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丸いボールのようなものがふわりふわりと宙を舞う――10月20日開幕の「デジタルコンテンツEXPO 2011」(日本科学未来館)で、防衛省が開発した「球形飛行体」のデモ飛行が行われた。



球形飛行体はその名の通り、丸い外骨格の中にプロペラを包み込んだボールのような形の飛行体。垂直離陸ができるだけでなく、その形を生かして転がりながら着陸したり、転がったまま地上を移動できるのが特徴だ。デモ飛行では、開発を担当した同省技術研究本部の佐藤文幸技官の操縦でホバリングや水平飛行、内蔵したカメラによる撮影飛行の様子を実演した。
直径は約40センチ、重さは約350グラム。プロペラのほかに8個のかじがあり、ジャイロセンサーと内蔵のマイコンによる自動制御で安定した飛行が可能だ。バッテリーで約8分間飛行することができる。最高時速は60キロになるという。

佐藤技官は以前、無人機の研究を行っており、そこで飛行機の垂直離着陸に注目していた。垂直離着陸機は滑走路を必要としない長所がある一方で、着陸の姿勢制御が非常に難しく倒れた場合は再離陸ができないという弱点を持っている。異動後も何か解決策はないかと考えていた。
そしてあるとき、機体を丸くすることでこの弱点を克服できるのではないかと気付いたという。丸い形なら着陸時に姿勢制御の必要もなく、がれきなど障害物の多い地面でも転がりながら着陸できる。
「思い付いたらやるしかない。飛べば理屈を言わなくても信じてもらえる」と語る佐藤技官は、100円ショップや秋葉原でそろえた材料を使って試作機を制作。16カ月という短期間で現在の試作7号機を完成させた。7号機の制作費は11万円ほどだ。
無人機の研究から始まったこともあり、森林や市街地を低空飛行しながらの情報収集や屋内の捜索など偵察任務を想定しているが、もちろん災害現場での活躍も期待されている。外骨格があるため、障害物に当たったとしてもプロペラなどの可動部を壊す心配がない。再離陸の際は、プロペラの逆回転を使う。重心が後方(プロペラと逆の位置)になるよう設計しているため、プロペラを逆回転させると起き上がり小法師のようにぐるっと動き、適切な態勢(プロペラが上を向いている状態)を取ることができる。






防衛省技術研究本部資料「まるい未来型飛行物体」より
球形飛行体ならではの想定シーンと言えるのが、屋上からの監視任務。無人のヘリを使った場合、上空から監視地点に着陸しなければいけないため、目立って監視対象に気付かれてしまう恐れがある。しかし球形飛行体であれば、死角に着地してから屋上を転がって、最適な場所に移動することができるのだ。
福島第1原発での使用を期待する声もあるそうだが、まだ実用化できる段階ではないという。搭載カメラを用いた遠隔操縦や気候、地形など環境適応の検証、そして実用化に向けたコスト面の検討などが今後の課題だとしている。
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