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ひつぎに入って帰宅した父犬に、息子犬が寄り添い…… 胸を打つ親子の絆と、埋葬後の愛に満ちた変化(1/3 ページ)

「ペットロスとの寄り添い方」第24回はヨークシャテリア・琥珀くんです。

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 多くの飼い主が一緒に暮らす動物を“大切な家族の一員”として捉え、人生をともに歩んでいます。動物と暮らした時間は長くとも短くとも、深い愛情を持って接した分、飼い主にとって人生のかけがえのない一部となり、別れは深い悲しみとなって心身に押し寄せます。

ペットロスとは

 愛する動物との死別による喪失感や混乱、後悔など、抱えきれないほどの悲しみによって心身が不安定になる状態を指す「ペットロス」「ペットロス症候群」。2023年、20歳〜69歳のペットを飼っているまたは飼育経験がある391人を対象に実施された「ペットロス」に関する調査では、「約8割が『ペットロス』という言葉を見聞きしており、約4割が実際に経験している」と発表されています(サンセルモsorae調べ)。

 飼い主にとって非常につらい経験となり、カウンセリングを要するケースもあることから、「ペットロス」「ペットロス症候群」は今、メンタルヘルス上の大きな課題として多くの人が向き合っています。動物とのこれまでの日々を忘れたり、死を乗り越えたりすることはできないかもしれませんが、時間の経過とともに受け入れ、いつかふと思い出したときにあたたかい涙がこぼれるような“寄り添い方”はあるはずです。

ヨークシャテリア 第24回は飼い主・みーちゃんさん/ヨークシャテリア「琥珀」くん

 そこでねとらぼ生物部では「ペットロスとの寄り添い方」をテーマに、読者にアンケートを実施。寄せられたさまざまなエピソードから、愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事をご紹介していきます。現在動物と暮らしている人や、悲しみの渦中にいる人に寄り添うヒントとなれば幸いです。

第24回 飼い主・みーちゃんさん/ヨークシャテリア「琥珀」くん

―― 琥珀くんのプロフィールと出会い、思い出や印象的なエピソードを教えてください

みーちゃんさん:琥珀はわが家で生まれた3匹の子犬のうちの1匹です。他の子たちは里親さんのもとで暮らすこととなりましたが、琥珀だけ体が弱かったため残しました。母犬は子育てを放棄してしまったのですが、父犬が排尿排便を促したり、琥珀が10歳になるまでかばうように寄り添って寝ていたりしていました。そのため、琥珀はいつまでたっても甘えん坊だと思っていました。

 私は病気で意識を失ってしまうことがあるのですが、父犬は不思議なことに、倒れる前になると私のそばを離れませんでした。台所にいてもトイレやお風呂にいても、陰から見ていました。私が意識を失って気が付いたときには、いつも体をあたためてくれていました。

 ある日、新しくできた犬の美容室に愛犬たちを預けたのですが、帰ってからみんなの様子がおかしくて……。琥珀は黒目が陥没し、動物病院に通いました。父犬は見た目が変わらないので、ごはんを食べなくても気にしていませんでしたが、ある夜、突然状態が悪くなり、動物病院に連れて行ったときには手遅れでした。

 美容院で何があったのか。それは脳からの出血でした。白いひつぎに入って帰宅した父犬に、琥珀はいつものように添い寝しようとふたを開けて入ってしまいました。何度閉じようとしても箱をかんで、破ってでも冷たくなった父犬と寝ようしました。化膿してただれた目を保護するカラーを外したら、「早く起きて!」というように父犬の顔をなめ続けました。

 父犬を埋葬してから、琥珀は少しずつ父犬がしていたような行動をし始めました。美容室から帰ったとき、琥珀と一緒に父犬を動物病院へ連れて行けば良かったと、自分を責めて泣き崩れる私に琥珀は寄り添ってくれました。私を1人にしませんでした。

―― 琥珀くんと別れてからの心境や、救われた出来事などがあれば教えてください

みーちゃんさん: そのうち琥珀の足に腫瘍ができて、足を切断。白内障で失明し、眼圧が高いため、眼球が飛び出しました。そして入院中に認知症になると、私を忘れて逃げ惑うこともありました。けれど、忘れてもまた一から始めたらいいと思い接しました。

 そうして信頼関係を築いていたとき、琥珀は他の犬に襲われた私を助けに来て、頭に傷を作ったり、見えない目をかまれて血だらけになってしまったりしました。琥珀の存在は、日々大きくなりました。ボロボロになっても頑張っている姿を見ていたら、だんだんと、もう頑張らなくていいと思うようになりました。父犬がしていたように、琥珀も私を守ろうと、自分が苦しいのに、ぶつかりながらヨロヨロと私の足元に来てくれたから。これ以上、苦しい時間が続かないように願ってしまいました。

 そして突然、その日がやって来ました。ごえんであっという間でした。14歳でした。生まれたとき、そして最期。私の腕の中でした。死に対して、こんな不思議な感覚になるとは。父犬が天国へ旅立ったときは泣き崩れた日々だったのに。琥珀、こんな顔をしていたっけ? よく頑張ったね、苦しくなかった? もう痛くないよと。それからも気が付くと勝手に涙が出ていたり。現実のような、夢の中のような感覚でした。

 そんな私を見ている存在に気が付きました。私は多頭飼いをしています。生きている子はおなかが空きます。ウンチもします。ジッと泣いてばかりいられません。だからその子たちのそばに琥珀や父犬の写真を飾りました。ごはんのときは一緒に食べているように感じました。琥珀のお気に入りのおもちゃで遊んでいたら、一緒に取り合いしているように思いました。

―― 現在の心境を教えてください

みーちゃんさん:琥珀が虹の橋を渡ってからは、いろいろな葛藤がありました。琥珀ならこうしてくれるのに! とつい他の子に言ってしまうときがあります。ネットに“虹の橋にいる子がどんな感じでいるか”という内容のものを見て号泣しました。完全に過去にしようとするから悲しいのであって、そばにいると思ったり、生まれ変わりだと思えた子に出会えたのが良かったと思います。

 毎朝、写真に向かって「いつもそばにいてね」と声をかけています。琥珀は消えたのではなくて見えないけどそばにいてくれている。そう思っています。だって、悪いことをする犬もいれば、新しく迎えた子もいて……、 琥珀の生まれ変わりだと思った子が、同じように割り込んで来て吠えて助けてくれますから。

 新しい子が琥珀であってもなくても、虹の橋のたもとで父犬と待っていてくれると思うから。私が元気になるようにいつも監視してくれていたのだから。毎日、写真に笑顔で声をかけられる私でいたいと思います。無理に忘れようとしていないし、過去にもしていません。ムービーに元気だった時期もあるし、相変わらずかわいいなと思っています。

―― 琥珀くんに伝えたいメッセージ

みーちゃんさん:もう見えるようになったかな? 父犬に甘えていますか? 痛みもなくなって走ってますか? 虹の橋で待っていてね。

(了)

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