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» 2016年06月22日 12時00分 UPDATE

インスタグラマープロモーションは無意味? デジタルプロモーションのプロに聞いてみた

よく分からないことはプロに聞いてみようシリーズ。

[西尾泰三,ねとらぼ]

 YouTubeに動画を投稿し、広告収入を得る、いわゆる「YouTuber」が注目されるようになった昨今。直接的な広告収入ではなくとも、ほかのSNSからもそうした存在が登場してくることはあるのでしょうか。

 例えばInstagram。世界のユーザー数は4億人を超え(2015年9月時点)、2015年10月からはInstagram上での運用型広告の提供が始まっており、プロモーションを手掛ける会社も増えてきています。

 そんな中、ファッション業界でデジタルプロモーションを手掛けてきたドレスイングが、ヤフーの子会社であるGYAOと業務提携を発表したのが2016年3月のこと(関連記事)。InstagramなどのSNSのほか、テレビや雑誌なども含めたメディア横断型広告商品の展開を視野に入れたものとなっているのが特徴的です。

インスタ女子部 地上波テレビ番組「インスタ女子部」

 この提携発表前の2015年12月、ドレスイングは、同社が企画・制作・運用を担うGUのInstagramプロモーションサイト「GU TimeLine」やファッション誌「NYLON」などと連動したテレビ番組「インスタ女子部」を放送。3月には人気ハイブランド「GUCCI」を取り上げる続編を放送しています。

 ドレスイング代表のナカヤマン。さんに、この提携の意図も聞きつつ、“Instagramer”を用いたプロモーションの可能性について聞いてみました。

最初のステップでこけているのが日本のデジタルプロモーション

 「興味喚起から購買までのステップを推し進めるのがプロモーションだとして、日本のデジタルプロモーションは最初のステップでこけている。特に女性向けの施策は顕著。作り手が満足するための”最先端技術のプレゼンテーション”か、企画不在の”アサイン施策”が大半を占め、女性ユーザーはそれを冷ややかにスルーしている」とデジタルプロモーションの現状をあけすけに語るナカヤマン。さん。

 とりわけ画像や動画が中心のSNS上には、“刺さる”プロモーションコンテンツがほどんど存在しない、とも。”文字”から”画像や動画”へのSNSの変化は、右脳コンテンツから左脳コンテンツへの変化。男性マーケットから女性マーケットへ比重が変化し、そのロジックはコンテンツ形成にも大きく影響する。こうした理を考慮せず企画される現状も一因だと話します。

 ナカヤマン。さん。率いるドレスイングは、今でこそハイブランドを中心にクライアント形成しているものの、設立当初は東京ガールズコレクションに出てくるようなブランドのデジタル戦略を数多く手掛けてきたといいます。その中で「かわいい」「かわいくない」の直感的な二元論で形容する今のリアルな感覚を感じ、“デジタル上で女性に届けるにはどうすればいいか”を蓄積してきたそう。

 VJをキャリアの起点とする自身もクリエーター志向が強いと話し、ファッション業界で通用するビジュアルプロデュースを強みとしてきたことが生きる、よいタイミングでのGYAOとの提携だったと振り返ります。

ドレスイング代表取締役CEOのナカヤマン。さん ドレスイング代表のナカヤマン。さん

 世の中の情報量の増加に反比例して、1投稿が提供する情報量が小さくなっている現在、SNS単体でのプロモーション展開は無謀で、効果を最大化する掛け算が必要、というのがナカヤマン。さんの考え。SNS、Webメディア、雑誌、そしてテレビまで含め一気通貫で企画することでコンテンツに横串が通り、効果の出るパッケージができるとしています。この“横串”という言葉には、次のように説明を加えました。

 ロイヤルティーの高い情報伝達者であればあるほど「その時点では興味がない情報でもファンに届ける」ことができる。そういう意味では人気者のSNSアカウントは興味喚起には適しているが、2つデメリットがある。

 1つはSNS1投稿で提供される情報量が写真1枚のレベルまで小さくなっていること。もう1つは、その小さな情報単位で喚起できる興味など、数分で上書きされて忘れてしまうほど1日の情報量が多くなっていること。

