今年もいくよー! 「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい! 2015虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第37回(1/3 ページ)

昨年に続き、2014年を振り返る特別企画として、虚構新聞社主・UKによるお気に入りマンガベスト10を発表します!

» 2015年01月13日 19時00分 公開
[虚構新聞・社主UKねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 ねとらぼ読者のみなさん、あけましておめでとうございます。虚構新聞の社主UKです。

 年を新たにして、マンガ人生としての昨年を振り返ってみると、本連載を通じて素敵な作品を紹介できたばかりか、夏にはデビュー以来18年間ずっと大ファンだったマンガ家・金田一蓮十郎先生に直接お話をうかがう機会をいただくなど(関連記事)、マンガ好きとしてこの上なく充実した1年間でした。秋に差し掛かる頃には幸不幸の収支合わせであばらの2、3本くらい折れる覚悟をしていましたが、昨年末のINFOJARであばらの代わりに心が2、3本くらい折れる音を聞いたような気がします(関連記事)。



 さて、そんな2014年のマンガ生活の総決算ということで、今回は社主が昨年読んだ2014年発売のマンガの中から選りすぐりのおすすめ10作品をご紹介します。

 ただ、普通に選ぶだけでは「このマンガ、別のランキング雑誌にも載ってたな……」ということにもなるので、昨年に引き続き、今年も年間ランキングとしては最も有名な宝島社「このマンガがすごい! 2015」の男女編上位各50作品(計100作品)には含まれていない作品からチョイスしました。

 「このマンガ〜」で選ばれた作品は各界のマンガ好きの総意を集めただけあって、上位の作品は申し分なくすばらしいです。これはもう本当にぜひ広く読まれていただきたい。そういう意味で今回のランキングは「このマンガ〜」に対抗しているわけではなく、2014年にはそれ以外にもすばらしい作品がたくさん発売されたということを少しでも広く知ってほしいという気持ちで書いています。

 まあ要するに社主が同誌を読みながら「えっ、何でこのマンガが入ってないの!?」、「誰一人として挙げてないみたいだけど、このマンガだっておもしろかっただろ!」というものばかりを集めて煮出した情念のみからなるランキングということです。

 それではさっそく今年の第1位を発表していきます。



第1位「ハクメイとミコチ」(樫木祐人)/「メイドインアビス」(つくしあきひと)

 2014年の第1位は、昨年1位に選んだ丸山薫先生の「事件記者トトコ!」(〜2巻、以下続刊)と同じ掲載誌「ハルタ」(KADOKAWA)にて連載中、樫木祐人(かしき・たくと)先生の「ハクメイとミコチ」(〜2巻、以下続刊)、そして竹書房のWebサイト「WEBコミックガンマ」にて連載中、つくしあきひと先生の「メイドインアビス」(〜2巻、以下続刊)の2作です。

 どっちを1位にしようかなあと、何度も何度も読み返しながら1か月近く延々と悩んだのですが、「無理して絞らなくとも両方とも1位にすればいいじゃないか!」という発想の転換で両作を1位にしました。


画像 (C)樫木祐人/KADOKAWA

 というわけで、まずは「ハクメイとミコチ」からご紹介。 これは森の中の切り株に住む身長9センチのこびと・ハクメイとミコチの2人を主役に、彼女たちの生きる世界を描いたとても愛らしいファンタジー作品。社主のマンガ原体験の1つが小学校低学年の頃に読んだ、ますむらひろし先生の「アタゴオル」シリーズだったこともあり、一目見てその緻密に描き込まれた世界、そして丸っこくて愛らしいキャラたちに惚れ込んでしまいました。

 こびとが主役と言えば映画「借りぐらしのアリエッティ」が真っ先に思い浮かびますが、「ハクメイ」の世界に人間は登場しません(なので本来は「こびと」という呼び方も正確ではないのです)。彼女たちこびとは同じように言葉を話す昆虫やタヌキといった他の小さな生き物たちとともに社会を作っていて、その生活圏も森の中だけで人知れずひっそり、ではなく、多くの人であふれる港町も出てきます。


画像 (C)樫木祐人/KADOKAWA

 中でも社主が素敵だと思うのは、こびともバッタもタヌキもイタチもみんな自然に分業した世界ができあがっているところ。そして特にそれが分かりやすいのは、大工のハクメイに関するエピソード。ハクメイが働く大工の世界では体の大きい動物が力仕事をこなし、小柄なこびとは他の生き物が入れないような小さい場所での作業や細かな仕事、監督などを担当しています。ある時、現場で自分のしたい仕事ができなかったハクメイに、その日の夜、ミコチが「ま、やれる事やるしかないんじゃない?」と語りかけ、それに対してハクメイが「ほーだな」と答える、こんな何気ないやり取りにもそういう部分がよく表れているように思います。

 近ごろ「分をわきまえる」という言葉はあまり良い意味で使われなくなりましたが、「できないことにあれこれ無理して手を出すのではなく、自分に備わった良いところをこそ伸ばす」というのはひとつの見識ではないでしょうか。他の作品を寄せ付けない、完成された本作独自の世界そのものが「自ら備えた良さを伸ばす」というこの見識を裏付けているように見えるのです。


画像 (C)つくしあきひと/竹書房

 さて、昨年読んだまんがの中でこの「ハクメイ」と優劣つけがたく印象的だったのが、こちらの「メイドインアビス」。

 両作の表紙を見たねとらぼ編集I氏から「何だか似たような雰囲気ですね」と言われたのですが、実際読んでみると全然毛色の違うものだということが分かります。

 あらゆる場所が探索しつくされた世界に唯一残った謎の大穴「アビス」。発見以来多くの探窟家がその最深部を目指してきたものの、特殊な力場が観測を拒む直径1000メートルのこの大穴の深さはいまだ謎のまま。そしてこのアビスに沿うようにしてできた街・オースでアビスから見つかる古代文明の遺物を売って収入にしている孤児院の少女・リコが、謎の少年ロボット・レグに出会うところから物語が始まります。


画像 (C)つくしあきひと/竹書房

 本作の見どころは、一見すると度し難くかわいらしいキャラたちとコミカルな動きに引っ張られがちながら、実はそこに重く存在している生と死のリアリティ。

 「下層に進めば進むほどモンスターが凶暴化する」「狩ったモンスターをその場で料理して食べる」などこのままゲーム化できるのでは……、と思えるくらいゲーム的な場面も見られるのですが、その一方で本作の世界には体力が回復するアイテムやワープゾーンといった便利なものはありません。

 またストーリーが進むほどどんどんシリアス展開になっていき、3巻以降に収録されるエピソードの中には一部直視に堪えない厳しいシーンも……。地下深く潜っていくにしたがって、リコとレグだけでなく読者もまた忍び寄る死のにおいを肌で感じ出すのもまた「アビスの呪い」なのでしょうか……。





画像 ちなみに「ハクメイとミコチ」は1月15日に単行本第3巻が発売予定です! (C)樫木祐人/KADOKAWA


       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」