ニコニコ超会議のボーカロイドエリアにはVOCALOID 3製品をはじめ面白いものがたくさんあったが、個人的に一番注目したのは「VOCALOIDキーボード」。発表されてすぐにTogetterまとめを作ったくらいお気に入りなのだが、展示ブースで開発者である加々見翔太さんに詳しい話を聞けた。

画像

　VOCALOIDキーボードは、左手で子音と母音を指2本で押さえることで発音を指定し、右手のキーボードでメロディーを演奏する、リアルタイムでVOCALOIDパフォーマンスをするための楽器だ。ハードウェアはVOCALOIDを演奏するためのVOCALOIDボード、制御用のArduino、歌詞入力用のボタン、MIDI鍵盤から構成されている。

　左手の小指から人差し指までを使って子音を指定、親指で、上・下・左・右・中央の十字キーを押すと、日本語の1音が決まる。[K]と[E]を組み合わせると[け]といった具合に。その文字がLEDに表示され、それを白鍵・黒鍵を使って弾いていくのだ。

　動画はこちら。超会議で展示されていたのもこれと同じもの。というか、世界に1台しかない貴重な楽器だ。

Q：自分ではなかなかうまく演奏できないんですが、コツはありますか？

A：子音を押してから母音を押し、右手で演奏する。左手→右手といった具合に交互に演奏することですね。

実際にその場で演奏してもらった動画

Q：子音によっては先行発音が長くとっておくべきものがありますよね。

A：「し」などがそうですね。演奏者の慣れでカバーしてもらうしかないです。

Q：VOCALOID 2のRealtime VSTをMIDIキーボードで弾くのと違いはあるんですか？

A：一緒だと思いますよ。ただ、Realtime VSTの場合には歌詞を先に入れておいて、前後のつながりを計算して出せるので、音質がいいです。VOCALOIDキーボードのほうは、未来の音がわからないので。例えば「つき」という音を発音する場合には【つ】と【き】の間の音を考慮できないのです。

Q：そこは演奏者がスタッカート気味にやるとか？

A：そうですね。演奏者の技術で。

Q：ビブラートはどうしてます？

A：いまは完全に決め打ちです。ただ、手の動きだけでビブラートをつけられるような仕組みをいま作っています。

Q：アフタータッチ（キーを押した後でさらに押し込んだり揺らしたりするのを検出する機能）で？

A：アフタータッチとはちょっと違うんですけど。アフタータッチをこの鍵盤に入れようとすると、元になってる鍵盤（CBX-K1）を変えなくちゃいけなくて、メカニカルにやると大変なので、センサーでなんとかできないかなと。

Q：光学センサーとか近接センサーとかですかね。

A：そんな感じで。いま試作中です。うまくいけば、安い技術で演奏力を高められるという。

Q：（弾いた後で音程を上下できる）ピッチベンドもできるように？

A：そのような、お客さんが希望する機能はできるだけ入れたいと思っています。

Q：いくつかのフレーズをあらかじめボタン的に配置して、それを演奏していくというようなアイデアはどうですか？

A：それは個人的にはいいかなと思っています。リアルタイム性が必要とされないのであれば、例えばTENORI-ONのようなボタンを配置して再生というのもできますし。

Q：その場合、ハードウェアとしては何を使います？　VOCALOIDチップを搭載したMiseluとか？

A：それもいいかなと思っています。載せていい、ということであれば。

Q：VOCALOIDキーボード、価格はどうでしょうね？

A：ぼくとしては、中高生がお年玉でがんばってなんとか買えるくらいの値段でやりたいですね。

Q：ヨンキュッパ（4万9800円）くらいで？

A：そのくらいにしたいなと思ってます。それは製造的なところと相談しなくちゃいけないんですけど。

Q：文字入力のところだけiPhoneでやれないですかね。

A：やることは可能です。フリック入力でも音声認識でも、チップに最終的に言葉と音程が入れば、技術的には可能です。最初はフリック入力でやってみようと思ったんですけど、フリック入力は指を置いて、滑らせて、最終的に離すという、3つの段階を踏まないといけない。この動きでスピード感がなくなるんですね。VOCALOIDキーボードは、指を配置しておけばすぐに音を鳴らせるんですよ。

Q：いまはVY1だけですけど、ほかの音源に載せ替えは可能ですか？　VOCALOID DBを出している各社からオファーがあったりします？

A：音源の載せ替えは可能ですが、まだこちらからお話もしていない段階なので。

　いまは製品化に向けたハードルをひとつひとつクリアしていく段階のようだが、問題点とその解決策はきちんと認識し、対応を進めているようなので、大いに期待したい。