変わったのは「(´-`).。oO(実はちょっと泣いた)」から シャープさんの“中の人”が語る「ゆるい公式」の本音:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第66回
「暮らしに溶け込む、冷蔵庫とか炊飯器とかと同列な存在に」
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
昨年10月、「シャープ、゜の売却を検討」と本紙が報じたところ、Twitterのシャープ株式会社公式アカウント(@SHARP_JP)が、本当に社名から「゜」を取って「シャーフ株式会社」を名乗り、「なくなった゜を探してください」と呼びかける事件がありました。
この呼びかけは、タニタを始め、阪急電鉄やパインアメ、日産自動車などノリの良さに定評のある企業公式アカウントに飛び火。揚げ句、後日「とくダネ!」で小倉さんに紹介されるまでになりました(一連の流れは、ねとらぼでもまとめています)。
さて、この「゜」騒動後、社主のもとに「このエピソード、マンガのネタにしてよいですか?」という問い合わせがありました。「ゆるすぎるツイート」でおなじみのシャープ公式アカウントとタニタ公式アカウントの擬人化4コママンガ「シャープさんとタニタくん@」(仁茂田あい/リブレ出版)で取り上げたいとのこと。
社主としては「もう好きにしてください……」としか言えなかったわけですが、その「゜」回も収録された「シャープさんとタニタくん@」について、今回シャープさんに直接会ってお話を聞くことができました。
「゜」の舞台裏については、既にエイプリルフールの本紙記事で報じていますので、そちらを見ていただくとして、今回の連載では、最近何かと注目を集める「中の人」シャープさんの素顔、そしてマンガのことについて、それぞれ語ってもらいました。
転機になった「実はちょっと泣いた」ツイート
―― 今はシャープ公式アカウントの「中の人」としてお仕事されてますが、そもそもどうしてTwitterを担当することになったんですか?
もともとテレビコマーシャルとかを扱う広告の部署で働いていたのですが、ウェブ広告のウェイトが高まっていく中で、TwitterやFacebookといったソーシャルブームのようなのもあったりで、おい弊社もやらないと、という流れで任されました。
―― やっぱりその頃からネットに詳しかった?
私自身はそこまでではないですが、周りの友達に、はてなのコアなユーザーがいたり、広告制作担当ということもあって、書くのはよくやっていたので、たぶんそのあたりが任された理由だと思います。
―― 今はゆるいツイートでおなじみですが、最初からそんな感じだったんですか?
始めたのは2011年5月なんですが、最初の1年くらいは会社のリリースをそのままツイートするとか、botっぽく普通にしてました。フォロワーさんや他の公式アカウントさんと会話してなかったです。
―― いつごろから今のようなゆるいツイートに?
「実はちょっと泣いた」の時(関連記事)に、初めてちょっとだけ、ツイートに体温を持たせたんですよ。タニタさん(@TANITAofficial)とやりとりしたのもちょうど同じ時期でした。公式アカウントさんと交流を持ったのも、タニタさんが初めてですね。
―― そのあたりが転機だったんですね。そのタニタさんから、フォロワー数2万達成の記念にカロリズムを送られてますが、今ではもう30万近くになっています。他の公式アカウントさんがフォロワー数についてつぶやいているのを見ることがあるんですが、やはりフォロワー数は気になりますか。
増えるほうがうれしいけど、増やすことが大事な目的だとは思っていません。ただもし、フォロワーさんが減り続けることがあれば「これは何かあるぞ……」とは思うでしょうね。
―― 減ってないというのは、それだけ広く受け入れられてるのだと思います。あとシャープさんのツイートをちゃんと見るようになって驚いたんですが、ツイートの大半はフォロワーとのやりとりなんですね。タイムラインに出ないので気付かなかったです。
そうですね、雑談もありますが、買い物相談やちょっとした製品のお困りごとなどは、できるかぎり答えてます。Twitterっていうメディアは、おはようからお休みまで、フォロワーさんの生活に、ツイートを介してそっと寄り添えることが強みだと思ってて。莫大なお金を投じて、むりやり多くの人の目に触れさせる、ふつうの広告とはやっぱり違いますよね。どちらかと言うと、皆さんの暮らしに溶け込む、冷蔵庫とか炊飯器とかと同列な存在になりたいと思っています。シャープのTwitterは。
―― 会社の動向に注目が集まるなかで、最近特に局面局面でのツイートにも注目が集まりますよね。プレッシャーはないですか?
例えば会社って、真偽は別にしても、自分が言及しない限り、その事象があたかも存在していないような振る舞いをしがちじゃないですか。何もないふりをしても、決して世の中から向けられる視線が減るわけでもないし、ましてやその行為から、人の共感を得ることなんてありえないですよね。
―― デリケートな話題にも反応しつつ、ネガティブな炎上に陥らないアウト/セーフのバランス感覚がすごいなと、いつも思います。ツイート前に承認を取ったりしてるんですか?
