ソーシャルファッションサイト「iQON」を運営するVASILYの金山社長は、フジロックフェスティバルに出演したこともある元バンドマン。そんな音楽の道を捨て、ネットベンチャーを起業した経緯とは。
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ついに起業、でも「受託開発に精一杯」の日々

VASILYは08年11月に、Webサービスを受託開発する企業としてスタートし、それと並行して、Polyvoreに似た仕組みのサイト「iQON」の開発を進めることになった。
とは言っても、受託開発の経験は皆無で、開発者は今村さん1人。営業リソースもないため、仕事はほとんど見つからなかった。たまたま知人からカレンダーサイト「美女暦」のiPhoneアプリを作れる人を探していると聞き、「iPhoneアプリ作れます」と「はったりをかまして」引き受けたほどだ。
美女暦のiPhoneアプリは、App Storeの無料アプリランキングで2位に輝いた。次に開発を請け負った写真集アプリ「妄撮」(現在は販売停止)も、App Storeのエンターテインメント分野で1位にランクインするなどヒットし、設立2年目の売り上げは約6000万円に達した。
iQONも昨年4月に無事オープンし、VASILYは波に乗ったように思えたが、「受託開発に精一杯で、やりたいこと(iQON)を見失ってしまった」と語る。ちょうどそんなとき、Googleがファッション検索サイト「Boutiques.com」を公開。金山社長は「ついにGoogleまで(ファッション業界に来たのか)……」と焦りを覚えた。
「せっかく(ヤフーを辞めて)身軽になったのに俺は何をやっているんだ」――iQONに集中するため、ベンチャーキャピタルから出資を受け、受託開発を止めることにした。オフィスを移転し、エンジニアを中心に社員を7人増やすなど、iQONのための体制を整えた。
iQONは「人と人のつながりから新しいファッションを発見できる」ソーシャルファッションサイト

iQONは、ECサイトから提供を受けた30万件以上の商品画像を使ってWeb上でコーディネートページを作り、公開できる。画像はドラッグ&ドロップで自由にレイアウトでき、背景画像も設定可能。ファッション誌のようにおしゃれに商品を並べたり、商品の雰囲気にあった背景を設定したりと、凝ったページを作るユーザーも多く、自分のファッションセンスを存分にアピールできる場となっている。
基本的な機能はPolyboreと「ほとんど同じ」だが、大きな違いは「日本人にアジャストしたサイト」である点だと話す。「作り手が異なればできる製品が違う。ディティールはもちろん、方向性も」。例えばこの夏は、音楽フェスに合わせたコーディネートを投稿するキャンペーンをiQONで実施したが、これは7〜8月に音楽フェスがいくつも開催される日本の文化に合わせたもの。この文化は「外国ではあまり知られていないはずだし、外国人には企画できないと思う」と、iQONの“日本らしさ”を金山社長は強調する。
ほかのユーザーをフォローする機能を備えた。センスの良いユーザーがどんな着こなしをしているのか、どんなブランドや商品、テイストが気になっているのか知ることができる。気に入ったコーディネートには「LIKEする」ボタンをクリックするか、コメントを残すかして感想を伝えることも可能。iQONの楽しさのポイントは「人と人のつながりから新しいファッションを発見できる」ソーシャルな部分にありそうだ。





現在の会員数は3000人。サイトの主な売り上げは、iQON経由でアイテムが購入された場合のアフィリエイト収入と、ファッションブランドとのタイアップ広告によるもので、「今は完全に赤字」という。だが、日本を盛り上げてくれそうなWebサービスを表彰するイベント「WISH2011」では大賞候補となる10サービスの1つに選ばれるなど、ヒットの兆しも見えてきている。今後は「かわいいコーディネートを簡単に作れる」有料機能を追加するなどして黒字化を目指す。
コーディネートページを作成するAPIを他社に提供することも検討しているほか、秋にはmixiやYahooのIDでサイトにログインできるようにする予定。年内にはiPhone、mixi、Facebookのアプリを公開することを計画している。単純にコーディネートを共有するだけでなく、位置情報との連携や、趣味が似ている人をつなげるようなソーシャルな新機能も検討中だ。
「サイト経由でたくさんの女性がおしゃれになって、幸せにすることができたら、日本中に笑顔があふれるはず。東日本大震災で少し暗い雰囲気の日本を明るくできたらうれしい」――金山社長は元ロッカーらしく、熱く語っていた。