何これ → たーのしー! → 助けて → ありがとう → 返してよ! ニコニコ「けもフレ」1話公開日から激動を振り返る
静寂、賑わい、悲哀、歓喜、旺盛、怒り。あらゆる感情が駆け巡った8カ月間。
ニコニコ動画で、テレビアニメ「けものフレンズ」(けもフレ)の1話が公開されてから約8カ月が経過しました。現在、たつき監督とKADOKAWA関連の騒動で怒りに満ちたコメントであふれていますが(関連記事)、今日に至るまで、さまざまなドラマがありました。
そんな「けもフレ」を取り巻く出来事は、全てニコニコ動画のコメントに詰まっているといっても過言ではありません。今回は、動画公開初日のコメントからさかのぼり、あまりにも濃密過ぎたこの8カ月感を振り返ってみようと思います。本当の愛は、ここにある……?
前知識編:「けものフレンズプロジェクト」というペンペン草も生えない荒野
コメントを振り返る前に、1話放送当時の状況を簡単におさらいしておきましょう。テレビアニメ版「けものフレンズ」はメディアミックスプロジェクトである「けものフレンズプロジェクト」の1つとして作られたものでした。
しかしこのメディアミックスプロジェクト、アニメ版の放送開始目前にしてスマートフォンアプリ版がサービスを終了するという瀕死の重症を負ってしまいます(関連記事)。さらに、放送開始直後には月刊少年エースで連載されていたマンガ版も連載が終了。
メディアミックスなのにミックスするものがないという、まさに敗戦処理としか表現のしようがない状態でのテレビアニメ版放送開始でした。もはや草一本生えない荒野と化したプロジェクトに、捨て駒……じゃなくて、最後の希望としてサーバルちゃんが降り立ちます。
公開初日:「CGか……」「うわぁ」「やべえぞこれ30分枠かよ」
第1話が公開されたのは、1月13日の12時。テレビ東京での放送から2日遅れでの配信開始となりました。
公開直後のコメントはなかなかに辛辣(しんらつ)なものが多く、「CGか……」と開幕から警戒している人が多数。狩りごっこのシーンでは「狂気を感じる」「我慢大会」「ひどい」「なんやこのアニメ」「30分とか拷問か?」と散々です。CGについても、「表情が動かなすぎ」「目が寄り過ぎ」とこの時点での評判は良くありません。
ただし、否定的なコメントばかりでなく、「面白い」「好きだから2話以降も見る」といった好意的なコメントもいくつか見受けられました。すごい先見の明です。「1話初見時このアニメを良いと思ったやつは逆におかしい」という意見もありますが、やはりこうして実際にコメントで見ると「すげぇ」と感じます。
また、たつき監督が映像制作を担当していた前作品「てさぐれ!部活もの」をもじった「てさぐれ!けもの」なんてコメントも見受けられました。この時点でシマウマを「ナメクジ」と呼んでいる人がいるのも印象的です。
最初の公開1週間での再生数は、10万強。
2〜4話公開時:おや、面白いぞ……?
2〜3話が公開されると、徐々にコメントに変化が。「面白かった」「クオリティー低いのに毎日見てしまう」と評価する声がだんだんと増え始めました。狩りごっこのシーンの「慣性の法則」や、OPの「ウホホホーホホwwwwwwwwwwwwwwwwwwウホホホーホホwwwwwwwwwwwwwwwwww」など、後に定型化するコメントも徐々に見受けられます。
そして4話が公開されると、コメントの様子が一変。開幕0秒から赤字コメント(横に流さずに止めて表示するコメント)が大量に押し寄せ、勢いづいて来ているのが見て取れます。既に「すしざんまい」コメントも。
4話公開から1週間で、57万再生。
5〜10話:進むミーム汚染、100万再生突破、溶ける知能
5話が公開されると、ついに「わーい!」「すごーい!」などのコメントが出始めます。すでに開幕0秒からコメントが弾幕として押し寄せ、1話公開時がうそのような賑わいに。さらに100万再生を突破し、お祝いのコメントも多数寄せられていました。ぺんぺん草も生えなかった荒野を、サーバルちゃんが1人駆け抜けていきます。
そしてここから先はしばらく同じような様子で、再生数を祝い、皆で「わーい!」「たーのしー!」とドッタンバッタン大騒ぎ。最新話が公開されれば1話に集まり、皆で「けもフレ」がこの世に生まれた喜びをIQが溶けた貧弱な語彙(ごい)力で語り合うたーのしー! 時間が続きました。
さらにコメント職人が集まりだし、AAで話を上書きして「見るたびにストーリーが変わる」などなど(関連記事)まさに盛況を極めます。
そう、“あの日”が訪れるまでは。
11話公開:たすけて
3月22日。カバンちゃんの最大のピンチに「けもフレ11話ショック」とまで呼ばれた11話がテレビで放送されると、コメントの様子は一変! 楽しかったコメントは一掃され、「ああああああああああ」「たすけて」「涙が止まらない」「どうしてこんなことに」など森羅万象に助けを求めるフレンズたちの叫びで画面が埋め尽くされる阿鼻(あび)叫喚の地獄絵図! IQが下がりきったところに突如突きつけられた非情な現実にフレンズたちは発狂寸前!!
