飛べなくても、目が見えなくても…… “生きる意思”を強く見せたセキセイインコ、穏やかな最期に「たくさんありがとう、大好きだよ」
「ペットの介護エピソード」第11回はセキセイインコのきみちゃんです。
近年、飼い主の「ペットは家族の一員である」という意識が高まり、ペットに対しても健康で長生きできるように、生態や習性に合わせた適切な飼養管理が行われるようになってきました。生活環境や栄養状態の改善、ワクチンや駆虫薬の普及、獣医療の進歩などさまざまな要因で、ペットの平均寿命が延びています。
「一般社団法人ペットフード協会」による「令和2年(2020年)全国犬猫飼育実態調査」では、犬の平均寿命は14.48歳、猫の平均寿命は15.45歳。10年間で犬は0.58歳、猫は1.05歳寿命が延びています。成犬・成猫は1年で人間の4歳分の年齢を重ねるといわれており、大きく寿命が延びていることが分かります。
寿命が延び、愛するペットとともに長く暮らしていけることはとても幸せなことですが、長寿化ゆえに新たな課題も発生しています。それは加齢により生じる体の不調です。
ペットも人間と同じで、歳を重ねるにつれ体力や免疫力が落ち病気にかかりやすくなったり、足腰が弱ってきたりします。それだけでなく、認知症や寝たきりになって、人と同様に介護が必要になるケースも。もちろん加齢だけでなく、病気やケガなどが原因で介護が必要になることもあるでしょう。
そこで、ねとらぼではペットを介護した経験のある読者にアンケートを実施。寄せられた数々のエピソードと写真を紹介するとともに、介護の現実や厳しさだけでなく、その経験から生まれるペットへの深い愛情や命の尊さを伝えていきます。
第11回 セキセイインコの「きみ」ちゃんと飼い主さん
―― 介護が始まったときのペットの年齢と、きっかけを教えてください
6歳ごろに頭蓋骨の小ささによる神経系の斜頸(左右のどちらかに首をかしげる姿勢をとる状態。重度になると立っていられずに転倒してしまうこともある)を発症し、7〜8歳ごろから介護が始まりました。その後両足の腱断裂、白内障で視力を失うなど老化による症状も出ました。私(飼い主)が介護をし、10歳3カ月で虹の橋を渡りました。
―― どのような介護をしていたのでしょうか
斜頸のために飛ぶことを断念せざるを得なかったことと、両足の腱断裂により止まり木にとまれなくなったので鳥かごを卒業し、プラケースでの生活へ移行しました。白内障で視力を失ってからは自力で水を飲むことは危険だったので、数時間おきに水を飲ませました。
小鳥の専門病院は少ないので3カ月に1度、2時間ほどかけて横浜小鳥の病院で定期健診を受けていました。最期の2〜3カ月は自力でご飯を食べることも難しくなっていたので、雛のときにやっていたような挿し餌でご飯を食べさせていました。
―― 介護する中で一番大変だと感じていたことを教えてください
介護をしていたときは必死だったので、そのときは大変だとは思いませんでした。
―― 介護生活のなかでの学びや気付いたことがあれば教えてください
どんな生き物も、老化や病気を受け入れて生きることを諦めないこと、小さな小鳥から生きたいという強い思いをとても感じました。
きみちゃんのほかにも小鳥と暮らしているのですが、その中でもコザクラインコのはるちゃん(女の子)は、頼んだわけではないのに状況に気付いてくれて、羽繕いなど一緒に介護をしてくれるようになって、それが非常に助かりました。
―― 介護生活の中で心掛けていたことがあれば教えてください
病気や老化によりできないことが増えていく中で、できないことの手助けを全てはやらないように気を付けていました。今はほおっておいてほしい、手伝ってほしい、介護をしている中で意思疎通ができるようになっていたので、全てを介助するというよりはできないことに少し手を貸していました。
―― 介護していたペットへの思いを教えてください
頑張ってくれて本当に本当にありがとう。一緒過ごした時間はとても幸せだったよ。
―― 介護中の方へのアドバイスがあれば教えてください
最期の日までできるだけたくさんの時間を一緒にいてほしいです。介護は大変なことです。私は約3年間の介護生活でした。やり切ったとは思わないですが後悔はあまりないです。「お互いによくやったよね。頑張ったよね。たくさんありがとう、大好きだよ」と言ってお別れをしました。最期はとても穏やかで眠るように旅立っていきました。最期は苦しまず穏やかに……という飼い主の願い通りの最期でした。
振り返れば大変なこともあったような気もします。今は有り余る時間がとても寂しいです。今できることを存分にしてあげてほしいです。きっといいお別れができると思います。
(了)
少しでも健康で長生きしてほしいからこそ、介護に全力を尽くし、自身の生活や心身に大きな負担を掛けてしまう飼い主さんも少なくありません。状況によってはペット介護サービスを利用する、同じく介護をしている人たちと情報を共有するなど、1人で抱え込まない環境づくりも大きな助けになるでしょう。
これからペットを迎えようと考えている人や、現在介護の必要がない飼い主さんは、健康寿命を伸ばす対策をする、介護の知識を取り入れるなど、少しずつ準備を始めておくと良いかもしれません。介護も含めて大切なペットとの一生です。その時間も愛せるようにペットと寄り添い続けていきたいですね。
※「ペットの介護エピソード」の応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました!
「ペットの保護エピソード」応募フォームはこちら
「ペットロスとの寄り添い方」応募フォームはこちら
画像提供:きみちゃん@きみとはる、時々きなこYouTube(@tamagono_nakami)さん
オススメ記事
関連記事
- 亡き夫が連れて来た子犬が成長し、虹の橋を渡った日…… 家族をつないだ14年と「これからの幸せ」を願う姿に涙がとまらない
「ペットの介護エピソード」第10回はイングリッシュ・ポインターの悟空くんです。 - 多くの持病を抱え11歳で介護が始まったワンコ…… “永遠の愛をくれた”愛犬を守るために奮闘した日々
「ペットの介護エピソード」第10回はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのリリィちゃんです。 - 寝たきりになった14歳のハスキー 10年ぶりのわが子たちとの再会を胸に虹の橋を渡り……「今を大切に生きた」姿に感動
「ペットの介護エピソード」第9回はシベリアンハスキーのダイアちゃんです。 - 14歳で介護が必要になった愛猫に寄り添う飼い主 猫の意思と尊厳を守りながら「一緒に暮らせて幸せだった」日々に涙
「ペットの介護エピソード」第8回はアビニシアンの殿くんです。 - ヘルニア、角膜腫瘍、歯周病に悩まされるも…… 前向きに生きるワンコと介護に“笑顔”で向き合う飼い主に感動
「ペットの介護エピソード」第7回はミニチュアダックスフントのたまごちゃんです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.