「正直疲れてしまった」 五輪ボランティアを巡る「ネット工作説」はいかにして広がったか “診断メーカー”作者が明かした苦悩(3/3 ページ)
果たして工作はあったのか、それともなかったのか。Oさん個人は今でもこれについて「何も答えが出ていない」「作為的なものだったのではないかという疑念も捨てきれません」と言います。しかし、いまだに自分のツイートが拡散され続けていることや、それをRTしたフォロワーまで批判を浴びているのは、Oさんにとって予想していなかったことでした。
「私として意見を変えた部分はないのですが、私のツイートをRTして批判されているのが自分のフォロワーさんである、という事実に正直疲れてしまっていました。当該アカウントはもうないのに(※)、拡散され続けるツイートにもうんざりしていました。診断メーカーはもはや遊びの道具ではなく、何か別のものに化けてしまっていました」(Oさん)
※最初に話題になった2つのアカウントは、どちらも早い段階で過去のツイートを全削除しており、現在はアカウントだけが残った状態に
結局、騒動から4日目の8月20日、Oさんは最初の「ネット工作始まったな」のツイートを削除するとともに、診断メーカーも「いまさらですがこれは余計な遊びでした」として削除しました。ちょっとした遊び心で作った診断メーカーでしたが、Oさんは「思った以上に拡散される過程でこれが使われた気もします」「軽い気持ちで始めたこととはいえ想像以上に拡散し、思った以上に人を傷つけたり惑わしているのではというのはリプライなどでひしひしと感じていました」と振り返りました。
「工作疑惑」の真偽は……
「ネット工作疑惑」については編集部もさまざまな方向から調査しましたが、Oさんが指摘するように、現状では「あった」とも「なかった」ともいえない――というのが結論でした。例えば騒動の中で、「自分は投稿していないのに、知らないうちに例の文面がツイートされていた」と、いわゆる“乗っ取り”を示唆するような書き込みもありましたが、個別に連絡し問い合わせてみたところ、原因は不明で、また本当に組織的な乗っ取りだとしても被害者が極めて少なく、工作ともイタズラとも判断することはできませんでした。また、発端となった2人のアカウントにも取材を試みましたが、残念ながら応答がない状態です。
五輪ボランティアを巡っては、今回の「工作説」が浮上する少し前から、その応募資格や条件などを巡って「やりがい搾取」「ブラック」といった批判が相次いでおり、こうした背景もあって「批判を払拭するためにネット工作が行われているのではないか」という臆測を生んだのかもしれません。ネット上では今回の騒動について、「(人間は)嫌いなものをディスる方向の陰謀論に簡単に乗ってしまう」「一部の方の『こうあって欲しい』にばっちりハマった感」と振り返る声もみられました。たとえ自分が「そうであってほしい」「そうだったら面白い」といった情報を見かけても、拡散する前には一呼吸おいて、まずは事実かどうかを確認する冷静さが大切です。
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