鳥取のご当地珈琲店「すなば珈琲」は、例の大型ライバル店の鳥取初進出に何を思う? 思いのたけを聞いてみた
スタ○が出店しても、すなばのことは嫌いにならないで下さい!
平井伸治鳥取知事の「スタ○はないけど、日本一のスナバはある」発言で誕生した「すなば珈琲」(関連記事)。2014年に一号店を出店、現時点では県内に3店舗を構え早くも県民に愛されるブランド店へと成長しました。しかし、知事の発言が5月23日に覆されることに。あのスタ○が鳥取県に進出したのです! されど、すなば珈琲ではそんな“黒船”への対策はバッチリ。その対策として配られた自虐的なチラシが話題を集めています。万全を期してやって来た“黒船”に対し、すなば珈琲はどのような姿勢を示しているか。すなば珈琲店専務・大野氏に伺いました。(※すなば珈琲側の要望により、スタ○と伏字にしています)
インタビューを申し出る前、チラシの見出しをみて「スタ○進出にお店存続の危機をもっているに違いない」と読んだ筆者。いくら繁盛しているとはいえ、スタ○と聞いたらその知名度と店舗数に同業者は嫌がるのではないかと思ったからです。
しかし、インタビューを申し込むと、思惑とは裏腹に二つ返事で「はい、いいですよ」と快く応じてくれた大野氏。予想外の感覚に戸惑いながらもインタビューを進めていくと、すなば珈琲の珈琲にかける情熱、自信を感じることができました。
―― 単刀直入にお聞きしますが、スタ○が鳥取に進出することに危機感をお持ちでしょうか?
すなば珈琲・大野氏(以下、大野) 「いえいえ、まったくそんなことは思っていませんよ。我々のすなば珈琲とスタ○さんとはお客さんの層が違っていると思っていますし、そもそもスタ○の“コーヒー”とすなばの“珈琲”は違いますから」
淡々と答える大野氏。危機感は感じていないと言っているものの、スタ○のコーヒーとの違いになると、説明が力強くなります。
大野 「我々の珈琲は昔ながらのサイフォン式で丁寧に淹れています。なんと言いますか、スタ○さんはコーヒーの味も美味しいと思いますが『お洒落』『バラエティに豊んだ品数』『若者向け』のようなイメージの部分で人気があると思うんです。すなば珈琲は世代に関係なく、豆の特徴を存分に味わえるサイフォン式の珈琲を味わっていただくということに重きを置いているんですよ」
―― なるほど。豆にこだわりが。
大野 「ええ。なんたって、鳥取県の珈琲消費量は全国第2位。1位の京都に追い抜くためにスタ○の進出はむしろ追い風になると思っています」
―― そうだったのですね! それは初耳です。ただ、いただいたプレスリリースを見ると、スタ○とすなば珈琲4号店の出店日が同じになっています。こちらは何か意図があるのでしょうか?
大野 「これは本当に偶然なんですよ。スタ○さんはもともと、今年の7月に出店すると聞いていました。まさか4号店開店と同日になってしまうなんて、正直驚いているんですよ。予想外のイベントのお陰で、オープン初日には100人以上のお客さんに来ていただきました」
―― えっ、偶然だったんですか!
大野 「4号店は、近隣の鳥取大学に通う東南アジア留学生のために県・大学・すなば珈琲が協議し、実現した珈琲店なんです。留学生の多くはイスラム教であるため、イスラム教徒が食べることを許された料理『ハラール料理』を食べなくてはなりません。ですので、戒律を犯すことなく食事を楽しめる空間を県と大学で連携をとり、作ろうと思ったのです。もちろん、一般の方にも楽しんでいただけますよ」
意外な答えに少し拍子抜けしてしまった筆者。チラシの勢いから「スタ○に対抗する何かがあるに違いない」と思っていたのに、これが偶然だなんて……。では、対抗していないにせよ、どのくらいスタ○のことを意識しているのでしょうか。これについてもさらに聞いてみることに。
―― スタ○のオープン当日には1000人以上が集まったとニュースになっていますが、そのことについてどのように感じていらっしゃいますか?(関連記事)
大野 「びっくりしました! 鳥取県民は並んで商品を買うなんてことは大嫌いですから。今までこうしたことは皆無でした。さすが大手コーヒーチェーンだと思いましたね」
―― 同日から実施している、すなば珈琲のキャンペーンはどのような反響でしたか?
大野 「予想以上の反響でした。マスコミで報道されたこともあって、週末の売上は普段の3倍もあったんですよ! 今週の27日までキャンペーンをやっていたのですが、平日のお客さんの入りも倍以上ですよ」
意識しているというより、スタ○とキャンペーンの予想以上の反響に、ただ素直に驚いているようすの大野氏。企画したすなば珈琲自身も、こんな結果になるとは思ってもいなかったようです。実はすなば珈琲、スタ○に対抗する気はまったくなく、純粋にいつもお店を利用してくれるお客に、遊び心あるキャンペーンを行っただけだったのです。
最後に大野氏はこう締めくくりました。
大野 「この度のキャンペーンは、多くの方にすなば珈琲を知っていただき大変うれしく思っています。しかし、裏を返せばそれだけ多くの人達が我々のお店を“見ている”ということです。お店の名前だけがひとり歩きせず、これからも美味しい珈琲を提供できるよう頑張っていきたいと思います」
スタ○の鳥取県進出とすなば珈琲の遊び心ある企画。この2つのイベントが、相乗効果ともいえる働きで、メディアが大きく取り上げる結果となりました。そんな一躍有名になったすなば珈琲ですが、鳥取の珈琲事情が変化する中でも「県民から愛され続ける珈琲店」の理念を崩しません。これからも大手コーヒーチェーンとは異なる魅力で、県民から愛され続けるでしょう。
ちなみに。スタ○側からも、鳥取進出の経緯や初出店の反響などについてのコメントをもらおうとアタックを試みたのですが、こちらに関しては「コメントを控えさせていただきます」とのことでした。スタ○側は、すなば珈琲を意識しているのか、果たして。
(隈崎大樹/LOCOMO&COMO)
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