北野武監督6年ぶりの最新作「首」 「日本の戦国時代を美化することなく1つの解釈として描けたら」
カンヌ映画祭の「カンヌ・プレミア」に日本人監督の実写作品としては初出品。
映画監督・北野武の最新作となる戦国スペクタクル映画「首」が2023年秋に全国公開されます。「本能寺の変」を描いた時代劇で、4月15日には北野監督の他、西島秀俊さんや加瀬亮さん、浅野忠信さん、大森南朋さん、中村獅童さんが完成報告会見に登壇しました。
原作は、北野さんが2019年に上梓した同名の歴史長編小説。その構想は、北野武名義で監督した4作目「ソナチネ」(1993年)と同時期に生まれたものだと言います。
“本能寺の変”をめぐっては現代でも数多くの諸説がある中、「裏で秀吉がかなり動いたのかな」(北野さん)と思ったのがきっかけで映画化しようと思っていたと説明。加えて、「今までの時代劇は、登場人物が歴史上偉大な人として描かれていて、裏に隠されている人間の業や汚さのようなものはあまり描かれていない」とし、「日本の戦国時代を、美化することなく、成り上がりや天下をとることの裏にある人間関係や恨みやつらみなども含め、正しくはないかもしれないけれど、1つの解釈として描けたらと思いました」と作品について語りました。
北野作品への出演は、「Dolls」以来となる西島さん、「座頭市」以来となる浅野さん、「アウトレイジ」シリーズ以来となる加瀬さんや大森さんに交じり、北野組に初参戦となった中村獅童さんは、秀吉に憧れる百姓役という本人いわく「今まで演じたことの無い役」「今までで一番汚い役」を熱演。秀吉が嘔吐(おうと)した後の川に沈められるシーンがあったものの本編ではカットされていたと明かすと、監督からは「ちょっと溺れ方が下手だったので(笑)」と返される一幕もありました。この他、木村祐一さん、遠藤憲一さん、桐谷健太さん、小林薫さん、岸部一徳さんの出演も明かされています。
「ほぼ全員と言っていいと思いますが、全員酷い役で、残酷なシーンもたくさん」と加瀬さんが明かしているように、「アウトレイジ」シリーズに見られるような“登場人物、全員悪人”の流れをくんだ内容を予感させます。登壇したキャスト陣からは、「滑稽なことと悲惨なことが隣り合わせ」(西島)、「この作品にヒーローは出てこないですし、ハードな描写も多いですが、この作品としての品格は北野監督ならではだと感じます」(中村)といった作品評も口をついて出ました。
ヴェネツィア国際映画祭では「HANA-BI」(1997年)で金獅子賞、「座頭市」(2003年)で銀獅子賞を受賞。「アウトレイジ 最終章」(2017年)は同映画祭のクロージング作品に選ばれるなど華々しい業績を残してきた北野監督。同作は5月に開催されるカンヌ映画祭の「カンヌ・プレミア」に出品されることが決定。2021年に設立された同セクションは従来の「ある視点」セクションの流れをくむもので、コンペの枠では賄いきれない良作のプレゼンテーション(提供)を目的に設立されたもの。日本人監督の実写作品としては初となります。
北野監督は会見の最後に、「スタッフや関係者に作品の出来を聞いているんですが皆褒めてくれる。自分は芸人だから嘘か本当かよく分かるんですが、その中でも大多数が本当に褒めてるなと感じて、成功したと思っています。出来たらこの映画がヒットしていただいて、あと何本か撮れる状態になればいいなと思ってます」と、作品の手応えと、今後の展望を明かしました。
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次回作に向けた展望も。