韓国のネット検索サービス「NAVER」を運営するNHN。Googleを圧倒する原動力がどのように生まれているのか。地域住民も利用できる図書館やフロアを丸ごと使ったカフェ、結婚相談コーナーまで。社員の要望に応えた設備満載のNHN本社を紹介する。
INDEX
会議室の前で誕生会
5階からはオフィスフロアだ。オフィス内は社員同士の顔が見えるよう、柱のない作りになっている。社員の健康にも気を使っており、ほこりが立たないように床には木を使っていたり、OA機器を壁で囲っている。空調設備は天井ではなく床下。人がいる範囲へ効率的に風を送ることで節電になるという。


オフィススペースの反対側には、エレベーターホールを挟んで会議室がある。この会議室の手前に、机と椅子を置いた「ハイブ(Hive)」と呼ばれるスペースがある。ハイブとはハチの巣やミツバチの群れという意味。会議室の前の人が通る場所に、ちょっと座って話せるスペースを設けることで、人が集まり、コミュニケーションが生まれる空間を作り出している。実際、筆者が通った際には、社員たちが同僚の誕生日会を開いているところだった。会議室の前で誕生日会を開いている会社というのはあまり聞かないのではないだろうか。



なんでもありのサービスデスク
ベンチャーというと残業は当たり前で、徹夜も珍しくないというイメージがある。NHNも、グリーンファクトリーに移転する前は、徹夜で仕事をする社員のために仮眠室を用意していた。しかし、「3000人規模の会社になって、もうそんなことはしない」と空間企画を担当するSPX(スペースエクスペリエンス)プランニングチームリーダーのイ・ウンジェ氏は胸を張る。遅くまで働く社員もいるが、グリーンファクトリーには徹夜のための設備を作らなかった。実際、午後7時を過ぎるとビルの前には帰りのバスを待つ社員たちで人だかりができていた。
NHNの「社員のための職場環境」への本気度がよく分かるのが、16階の「サービスデスク」だ。ここは宅配便の受け付けからPCの修理相談、結婚相談まで、1フロアを丸ごと使った何でもありの“駆け込み寺”。保健室には医師が常駐しており、社内システムから予約して診察を受けられる。



デザインはほかのフロア以上に木を重視したものになっており、保健室に使われている木はビル内で最も質のいいものが使われているという。



このフロアには授乳室も設けられている。NHNは女性の雇用サポートにも力を入れており、事実、社員の40%は女性社員だ。300人規模の託児施設から女性専用の休憩室まであり、仕事を早く終わらせて社内で子どもと一緒に遊ぶ日も定期的に設けられている。確かに4階のカフェスペースにはジャングルジムやうんていが置かれていた。


ジャングルジムやうんていは大人も利用できる
最上階は誰のもの?
自社ビルの最上階というと、社長室や役員のための部屋、豪華な会議室が設けられていることも多いが、NHNは最上階を社員のために開放しており、ミーティングスペースやランチ・軽食が取れるスペースがある。






軽食は体にいいものということで、サンドイッチやパン、サラダなどを用意している。トッポッキや韓国式おでんなど、韓国の定番おやつもある。入口にはトレーを運ぶカートが用意されているが、これは韓国の文化で、チームの下っ端がまとめて運ぶため。韓国の上下関係は日本より厳しいのだ。
オープンなミーティングスペースに加え、デザインの違う15の会議室もあり、「集中力を高めるため」黒い壁紙を導入した部屋や、「発言を増やすため」白い壁紙を採用した部屋を設けている。白い部屋ではよく給料の交渉が行われているとのこと。



社員食堂は地下にあり、何種類かのコースメニューから選ぶ仕組みになっている。12時半になると社員でいっぱいになっていた。



地下の社員食堂では3種類のコースを選べる。筆者はレトルトカレーっぽい見た目のカレーコースを選択。韓国のカレーだからきっと辛いに違いないと思ったが、普通にレトルトカレーっぽい味だった……
就職先人気ランキング1位
グリーンファクトリーには、Googleのような自由にデコレーションできる個室やFacebookのような食べ放題の食堂はない。しかし、社員が働く上で必要なものや、コミュニケーションを取るために必要な設備は十分に揃っている。共通しているのは、会社が社員によかれと思って与えているのではなく、社員の要望を元にした問題解決型の設備が多いということだ。
例えば、各フロアには「チカチカ(CHI KA, CHI KA)」と呼ばれる歯磨き専用スペースがある(チカチカは、韓国で歯磨きの音を表現した言葉。日本の「シャカシャカ」にあたる)。会社での歯磨きはたいていトイレの洗面台を利用するものだが、「誰かが用を足している近くで歯を磨くのはちょっと嫌だ」という意見から作られた。さらに、女性社員からの「歯ぐきから血が出ているのを男性に見られるのは恥ずかしい」という声に応えて、トイレのように男女別となった。



歯磨き専用スペース「チカチカ」。女性用の棚には歯ブラシがたくさん置かれていた

また4階のカフェには、ドリンクカウンターの前にカップを洗うための洗い場がある。1日に2500杯もの注文があるため、紙コップを使うのはエコでないとして、NHNは社員にマグカップを配布している。しかしカップを洗うのが面倒という理由で利用が進まなかったため、洗い場を設けた。
どれもちょっとしたことではあるのだが、そのちょっとした意見を会社が汲み上げることができるのは、コミュニケーションあってのこと。コミュニケーションを生み出す環境を作ることで、社員一人一人の意見が明らかになり、同時に問題解決の方法も見えてくる。その重要性を知っているからこそ、NHNの検索サービスが、Google(韓国でのシェア率は2%ほど)に後ろ姿すら見せない独走態勢を築いているのだろう。
ちなみに、NHNは韓国の大学生就職先人気ランキング(非製造業)で1位という。
おまけ:グリーンファクトリーの面白い移動設備たち
グリーンファクトリーを探検していて面白かったのは、エレベーターの仕組みだ。オフィスフロアに行くエレベーターには「上」「下」のボタンがない。代わりにタッチパネル式ディスプレイがあり、行きたい階をタッチすると乗るべきエレベーターを教えてくれる。エレベーター内には非常ボタンと「開」「閉」のボタンのみがあり、行き先の階を押す必要がない。乗ってから行き先を変更できないのは難点だが、移転前の一般的なシステムより、待ち時間が減ったという。



タッチパネル式のディスプレイに行きたい階数を押すと乗るべきエレベーターを教えてくれる。中のボタンは非常用と「開」「閉」のみ

地下駐車場へ向かうエレベーターには、コオロギやカエルなどのシンボルマークがついた階数ボタンがある。駐車場は地下7階まであるため、どの階に駐車したかをつい忘れてしまいがち。そこで、フロアごとにシンボルマークを割り当て、駐車場内とエレベーターホールでマークと関連する音(カエルの鳴き声など)を流すという工夫をしている。単に場所を覚えるためだけでなく、視覚障がい者への配慮でもある。
地下6階は「鐘」の音が流れる
最後に、運動不足の社員のために用意された階段を紹介したい。入口にはトラックと書かれており、床に引かれたオレンジの線が陸上競技のトラックを連想させる。階段には消費カロリーが書かれており、1階から27階まで775段を上り切ると約80kcalの消費になるそうだ。



※記事で紹介しきれなかったグリーンファクトリーの写真をねとらぼのFacebookページで公開しています。ぜひ、こちらもご覧ください。