくには限度があると思います。私はある日突然“猫”に目覚めました。神様が「あなたは猫担当」って決めてくれたのかな!? なんてばかなことを考えています。
最初から猫好きな人はもちろんですが、私のようにある日突然目覚める人が増えれば、悲しいことも減っていくのではないかな? なんて思っています。
(了)
たった一晩で悪化してしまう猫風邪の恐ろしさやkokewoさんの葛藤、人と人との協力によって一つの命が救われていくことが伝わるエピソードでした。梅ちゃんが優しいkokewoさん夫妻と出会えて、本当に良かったです。
漫画家であるkokewoさんは、Instagramアカウント(@kokemomoume)やTwitterアカウント(@kokewo1)、ブログ「まいにちずむ〜猫に猛勉強させられてます〜」にて、4匹との出会いや日常を公開中。今回のエピソードも漫画「そして、出会いへ 白黒ハチワレの子猫編」シリーズとして公開されています。
また、「全ての猫さんたちに通じることではないかもしれませんが、何かしら猫さんに関わっている方たちの参考になれば」との思いから、猫と出会ってからの9年間で学んだ半野良問題、里親問題、猫の病気について描き、情報を発信しています。
ねとらぼ生物部では、引き続き「保護動物のエピソード&お写真」を募集しています! 犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
愛する家族との出会いのエピソードや、クスッと笑ってしまうかわいいお写真など、お気軽に【こちら】までお寄せください。皆さまからのご応募、お待ちしています。
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優しい人に保護されてよかったね。