最高すぎて完全に恋に落ちた 隧道マニア監修の「横須賀トンネル旅」やってみた【追浜編】:横須賀トンネルめぐり1日旅(1)(2/4 ページ)
トンネルの街・横須賀市の中でも「追浜」は特にトンネルが集まっている地域です。16本のトンネルがあります。今日巡るトンネルは、このうちの「梅田隧道」「浦郷隧道」「筒井隧道」です。この3本で明治、大正、昭和の時代を一気に感じることができます。
梅田隧道:明治時代のトンネル
まずは、明治20年(1887年)に完成したという「梅田隧道」です。たどり着いたとたん、筆者の心をつかみました。
かっこいい。
トンネルの入り口「坑門(こうもん)」からしてパワーがあります。筆者はここにたどり着くのに迷いに迷い、1時間以上もさまよい歩きました。グーグルマップにはトンネル名までは出ていませんでしたし、近所の方に聞いてもトンネルの名前までは把握していないようで、情報が少なかったのです。それだけに、出会えたときには胸が熱くなりました。
梅田隧道の南側には交通量の多い幹線道路があるので、自動車が通る音が絶えず聞こえてきます。それがトンネルに入るとスッと静かになり、温度もぐっと下がります。だんだん自動車の騒音が消えていき、やがて無音に。そのまま歩き続けると、今度は「鳥の鳴き声」が前から聞こえてきます。映画「千と千尋の神隠し」のトンネルをほうふつさせました。
トンネルの内壁には防音と化粧のための鉄板が取り付けられています。金属で囲われているためか、高周音が長く響きます。天井から水滴がしたたり落ちていて、アスファルトにできた水たまりが模様のようになっていました。
トンネルを抜けるとそこは緑の多い住宅地でした。
トンネル脇のコケの生えた石垣がまた時代を感じさせます。平沼さんによると、この石垣の積み方は「ブラフ積み」という明治初期に伝わったもの。だからこの石垣も、梅田隧道ができた明治20年よりも前に造られたものではないかと気になっているそうです。
ああ、梅田隧道、かっこいい。
トンネルを楽しむのにウンチクなんて不要です。来れば分かる、このパワー。この雰囲気。トンネルたーのしー!
といいつつも、一応、ウンチクも入れておきます。梅田隧道は民間主導で建設されたトンネルとしては横須賀市内で最古のものです。かつてこの地域の人たちは漁業を中心とした暮らしをしていました。しかし明治19年(1886年)、近くに軍事施設ができ、船が使えなくなってしまいました。近くの工場で働くようになりましたが、通勤するには険しい山道を越えなくてはいけません。そこで地元の有志が私財を投じて梅田隧道が建設されました。
梅田隧道の北側に石碑があり、前述のようなトンネルの成り立ちが刻まれています。
平沼さんは梅田隧道を「昭和44年(1969年)の改修によって平凡なコンクリートトンネルになってしまいました。でも、交通量が多くないため、トンネルの持つ薄暗さや静けさを堪能できます」と評しています。本当にその通り。梅田隧道には強いオーラがありました。
ちなみに追浜駅から徒歩5分「こみゅに亭カフェ」でNPO法人のアクションおっぱま/おっぱまはっけん倶楽部が制作した「追浜トンネル物語」が販売されています。この表紙の写真が、改修前となる昭和30年(1955年)頃の梅田隧道です。坑門がまたイケメンですなね。冊子内には大正4年(1915年)の写真もあります。トンネルの今と昔を見比べるのも感慨深いものがあります。
平沼さんのトンネルの楽しみ方講座!
では、平沼さんに教えてもらった「トンネルの楽しみ方」を解説しましょう。次のページで紹介する浦郷隧道が筆者比で100倍楽しくなります。
古いトンネルが大好きだという平沼さんですが、普段トンネルのどんなところを気にして見ているのでしょう。まず「坑門」だけで、たくさんの情報が得られるそうです。
注目すべきは坑門の「デザイン」とトンネルの「素材」です。これで、トンネルが作られたおおよその年代が分かります。
まず「デザイン」。明治初期に、西欧から近代的なトンネル建設技術とともにもたらされた伝統的な坑門のデザインは、わが国では「冠木門式」として定着しました。アーチ型の坑口を取り囲むように鳥居状に縦横の部材が配置された、どっしりとしたデザインです。このデザインは、トンネルがレンガや石材で作られていた時代は構造上の意味がありました。しかしコンクリートが主流になってからは意味が薄れてしまい、次第に省略されるようになりました。
トンネルの「素材」からもおおよその建設時期が分かります。「石材」や「レンガ」だと明治時代や大正時代、「コンクリートブロック」は大正から昭和初期、「コンクリート」は昭和以降の新しいトンネルに使われています。
おお、なるほど。これの2つを知ってるだけでトンネルの見方が変わり、楽しくなりますね。トンネルを楽しむポイントは「数をいっぱい見て、比較を楽しむこと」だと平沼さんは言います。
では、このことを踏まえて「浦郷隧道」と「筒井隧道」にも行きましょう!
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