人気ライトノベル「涼宮ハルヒの憂鬱」や「生徒会の一存」シリーズに登場するキャラクターを採用した参考書を展開している出版社がある。ビジネス書から語学書、人文・社会系の文庫まで取り扱う中経出版だ。
ハルヒに「らき☆すた」、さらに「ケロロ軍曹」と、アニメキャラを使った参考書を連発する。1968年創業の伝統ある出版社がなぜ? その仕掛人に話を聞いてきた。
ハルヒにケロロ、コラボ参考書ずらり
会議室に入るなり視界に飛び込んできたのは、数々の人気アニメキャラたち。「『ケロロ軍曹』の漢字ドリルシリーズ」に「計算ドリル」、「『生徒会の一存』で古文単語が面白いほど身につく本」、「『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語が面白いほど身につく本」シリーズ、「『らき☆すた』と学ぶ 化学[理論編]が面白いほどわかる本」が並ぶ。これらは、同社の親会社である角川グループホールディングスとのコラボレーション商品だ。

コラボ商品のほかにも、中経出版が独自で展開する萌え学習参考書もある。「大学入試 萌えわかり化学反応式 重要パターン50」や声優の朗読付きの「ゴロ合わせ朗読CD付 日本史まるごと年代暗記180」。さらに、「倫理、政治・経済早わかり 要点整理」など名前は萌えていないが、表紙に美少女キャラが描かれたものもある。

気になるのは中身だが、「『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語が面白いほど身につく本」では、左側のページに『涼宮ハルヒの憂鬱』のワンシーンをそのまま抜粋したものが、右側のページにネイティブスピーカーが英訳した文章が載っている。重要な単語は赤い文字になっており、懐かしの赤色チェックシートで隠すことができる。よく海外ドラマを観て英語を覚えるという人がいるが、その感覚に近いのかもしれない。内容は学校のカリキュラムに沿った、学習効果のある参考書として作られているという。


仕掛人は中経出版随一、いや唯一のアニメファン

出版業界に次々とコラボ参考書を送り込んでいるのが、仕掛人である学習参考書編集部の部長でプロデューサーの山川徹さん。同社は以前から表紙に美少女を描いた参考書を作ってはいたが、アニメやラノベとのコラボ参考書を展開し始めたのは、角川グループホールディングスの傘下に入った後の2010年からだ。
山川さんは前からアニメが好きだったが、自分の中で「無意識に、深入りしてはいけないとセーブしていた」という。しかし、角川グループ入りによって、社内で「アニメに関わる企画をやっていかないと」という機運が高まり、山川さんが起案するに至る。それまでセーブしていた気持ちが、仕事でアニメに触れるようになったことで高まった。「自分の中で、トリガーが引かれてしまった」と山川さんは当時を思い出して語る。
こうしてコラボ参考書は生まれ、以来、企画は山川さんが一人で担当している。というのも、社内でアニメに詳しいのが山川さんしかいないからだ。
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