ニコニコ町会議が青春の1ページ 岩手県洋野町に地元の中高生集結、5000人が来場:達増知事もやってきた
人気ドラマ「あまちゃん」のロケ地としても知られる人口1万8000人の町に5000人が集結。大雨のハプニングにも負けず盛り上がった。
ニコニコ超会議の出張版「ニコニコ町会議」が7月14日、岩手県洋野町で開かれた。人口1万8000人の町に集まった来場者の数は5000人。その多くが中高生だった。超会議の場合は男性の方がやや多かったが、今回の町会議は客の7〜8割が女性。出演者がステージなどでパフォーマンスするたびに黄色い歓声が響いた。
この場所が開催地に選ばれたのは地元の女子高生アリサさんが運営側に送った推薦文がきっかけだった。さらに達増拓也・岩手県知事が「岩手でやって欲しい」とツイートしたことも強い後押しとなり実現した。ニコニコ町会議で青春の1ページを刻む若者たち、その表情を追った。
特徴は出演者との近さ、泣き崩れる女の子も
ニコニコ町会議は超会議に来られない地方のユーザーのために「ニコニコ側から出向いちゃおう」(ニワンゴ杉本誠司社長)と企画されたイベントだ。昨年始まり今年は洋野町のほか全国7カ所で開催する。観光庁の後援も受けていて町おこしにニコニコが一役買っている。
当日はステージでのど自慢やライブが行われる一方で、広場では踊ってみたのレッスン、テントの中ではゲーム実況……という風に出し物が同時進行し、それぞれの場所にそれぞれのファンが1日中張り付いていた。熱い視線の先にいるのは歌い手のぽこたさん、ゲーム実況の「M.S.S Project」などニコ動の人気者たちだ。
超会議と違って会場がコンパクトなため、出演者との距離はかなり近い。1メートル先に憧れの人がいる! そんな感動で思わず泣きだしてしまう女の子も1人や2人ではなかった。出演者も来場者に気軽に話しかけたり、写真撮影やサインに応じたりと町会議ならではの“距離感”を意識しているように見えた。
ウニで有名な洋野町は、最近では人気ドラマ「あまちゃん」のロケ地としても知られている。町会議の会場から500メートルほど離れた場所で同時開催されていた「たねいちウニ祭り」はあまちゃん効果もあって大盛況。昨年の来場者1万2000人を大きく上回り、今年は過去最高の2万人が訪れたそうだ。
町会議の客の多くは、ウニ祭りではなく町会議だけを目当てにやってきた人たちだ。開場4時間前の朝8時から並んでいたという先頭グループは地元の中学2年生。「歌ってみたや踊ってみたが大好き」と照れながら語ってくれた。ぽこたさんのステージでも1番前を陣取り、両手を顔の前でギュッと握りしめて真剣に聞き入る様子が印象的だった。
午後1時すぎに始まったゲーム実況のテントでは常時100人以上の女の子が人垣を作りM.S.S Projectの掛け合いを楽しんだ。プレイしていたタイトルの1つがマインクラフト。その中でウニっぽい黒い物体が出来上がっていく。海に面した会場で景色や本物のウニに目もくれず、ひたすらゲームの中の“ウニ”で盛り上がる……ちょっと不思議な光景が広がっていた。
その隣では大道芸人うーさんによるワークショップが開かれ、小さな子どもにも人気だった。バルーンアートに挑戦していた中学2年生は新聞で町会議のことを知り、両親を説得して一家5人でやってきたと言う。ニコニコ動画そのものはあまり見ないが、歌い手のCDはたくさん持っていて学校の教室でもよく聞いているのだそうだ。
町会議を洋野町に呼んだ女子高生アリサさん
この場所に町会議を呼ぶきっかけを作ったアリサさんは高校1年生。洋野町から1時間かけて青森県八戸市の高校に通っている。通学時間はもっぱらスマートフォンでニコ動を視聴。「受験勉強中はニコ動を見られなくて辛かった」「最近プレミアム会員になっちゃいました」と彼女の言葉の端々からニコ動好きが伝わってくる。
開催地は、ユーザーの推薦や自治体からの応募があった400以上の市町村から地域ごとのバランスなどを考慮した上で決定している。アリサさんが応募した理由は洋野町を知ってほしいという地元愛から。「おじいちゃんはウニを採っているんです。ここ(会場の種市海浜公園)にはウニの栽培センターもあって津波で壊れたけど今は新しくなったんですよ」。
アリサさんはこの日、達増知事らとともにテープカットして開会を宣言したり、幼馴染と一緒にステージで歌って踊ったりと大活躍だった。歌い終わった後は「緊張して何も覚えてません。足が震えたけど、気持ちよかった!」とこの日1番の笑顔。「ニコ動をきっかけにできた友だちもいるし、ニコ動は私を楽しい気持ちにさせてくれる」――アリサさんにとってニコ動は青春そのものという感じだ。
地元を盛り上げたいという思いで町会議に参加していたのはアリサさんだけではない。ボランティアスタッフの粒さんは本業が町役場の職員。ニコ動はβの頃から登録していて今回は個人で参加した。「今年はボーナスステージみたいなもの。これからも若者たちが喜ぶイベントを企画できるよう、ヒントを得て帰りたい」と早くも来年以降を見据えていた。
今回の町会議は昼間晴天に恵まれたが、最後に急な大雨が降り、スタッフや来場者がずぶ濡れになってしまった。それでも途中で帰ってしまう人は少なく、締めの盆踊りも雨の中で決行された。来場者の多くが“ただのお客さん”としてではなく「町会議を作り上げ盛り上げるのは自分たちだ」という意識で参加していたからかもしれない。
ニコ動のプレミアム会員だという達増知事は「洋野町のきれいな海と山、おいしいウニ、田舎の良さをネットを通じて知ってほしい」と話す。ニコ動を「社会的なメディアとして優れている」と評価しており「地域振興に活用していく」と意気込む。
次の町会議は7月27日、香川県琴平町のこんぴら夏祭りにあわせて開催される。今回同様に多くの出し物がニコニコ生放送で中継される予定だ。若いニコ動ファンの“青春”と地元を愛する気持ちが詰まったイベントの様子をのぞいてみてはいかがだろうか。
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