「たつき監督を信じろ」「しんざきおにいさんを信じろ」「わーい(錯乱)」などなど、もはや目の焦点が合っているのか心配になるコメントが多数です。また、12話放送直前の28日深夜は勢いがすさまじく、コメントが全く表示しきれません。
この時、400万再生目前。
最終話:ありがとう
そして最終話放送後。「たつき監督ありがとう」。それが全てでした。3月29日。1本のアニメの放送が終わった日のことです。
12.1話公開:祭りは終わらない
永遠に続く祭りはない。最終話の放送も終わり、フレンズたちも日常に帰って行く日が来た……と思われていた、4月5日。たつき監督による公式12.1話が(関連記事)公開されると、コメントは再度ドッタンバッタン大騒ぎ! 13話のエア実況で賑わうはずが、まさかの公式難民キャンプにフレンズたちは狂喜乱舞!
「12.1話を見ろ」「たつきありがとう」「圧倒的感謝」「神」などのコメントが押し寄せます。公開直後(2時前後)は0秒コメントが多すぎてもはや何も読めません。とてつもない最大瞬間風速です。
12.1話公開時、500万再生。
ミュージックステーション出演:タモリさんはイグアナのフレンズなんだね!
12.1話公開後、今度こそ静寂の時が訪れる……はずでしたが、今度は4月14日に主題歌「ようこそジャパリパークへ」を歌うどうぶつビスケッツ×PPPのMステへの出演が決定(関連記事)。荒野を走っていたはずのサーバルちゃんが、気が付けばタモさんと一緒に階段を降りていました。
しかしこの時ばかりは、アニメとMステという食合せの悪さから「Mステ不安だ……」「お茶の間が凍る」「せりふ付きか……」など出演を不安視するコメントもチラホラと見られます。結果的には杞憂(きゆう)に終わり、放送終了後の「しんのすけありがとう」「イグアナのフレンズ」など放送時のネタコメントが多数寄せられています。
この時、560万再生弱。
全盛期:溶けた知能は戻らない
この後も新宿マルイアネックスのコラボショップ、舞台化、ゲームアプリ復活発表などなど大きなニュースが立て続けに舞い込んでくるのですが、ほぼ常時「わーい!」や「数百万再生突破!」などのコメントが書き込まれすぎて情報がどんどん流れていく期間が続きます。ダメだこのフレンズたち、知能が完全に溶け切ってやがる!
むしろこの頃コメントで特に注目を浴びていたのは、NHK広報局公式がプラネットアースでサーバルキャットが出ることを「わーい!」と告知していたことでした(関連記事)。
また、後に大量にコメントされるようになるせりふ「止まるんじゃねぇぞ……」が、この頃から少しずつ現れ始めます。これは「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」に出てくる「オルガ」のせりふなのですが、ここに書き込まれるようになったいきさつはいろいろと筆舌に尽くしがたいので、各自ググるなりして調べてみてください。
初の一挙放送:フレンズたちは眠らない
もはや「たーのしー!」するだけの人間動物園と化していた動画に大きな変化が訪れたのが、5月26日〜27日。この日は初のニコニコ生放送での全話一挙放送が、全国32カ所の映画館でライブ・ビューイングと同時に行われた日です(関連記事)。
放送終了が3時半ということもあり、参加者はほぼ全員朝帰りをすることになりました。その分、コメントも「ただいま」「朝帰り」などアットホームな雰囲気に。この時ばかりは、「わーい!」系コメントがかなり少なく、テンションの違いが見て取れます。
この時、570万再生。
再生数アニメカテゴリー1位:〜そして1000万へ〜
8月1日、とうとう再生数でぶっちぎりの1位を保ち続けていた「ご注文はうさぎですか?」(ごちうさ)を抜き、ニコニコ動画のアニメカテゴリー1位になりました(関連記事)。この時、約933万再生。「ごちうさ」はもう絶対に今後抜かれることはないだろうと思われていただけに、1つの歴史が動いた瞬間でもありました。
そして8月24日21時15分頃。とうとう公式配信アニメ初の1000万再生を突破。コメントは「1000万」と「おめでとう」の文字で埋まっています。まさに、栄華を極めた瞬間でした。
たつき監督降板:闇の中へ
このまま「けもフレ」はアニメ界のトップをひた走るカリスマ的存在になっていく。多くのフレンズたちがそう確信するなか、その瞬間は9月25日の20時に突如としてやってきました。たつき監督の、「けもフレ」アニメ制作降板。
それまではいつものように「わーい!」などで埋まっていたコメントが、たつき監督のツイート後からすさまじい勢いでどす黒く染まっていきます。それはまるで、聖杯の泥のごとく……。
「たつきを返せ」「たつきを取り戻せ」。11話の時はのコメントを「不安」と「悲しみ」とすれば、今はただただ「怒り」にあふれたコメントで染まりきっています。また以前のように「わーい!」「たーのしー!」のコメントであふれ、今日の出来事を笑い話にできる日が来るのでしょうか。
敗戦処理から始まり、成功を収め、栄華を極めたアニメが、今また底の見えない闇の中をさまようことになってしまいました。いまだこの問題と「けものフレンズプロジェクト」がどのように着地するのか、先行きは見えません。
ここまでの流れを自分で確かめてみたいという方は、ぜひコメントのログ機能を使って確認してみてください。今日に至るまでの激動の軌跡が、この1本に収められています。
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ええ……。
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