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コスパ最強ホラー、公開25年目のリブート決定に主演俳優3人が“正当報酬”要求 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1/2 ページ)

過去に30万ドルを受け取りながらも再度声を挙げた意図は。

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 低予算で製作され、世界中で予想外のヒットを飛ばした1999年のホラー映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」。公開から25年たった今も人気が高く、4月10日には現在版権を持つライオンズゲートとブラムハウス・プロダクションズがリブート版の製作を発表しました。これにオリジナル版の主演俳優3人が、正当な報酬を求め公開書簡をリリースしました。

ブレア・ウィッチ・プロジェクトの公開から25年たち主演俳優らが正当報酬を求める
1ドルにつき4000ドルのリターンとなった異例の収益(画像はジョシュア・レナードのInstagramから)

コスパ最強伝説を持つ「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」

 6万ドル(当時のレートで約670万円)という低予算で製作されながら、批評家から絶賛され世界興行収入は2億4800万ドル(約387億円)という、史上最も成功したインディペンデント映画の1つとなった同作。魔女伝説のドキュメンタリーを撮影するため森に入った3人の学生が行方不明となり、発見されないまま捜索は打ち切りになった、という設定から始まるストーリーで、その1年後、3人が消息を絶った森でフィルムとビデオカメラが見つかります。そこへ映っていたのは、正体不明の何者かに襲われ恐怖におののく3人の姿でした。

 現実味ある映像や、無名の俳優が使われたこと、また映画をドキュメンタリーのように見せかけるモキュメンタリー手法や宣伝方法により、これが事実だと思い込む人が続出し、“行方不明になった学生”を演じた俳優の家族へお悔やみの手紙を送る人もいたというほどです。

 さらに映画のヒットを受け、書籍、コミック、ゲーム、CD、ドキュメンタリー、パロディーなど多種多様なメディアミックスにも成功。当初配給元だったアーティザン・エンターテインメントを2003年にライオンズゲートが買収し、2016年にはオリジナルの20年後を描いた続編「ブレア・ウィッチ」が公開。2024年になった現在も注目度は高く、4月8日から11日までラスベガスで開催されていたシネマコンで、オリジナルのリブート版製作が発表されたばかりです。

元“無名の俳優”3人の要求は?

 主演3人は2000人からオーディションで選ばれたジョシュア・レナード、マイケル・C・ウィリアムズ、ヘザー・ドナヒュー(現レイ・ハンス)の3人。当時は全くの無名であり、作中では本名のまま登場します。現在は完全に俳優業を引退しているヘザーは、本名のまま出演したことでさまざまな弊害に悩まされたとして、2020年に「レイ・ハンス」と改名しています。

 3人はリブート版の製作発表を受け、ライオンズゲートに向け公開書籍をリリース。まず、1999年のオリジナル版に出演した際、無名の若者であった彼らには、俳優として労働組合の恩恵を受ける権利がなかったと主張。当時適切な組合や法的代理人がいたならばSAG-AFTRA(映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟)を通じて支払われていた遡及(そきゅう)的・将来的な報酬の支払いを求めました。

 次に今後リブート版や続編、前日譚、その他ゲームなどの同作に関する新作が発表される場合、自分たち3人とも「有意義な協議」ができるようにと嘆願。その理由としてオリジナルから派生した作品群は軒並みファンから不評であると指摘。そしてこのたび発表されたリブート版について、オリジナルの出演者である彼らは何も知らされておらず、しかしながら本名で出演した3人は作品や宣伝において肖像や名前が使用される可能性が極めて高いことも主張しています。

 最後に、「ブレア・ウィッチ・助成金」としてオリジナル映画の予算であった6万ドルを毎年支払うことを求めました。これは映画製作を志す人に対し、初の長編映画製作を支援するために使われる予定で、ライオンズゲートがそのプロジェクトに関与することはできないとしています。

ハリウッドの慣習を変えたい 25年目の要求の意図

公開から25年たち「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の主演3人が再度正当な報酬を求める
1999年のオリジナル版に主演した3人(画像はマイケル・C・ウィリアムズのInstagramから)

 2016年の続編製作に際し、ライオンズゲートはオリジナルの版権を買い取るため、3人にそれぞれに30万ドル(記事執筆時点のレートで約4700万円)を支払っています。3人はそれを受け取ったこともあり、今回の公開書簡を先導したジョシュアは別のInstagram投稿で、今回の要求に「法的な根拠があるかはわからない」と認めています。

 しかし今回の公開書簡は金銭目的で決断されたわけではないとジョシュア。自分たちが問題としているのは法的なことではなく「人間としての良識」だと述べ、「世界中でものづくりをしている人々、つまり企業が利益を得るために背後で協力している職人たちの功績を認めず、敬意を払わないという古くからの物語」を問題視し、これから映画製作をする若者のために声をあげているとしています。

 また、自分たちは版権を売り渡すためお金も受け取ったものの、それはとても若いころに組合や法的代理人の支援なく結んだ契約で、当面の生活費を心配せずに済むことは無名の役者にとって大変に魅力的なものだったとのこと。そして若く無名な役者が法的な支援を持ちつつ契約を結ぶことはほとんどないことだと主張し、この慣習を断ち切るべく立ち上がったことを説明しました。

 この公開書簡に対し、多くの人は支持を表明。「これはハリウッドにおける重大問題であり、解決されなければならない。俳優やクリエイターは、再使用料を受け取り企業から敬意を受けるべき」「待って、再使用料は払われてなかったの? まるで狂気だよ」「このフランチャイズは、最初にこれを作った人々なしには成り立たないんだよ!」「3つ目の(ブレア・ウィッチ・助成金の)要求はすばらしいアイデア。経済的制約のため、大きな未来から締め出されている才能がどれだけあることか」など、多くのエールが送られています。

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