「キャラクターをどうやって三次元に連れてくるか」 BANDAI SPIRITSが挑む、次元を超えた“変態技術”(後編)(5/5 ページ)

» 2018年05月13日 11時00分 公開
[しげるねとらぼ]
前のページへ 1|2|3|4|5       

「塗らなくていいプラモデル」が存在する意義

――しかし、ここまでやってあると「もう塗装しなくていいじゃん」という感じがありますけども、塗装する必要がないプラモに対してどうお考えでしょうか?

西村:僕自身が企画のコンセプトを立てる際の考え方としては、プラモデルというのはとても自由な遊びだと思っているんですね。プラモは好きに手を加えられる自由な商品なので、その中で「色を塗る」という行為は必須かどうかでいえば必須ではないと思います。別に塗らなくて満足ならそれでいいし、もっと楽しみたければ塗ればいいという感覚です。

――確かに、別に塗りたくなければ塗らなきゃいいですよね。

西村:ただ、塗らなくてもいいくらいまででき上がっていれば、技術レベルに関係なくそこまでは楽しめる。そこから先に行きたければ塗っても改造してもいい。最初から塗るのが前提になってなくて、塗料やエアブラシや筆を買わなくてもいいというのは、それだけで遊べる人の幅が増えると思うんです。逆に塗れる人は最初から色がついていようがなんだろうが塗ると思うんで。

 「塗らなくてもいい」って言っちゃうと遊びの幅を狭めているように聞こえるかもしれないですけど、意図としてはそこから先の表現や遊びの幅を広げるための素地として、より遊びやすいものを提供しているつもりです。

――そうか、「塗ってもいい」わけですもんね。

西村:「塗らなきゃいけない」よりは「塗ってもいい」くらいのほうが、気が楽に遊べるでしょって感じですね。キャラやアニメが好きな人が広く遊べるものの方がいいよねと思うところがあるので。

――バンダイの成形技術に関して、今後やってみたいことってなんだと思いますか?

西村:表現の幅は広げたいですね。今回は「透け感を伴った深みのある肌の色を出す」ということに成功して、ひとつ商品が出せました。今度は色を表現するということのバリエーションを増やしたいです。グラデーションをつけるとか、肌色以外の透け色はできるかとか。今回の作りは肌色の表現に特化したものになっているので、ほかのものにそのまま応用できないんですよ。

――例えば同じことを髪の毛でやってみようとしても、そのまま使えるわけではないんですね。

西村:樹脂は溶かして流すものだという、成形の都合を全て踏まえた上で今回この仕上がりになるよう調整をかけているので。だからこの色以外のものを出そうと思うとまた一から調整が必要になるんです。そこの幅を広げていきたいですね。

 今回のこの金型で実現できたのは肌の色の表現一点だけですけど、世にある塗装済みフィギュアではもっといろんな表現がされているんです。それが最初から部品の状態でできてて、ユーザーのスキルやロットのばらつきは関係なく同じ品質が出るというのを実現したいですね。

――モデラーがエアブラシや筆でやっていることを、金型レベルからやっていこうという話なんですね。

西村:モデラーさんたちがそうやって塗装するのはなぜかといえば、ひとつにはキャラクターのイメージがあって、それを三次元に起こしてくるための手法として塗装があるわけじゃないですか。僕らはキャラクターを三次元に連れてくるために成形を使いたい。そこの差なんです。

 色のついてないものを塗装して楽しむのはそれはそれでいいんですけど、それとはまた別の手法を使って、たどり着くべきはみんなが大好きなキャラクターというのが理想です。

――ネットでは今回のフミナ先輩も「変態技術」っていわれてますけど、そのへん実際どうですか?

西村:褒め言葉だと受け取ってる時の方が多いかもしれないですね。想像の限界を超えたものを見た時の、感嘆符のような意味で言ってくれていると信じているので(笑)!

山上:いきなりこんなものを見せられて驚いているという感じかなあと思います。もちろん成形や金型の知識がある人はいろいろ想像するところがあるみたいで、業界の人は「こういう技術を使っているのかな?」といろいろ考えてくれているみたいなんですけど。そうじゃない一般のユーザーさんは一緒くたに「そういう技術なんだ」と思ってくれているのかなと。

西村:「どうやってできているのか分からない、すごい謎の技術だ」というニュアンスと、「なんでこんなことをしようと思ったんだ?」というニュアンスと、多分2パターンの意味がある気がしますね(笑)。

 どちらにしても「思ってもみなかった」という意味で言ってくれている方がほとんどだと思うので、基本的にはいい意味で注目を集めることができたのかなと思ってます。頑張って作ったんで、それは素直にうれしいですね。

(了)


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」