ゲームクリエイターが復興のためにできること

「ルミネス」シリーズなどの音楽で知られる、ゲームサウンドクリエイターの中村隆之氏(@nakataka)が「少しでも多くの人に穏やかになってほしい」という願いを込めて、災害復興を祈願したゲームソフトを作成・公開しています。
「なぎ -nagi」と名付けられたこのゲームは、パソコンのマイクから取り込んだ音の波を飲み込んで反復し、やがてゆったりとしたおだやかな波(なぎ)に変えていくというもの。人の声、キーボードを叩く音、テレビの音声――。身の回りに存在するあらゆる雑音が、このソフトを通すことで心地よいサイン波へと変換されていきます。
ソフトは現在、中村隆之氏、飯田和敏氏、犬飼博士氏の3人のゲームクリエイターによるユニット「同化P」のサイトにてダウンロード可能。中村氏によれば、もともとは同じ「同化P」メンバーの犬飼氏のために作ったソフトなのだそうです。
「地震の後、犬飼さんが泣いていたんです。震災直後はすごく強気だったのに、時間が経つにつれてどんどん弱気になっていった。それで犬飼さんみたいな人に、少しでも落ち着きを取り戻してもらえたらと思ったのが開発のきっかけです」(中村氏)

その後飯田氏、犬飼氏の後押しもあって、中村氏は「同化P」のサイトでソフトを無料配布することを決定。ちなみに「なぎ -nagi-」というタイトルは飯田氏の命名、また犬飼氏もデバッグや改良、サイト制作といった形で手伝っているそうです。
中村氏いわく、サイン波というのはあらゆる音のなかでも「もっとも美しい波形」を持つのだそう。確かにサイン波独特のおだやかな音色を聞いていると、それまでギスギスしていた心が少しずつ安らいでいくような気がします。「どんな複雑な波形も、最終的にはサイン波に帰結してしまう。そんなソフトを作りたいと思った。理論的な裏付けはありませんが、心を安らげる効果はあると思います」と中村氏。
未曾有の震災に瀕した今、ゲーム業界が被災者のためにできることは決して多くありません。しかしゲームには本来、身近な人や、社会を幸せにする力がある。今はこのソフトが少しでも多くの人の心を癒してくれることを祈りたいと思います。
最後に、ソフト公開にかかわった「同化P」の犬飼氏、飯田氏からもメッセージをいただきましたので、併せて掲載させていただきます。
「いとうせいこう原作の『ノーライフキング』って映画があって、そのポスターにファミコンのカセットが写ってる。そこに小学生がマジックでメッセージを書いてるんです。『がんばれ!』って。自分と仲間たちにむけた最強のメッセージ。企業は義援金を供出することで社会との関わりを明示できるけど、ぼくらはクリエイターだからゲームを作ることでしか社会と関われない。『なぎ -nagi- 』どうやって敵を倒すか攻略法を探すゲーム。社会につながったゲームなんです。みんなほんとはとっくに本気出してるんだけど、アピール下手だから、ゲーム=おもちゃでいいです――ってなっちゃってる。でも僕らもいい歳なんだから、そろそろいろんなもの背負ってもいい。そういうことを冗談ではなく本気で言う時機だと思います」(飯田氏)
「ゲームは社会と結びつかなくていいはずがない、結びついているはずなんです。ゲームを仮に、何かの問題に対して勝ち負けを定義して取り組むための手段とするなら、倒すべき敵は涙です。ゲームは世界を変えますよ。でも今はまだみんな疲れてる。まずはACのCMを食わせるとかしてゆったりしてください」(犬飼氏)
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