webtoon(ウェブトゥーン)というものがある。スマホの画面で読むことを想定して作られた縦読みマンガで、上から下にスクロールすることで読み進められる。
上から下にスクロールするとシームレスに場面がつながっていったり、バトルマンガの決め技がダイナミックに描かれていたりと、縦読みであることを活かした迫力ある描写も特徴のひとつだ。
そんな“webtoonの気持ち”を理解したい。作り手の気持ちではなく、webtoonのそのもの気持ちを理解したいのだ。上から下にスクロールされるのはどのような気持ちなのだろうか? そこで100mのバンジージャンプに挑戦してみようと思う。
LINEマンガでwebtoon
LINEマンガというものがある。LINE Digital Frontierが運営している電子コミックサービスだ。無料で楽しめるマンガも多い。私はスマホのアプリでLINEマンガを読んでいる。
LINEマンガでは人気作や名作はもちろん、オリジナル作品や独占・先行配信作品などたくさんのマンガを取り揃えており、いろいろなジャンルの作品が楽しめる。そしてその中で縦読みマンガ・webtoonも多く取り扱っている。
私は2年ほど前に、webtoonを印刷したらどのくらいの長さになるのか実験した(その記事はこちら)。A4の紙に印刷していった結果、その長さは約100mになった。紙にするとwebtoonは100mもあるのだ。長い。実際はスクロールして読むし、物語が面白くてついつい読み進めてしまうから、長いなんて思わないけれど。
では、我々に読まれているwebtoon側はどんな気持ちなのだろうか? 上から下へ100mくらいの距離をスクロールされるというのはどんな気持ちだろうか。恐怖を感じているかもしれない。webtoonの気持ちを理解することで、webtoonを読む姿勢も変わるのではないだろうか。
100mのバンジージャンプ
上から下へ100m移動するwebtoonの気持ちを理解するために、茨城県にある「竜神バンジー」を訪れた。竜神大吊橋の上から、真下にある竜神ダムの湖面に向かってジャンプする。その高さは約100m。以前印刷したwebtoonと同じくらいの長さなのだ。ここからジャンプすればwebtoonの気持ちが理解できるという算段だ。
せっかくなら私だけではなく、LINEマンガを運営する人にもwebtoonの気持ちを理解してもらった方がいいのではないかと思い、今回はLINEマンガの方にも来ていただいた。
参加するのはLINE Digital FrontierのLM Growth Planning室長・玉置元喜さんだ。LM Growth Planning室長ということで、要するにLINEマンガの中ですごく重要なポジションにおられる偉い方だ。「とても忙しい人なのにまさかこの企画に参加してくれるとは」とLINEマンガの他の社員さんが驚いていた。それだけLINEマンガ側も本気ということだろう。
バンジージャンプをすればwebtoonの気持ちが理解できます!
そこが今も分かっていなくて。webtoonの気持ちってなんだろう……?
「登場人物の心情を答えなさい」、「作者の気持ちを述べよ」みたいな感じで、webtoonの気持ちですよ!
分かんないんだよな……
バンジージャンプは好きですか?
飛んだことないし、飛ぼうと思ったこともないですね。分かんないけど、スクロールするのがトラウマになりそう!
もう若干webtoonの気持ちを理解し始めていますね!
地主さんのほうは、バンジージャンプはどうなんです?
ダメなんです、僕、ダメなんですよ……webtoonの気持ちも、この企画を考えたときの自分の気持ちも分からないです!
お互いにバンジージャンプは初めてだった。そして、お互いがバンジージャンプを得意とはしていない。でも、全てはwebtoonの気持ちを知るためなのだ。それを知ることができたら、webtoonへの理解はもっと深いものとなるのだ、たぶん。
準備が着々と進むにつれて、webtoonの気持ちってなんだろう、と私も疑問を感じ始めたけれど、ここまで来たらもう飛ぶしかない。ハーネスもつけてしまったし。恐怖を感じている。
室長、飛ぶ!
「バンジージャンプ確認書兼保険申込」などにサインをしてから、吊り橋の中央付近にあるジャンプ台まで歩いて移動した。撮影したのは12月、橋の上では風が吹いていた。あとで気温を確認したら4度だった。でもこのとき私は全く寒さを感じていなかった。恐怖で感覚が失われていたから。
これは確かに、怖い。ダメかも、ダメかも。ヤバいぞ! ヤバいぞ! 前だけを見て、怖いです、怖いです、怖いと緊張? 怖い。高いところは嫌いじゃないけど。ずっと心が重くて。飛んだら軽くなる? 怖い。これ、すごい、これ無理だ。おお、すげ! すげ!