 つまり、興味喚起から目的達成までを一連の体験として提供するコンパクトなプロモーションが必要。Instagramの1投稿で商品説明が完了するのがまれなことを考えると、メディア、コンテンツを組み合わせて一連の体験を創造する必要が出てくる。

 メディアとコンテンツを複数組み合わせる場合、それを横断してもらう「衝動」が重要。例えばInstagramで認知されているタレントが雑誌に出ると告知しても「ふーん」というリアクションだが、テレビに出るというと「見たい」となる。そこには「動く」「話す」「長尺」というInstagramにはない行為差分の期待値がある。「テレビ出演」の期待値から生まれるこの強い衝動を当社では企画に組み込んでいることも成功要因として大きい。

 InstagramはSNSの代名詞的に使っているが、それが例えばSnapchatに変わったとしても自社の企画のスキームが変わるわけではないとナカヤマン。さん。

 「画像SNS以降の世界は2つの要素が重要。1つは尺。もう1つは編集。最高に尺の短い動画が写真として、尺が長く編集の程度が低いのはリアルタイム配信、尺が長く編集の程度が高いのはテレビ番組」とし、テレビ番組の構造は「まとめサイト」に近いと話します。

 初期のティーザーコンテンツとして「まとめサイト」は非常に有用で、番組としてマス散布できるテレビとの相性は抜群。これにデジタルメディアを組み合わせて「広さ」と「深さ」が担保できる最も効果の出る掛け算が作れるとしています。


 テレビが持つリーチも相乗的に活用していく中、最初の放送(2015年12月)ではテレビチームとWebチームを分けて編成したことで、コンテンツに横串が通りきらなかったといいます。しかし、2回目の放送(2016年3月)では、テレビの制作会社を使わず、1チームで編成。その上にナカヤマン。さんが総合ディレクターとして立つことで情報統制を行ったのだそう。手間は掛かり、初動では混乱も起こるが、工数の圧迫によるコストメリットとノウハウの蓄積スピードが上がり、効率のよいスキームになった手応えを感じているようです。


インスタグラマーにキャリアステップを

 そうした取り組みの中で、気になるのは、個人がインスタグラマー(Instagrammer)としてスターとなっていくような流れが起こり得るのか、という点。デジタルプロモーションのプロフェッショナルの視点から、最後にその可能性を聞いてみました。

ナカヤマン。 それが自然で、あるべき流れだとは思う。ただし大人がその中で役割を果たせるほど勉強していないことが問題。「かわいい」が分からない。SNSが理解できない。Instagramの何がおもしろいのか分からない。でもそのマーケットでビジネスはしたい。それが現状。

 結果、プロモーションが企画不在の「アサイン案件」になっている。どの案件でも同じ「インスタグラマーの名前とフォロワー数のスプレッドシート」と、フォロワー数に比例させたぼったくりの見積もりが提出される。アサイン以降はインスタグマラマー任せで、全体的なクリエイティブコントロールを行う人間もいない。アサイン、丸投げ、投稿、確認、支払い、これが工程の全てであることは珍しくない。

―― 無理な案件数をこなして企業価値をパンパンに上げてエグジットする絵が浮かびました。

ナカヤマン。 浮かびますよね(笑)。プロモーションとして当然マズいのだけど、インスタグラマーから見てもそこにキャリアアップのチャンスがない。芸能事務所のコンサルティングも行ってきた視点で言うと、資質に加えて、仕事ごとに適切なスキルを習得できる方がスターに成り得る。要求が低い今のインスタグラムプロモーションを幾つこなしても次のキャリアステップは生まれてこないだろう。

 そういう意味で今回の提携の中心にあるテレビ番組連動のスキームは、インスタグラマーにヒヤリングした結果でもある。いま彼女たちが一番挑戦したいのはテレビ。効果的なプロモーションスキーム上で、モチベーション高く取り組むことで良いコンテンツが生まれ、効果も生まれる。その上、当人には新しいスキルを習得するチャンスもある。クオリティに関する責任は我々が取る。当社はインスタグラマーエージェンシー事業をやる意思は全くないが、一緒に新しいチャレンジをしていく上でインスタグラマーは大事なパートナー。チャンスの提供も我々のやるべきことだと考えている。


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