あなたの情報が資源になる?

「巨人のドシン」や「アクアノートの休日」「ディシプリン*帝国の誕生」など、アバンギャルドな作品を数多く手がけてきたゲームクリエイターの飯田和敏氏が、この夏新たなエンターテイメントを世に送り出します。
プラットフォームはPS3でもXbox 360でもなく、東京・お台場にある「日本科学未来館」。8月21日よりリニューアルオープンする常設展示のひとつ「アナグラのうた 〜消えた博士と残された装置〜」の演出を、飯田氏が手がけているのだそうです。「アナグラのうた」の展示ストーリーは以下のとおり。
展示ストーリー
今から1000年後、ここはかつて空間情報科学の博士たちの研究所だった場所「アナグラ」。足を踏み入れると、自分の情報が「ミー」という影に似た姿で足元に現れます。アナグラでの行動はすべて情報となり、情報がミーを変化させていきます。そして、アナグラに残された5つの「装置」との対話を通して、空間情報科学の重要な技術が明かされていきます。最後の装置との対話を終えると、自分の情報は音楽となって、アナグラに響きわたるのです――。
この展示のテーマとなっている「空間情報科学」とは、特に場所やヒトに関連づけられた情報を扱う科学分野のこと。私たちの身の回りでもすでに、携帯電話や電子マネーの使用履歴など様々な場面で個人情報が取得されていますが、ここからさらに一歩進めて、こうした情報を社会的資源として役立てよう、というのが「空間情報科学」の基本理念です。
「情報が資源になる」と言われてもすぐにはピンとこないかもしれませんが、この「アナグラのうた」では参加者の行動に合わせて「ミー」が変化し、それに伴って音楽が生成されていくことで、参加者自身の情報が「資源」として役立てられていくさまを体験できるのが特徴。開発には飯田氏のほか、eスポーツプロデューサーとして知られる犬飼博士氏も関わっており、参加者の足下にリアルタイムで情報を投影するなど、インタラクティブな見せ方も見どころとなっています。
6月25日に開催され、飯田氏も講師のひとりとして出演したイベント「夜のゲーム大学6」のなかで、飯田氏は「アナグラのうた」について次のように語りました。
「結論から言うと、今はまだ情報が資源になる、というには早すぎる。でもあと10年、20年したら、あなたの名前が貴重な情報になり、そこに価値がある世界がきっとやってくる。これまでは石油が主な資源だったけど、情報化社会の新しい資源を発見しよう、というのがこの展示のテーマ」(飯田氏)

イベントには、共同で開発にあたったeスポーツプロデューサーの犬飼博士氏、日本科学未来館の島田卓也氏らもゲストとして登場。島田氏によれば、もともと空間情報科学をテーマにした展示にすることは固まっており、どうすれば「なぜ情報が資源になるのか」を参加者に分かりやすく体験してもらえるか――と考えた結果、エンターテイメントの専門家である飯田氏に相談することにしたのだそう。また当初はもっとほのぼのとした「ジブリ的」な世界観を考えていたものの、飯田氏に「もっと強い表現でないとエンターテイメントとして生き残れない」と反対され現在のストーリーになったとのこと。
最初に飯田氏に相談したのが昨年4月とのことなので、準備に費やした期間は1年以上ということになります。「一緒に仕事をしたことでゲームが好きになった。ゲームの底力を学びました」と島田氏。果たしてどんな展示に仕上がるのか、今から公開が楽しみですね。
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