玉置さんは、怖いと言いながらも全く迷いなくジャンプするポイントまで移動していた。これが大手企業の偉い方だ。これがLINEマンガだ。カッコいい、と思ってしまった。
そして、係の方のカウントダウンが始まる。5秒前から。5、4、3、2、1
飛んだ。玉置さんはカウントダウン通りにすぐ飛んでいった。出会ったときは物静かな感じの方という印象だったけれど、飛んだ瞬間は「ウォー」と絶叫していた。そして、当たり前だけれど、すごいスピードで落ちていった。このスピードでwebtoonを読むと以下のようになる。
読んでいるのは、「LINEマンガ 2024 年間ランキング(連載)」の1位を獲得した『入学傭兵』。バンジージャンプのスピードで読むと全く理解できない。
めっちゃ怖かった! めっちゃ怖かった! 怖かった……! はぁ…………怖かった!
玉置さんは怖かったと連呼していた。つまりwebtoonも怖いということだ。このスピードでwebtoonを読むと、webtoonは怖い思いをすることなる。それは可哀想だ。
階段を100メートル分歩いて降りるだけならここまで怖くないはずだ。バンジージャンプのスピードだから恐怖を感じる。webtoonを読むときはゆっくり読もう、ということになる。webtoonは全篇フルカラーだから、じっくりゆっくり読むのに適している。
どうでしたか?
怖いのは怖いです。途中でどんどんスピードが上がってきて、おぉ!!! って。落ちるにつれてどんどん速くなって
怖い!
なんというか、飛んでいる自分が見えた気がしたんですよね。第三者視点というか
幽体離脱ってこと? エピソードも怖い!
地主、飛ぶ!
正直な話、私ダメなんです、高いところ。厳密には高いところはいいのだけれど、そこから飛び降りるのがダメ。いや、そんなのみんなそうだと思うけれど。
もちろん飛ぶのが本当に嫌とかではなかった。この企画も自分で考えたし。ただ、ジャンプ台を目の前にしたらやっぱり怖かったのだ。
もう書いてしまうと、本当は私が一番手に飛ぶ予定だったのだけれど、淵まで行くと怖くて足がすくんで、無理です、と飛ぶのをやめて玉置さんに飛んでもらった。
葛藤がすごかった。玉置さんが飛んだから、もうwebtoonの気持ちは分かったと言える。「速いと怖いからじっくりゆっくり読もう」という結論でいいではないか。私のジャンプって必要? と心の中で何度も何度も叫んだ。
悩んでいる私を見たバンジージャンプの係の方が「心が重いときはバンジージャンプをすれば軽くなります」と言った。
心が重いの、これが原因なんですよ!
ごねに、ごねた。ここまで来てやめた人はいません、と係の人は言った。じゃあこれが最初の一人だよ、記念すべき! と思ったけれど、飛びたい気持ちもやはりあるのだ。私も身をもってwebtoonの気持ちを知りたいから。
ということで、カウントダウンが始まる。5、4、3、2、1
上のGIFを見てもらうと、あっという間に終わったのが分かると思う。しかし、私には全てがスローモーションに見えていた。湖面が近づいてくるのがスローモーションで見えるのだ。玉置さんは速さが増す、と言っていたけれど、私は逆でどんどん遅く見えた。ただ感想は一緒。「怖い」である。
こんなスピードで読まれたらwebtoonも恐怖しか感じない。身をもってそう感じた。恐怖なのだ。webtoonは面白いから一瞬で読み終えてしまうという人もいるかもしれないけれど、実際はじっくりゆっくり読むべきなのだ。怖い思いをさせたら可哀想だから。
ちなみに『入学傭兵』めちゃくちゃ面白いから、じっくりゆっくり読んだ方がいいよ!
ビヨン、ビヨンが落ち着いた頃に目元を触ると涙が流れていた。世界一美しい涙だと思う。本当に怖かったから。だからこそ言えるのだ、webtoonも速いと怖い。じっくりゆっくり読んであげてほしい。
webtoonの気持ちがめちゃくちゃ分かりました。速く読まれたらこんなに怖いんですね。じっくりゆっくり読むことが必要と感じました!
俺、まだ分からないんですよね、何で飛んだんだろう……
webtoonの気持ち分かりませんでした?
逆じゃないですかね? 読者は上から下に読むけど、webtoon自体は上に移動してません?
あ、確かに……逆バンジーですね
ただこれ、飛んだ方がいいですね。そしてwebtoonはじっくり読んでほしい!
何にせよ、速いと怖いですから!
怖かった、本当に怖かった!
webtoonもバンジージャンプも楽しい
この挑戦を通じて、webtoonの気持ちを理解できたと思う。ゆっくりじっくり読もうということだ。webtoonはその仕組みはもちろん、内容も楽しいから。そして、実はバンジージャンプも楽しい。飛んだ後に清々しい気持ちになれたから。機会があればまた飛びたいと思う。たぶんまた10分以上ごねるけど。
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提供:LINE Digital Frontier株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2024年12月26日