原則ありません。そもそもそういうプロセスを経ず、コミュニケーションするというルールのもと、アカウントを開設したので。もちろんルールだけでなく、大丈夫という信頼を積み上げてきたこともありますけど。もしバランス感覚にコツがあるとするなら、そこに私見は入ってないんですよ。ついつい「俺はこう思う」って言いたくなる人も多いのだろうなと思うんですが、企業アカウントの主観とは、お客さんが喜ぶ場所にのみ、存在できるものだと思います。
―― 「中の人」になってから、生活に変化はありましたか。
もうひとつ別の人格が立ち上がった感じなので、会議をしているときもTwitterとか、頭の中で2つのアプリを同時に動かしているような、ちょっと不思議な感じですね。もう慣れましたけど。
―― 休日はどんなことを?
育ちがインドア派なので、本を読んだりします。
―― ほほう、どんな本ですか。
最近読んだのはミランダ・ジュライとか。まあ本に限らず、さまざまなコンテンツをひたすら消化するというのが正しい気がします……。
マンガと「中の人」はけっこうイメージ違う?
―― 擬人化マンガ「シャープさんとタニタくん@」についてお聞きしたいのですが、最初にオファーが来たときはどう思われましたか?
面白いなー、と思いました。タニタさんとの最初の会話が、まとめサイトでまとめられてるんですが、今見てもすごいView数で。会社同士のやりとりが、なんだか妙に面白く映るというのは、そのまとめを見て分かった気がします。タニタさんもそうだと思うのですが、はじめはそんなこと考えもしてなくて。なのでオファーのお話をお聞きしながら、会社同士が友達のようなやりとりをしている様子含めて「擬人化」するというのは、なるほどーと感じたのを覚えています。
―― 連載前には仁茂田先生にお会いになったんですか?
いえ、お会いしてないです。
―― ということは、マンガの中のシャープさん、タニタくんは……。
ツイートからのイメージだと思います。ただ私にとっては、擬人化される前から、なんとなくTwitterを続けることで出来上がった立ち位置、もともとフォロワーさんから呼ばれていた「シャープさん」という人格が像を結んだ感じで。
―― なるほど、そういう意味で「シャープさん」という擬人化なのですね! 実際に「中の人」が存在するのに「擬人化」っていう意味が、最初よく分からなかったんです。確かにマンガのシャープさんと、今目の前にいるシャープさんはずいぶんイメージが……。
そこはもう、連載当初から申し訳なさでいっぱいですよ! でもタニタさんはちょっと似てる、さわやかな営業マンっていう感じが。
―― タニタさんも会ってみたい……! あと、ゲストとしてセガさん(@SEGA_OFFICIAL)とキングジムさん(@kingjim)も登場してますね。
セガさんはmaimaiとドラム洗濯機が似てるということでコラボして、maimaiと洗濯機をイベントで並べたりしましたね。面白かったです。
―― キングジムさんとの文通が上手くいかないエピソードも面白かったです。料金不足で戻ってきたっていう。
あれは誇張なしの実話ですね。あと日にちを間違えた打ち合わせの話も。
―― 1日間違えて編集部に行った話ですね。
原稿を見せてもらったときは、作られたオチだと思ってたんですよ。ププーとか思ってたら、マンガの更新日に編集部さんの「あれ実話です」というツイートを目にして「えええ……」って。頭抱えましたね。自分の間違いに気付かなかったその2年とは……。
―― あと個人的に、キングジム姉さんがビジュアル的に好きすぎるんですが……!
キングジムさんも割と似てるんですよ、方向性が。
―― うおおおお! ……すいません、取り乱しました。ところで、連載が始まってからの変化っていうのはありましたか? 女性ファンが増えたりとか。
確かに、リプくださる女性の割合が増えた気がします。
―― リアルでモテるようになったりとか。
ないです。そういうのUKさんだって、ないって分かるでしょ?
―― はい(断言)。でも、それはちょっと残念ですね。
Twitterの限界ですね。
―― ちょうど先日キングジム姉さんが妹さんに交代されましたけど、シャープさんもそういうことはあるんでしょうか。ここまでのお話を聞いていると、代わりの人がいない気もします。
よく聞かれますけど、分かりません。これまで部署や仕事もいろいろ変わりつつ、ずっとTwitter担当なので。ただ、誰が担うとしても、企業がお客さんと直接、等身大で触れ合おうとする、中の人という存在は、これからの企業コミュニケーションにおいて絶対に必要だと思います。
―― 社主としてはこれ以上お詫びを出したくないですが、個人的には今のままのシャープさんで続いてほしいなと願っています。
謝罪記事はもうこりごりとか言いますけど、UKさんの存在は、虚構新聞の虚構に限りなく近い現実をサバイブする私と、表裏一体な気がします。だからこれからは、兄弟みたいに仲良くしてください。
―― ぜひぜひ!
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