ゲームの社会的意義についてあらためて考えさせられます
9月6日から8日にかけ、パシフィコ横浜にて開催中の「CEDEC 2011(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2011)」。そのインタラクティブセッション会場にて、リハビリ患者や視覚障がい者を対象とした、ちょっと変わったゲームを見つけたので紹介します。
1つ目は、九州大学大学院芸術工学研究院講師の松隈浩之氏らが展示している「樹立(きりつ)の森 リハビリウム」というゲーム。WiiバランスボードとPC用ソフトを組み合わせることで、リハビリ訓練の中でも特に単調でつらいとされる「起立運動」を、楽しみながら行うことができるようにと開発されたものです。
最初にWiiバランスボードの上に立ってゲーム開始。「せ〜の!」の声に従って、イスに座ったり、バランスボードの上に立ったりを繰り返すと、気持ちのいい音や映像とともに、画面上の「樹」がぐんぐん伸びて成長していきます。遊べば遊ぶほど、メダルやカードといったアイテムが集まっていくなど、思わず繰り返しプレイしたくなる仕掛けもあり、実際に臨床現場で試してもらったところ、最大起立回数のアップや、疲労強度の低下などの効果が見られたとのこと。
筆者も実際に体験させていただいたところ、ただ単に立ち座りを繰り返すだけ――という作業は思いのほか苦痛で、これを毎日、何十回、何百回と繰り返すのは確かにつらいだろうな……というのが第一印象。しかし「樹立の森」による演出やゲーム要素がそこに加わるだけで、それまで苦痛だった起立運動がぐっと楽しいものに変わるのを体感することができました。松隈氏によればまだまだ改善の余地は多いそうですが、現在はさらなる改良を加えた「リハビリウム2」も開発中とのこと。



実際体験してみると、思いのほか辛い「起立運動」。しかし、ゲームのノウハウが加わるだけでこんなにも印象が変わるのか――というのを分かりやすく体験できます
2つ目は、バンダイナムコゲームスの平石博之氏が展示する「文字パズル『コトバシる』は、どのように生まれたか? 〜視覚障がい者向け・電源不要のゲームからテレビゲームへ〜」という展示。ここでは、DSiウェアやiPhoneアプリとして配信中のパズルゲーム「コトバシる」が生まれる元になったという「視覚障がい者向けパズルゲーム」を遊ぶことができました。
「コトバシる」のルールは、バラバラに並んだ文字を一筆書きの要領でつなげて、意味のある言葉を見つけ出すこと。試しに1問、例題を出してみましょう。
【例題】
「にこば
こねん」
はい、答えは「ねこにこばん」ですね。もともとは視覚障がい者でも遊べるゲームをつくろう、ということで、最初は「点字」で問題を紙に印刷したのが始まりだったのだそう。現在配信されているDSiウェア版やiPhone版は、そのアイデアから生まれた派生版ということになります。
平石氏によれば、実際に視覚障がい者の方に遊んでもらったところ、「視覚に障がいがあっても遊べるゲームがあることに驚いた」など、おおむね好意的な感触が得られたとのこと。会場では実際に点字プリンタで印刷された「点字版コトバシる」も配布されており、そのユニークな取り組みとアイデアで来場者の注目を集めていました。



文字をつなげるだけなので、実は問題さえ読めれば電源不要でどこでも遊べるのが「コトバシる」のいいところ。会場ではちっちゃな「豆本」による体験版も配布中
どちらもゲームの内容自体は非常にシンプルですが、ゲームと社会の関わりや、ゲーム自体の存在についてあらためて考えさせてくれる、非常にユニークな展示となっていました。CEDEC2011会場を訪れた際には、ぜひ実際に触って、体験してみてはいかがでしょうか。
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