巨大なジオラマを単眼鏡でのぞくと、SF世界を銃器を持って走る兵士や、人工衛星で作業するロボットの姿が。異世界に夢中になっていると、実はジオラマ全体がPCを改造したものだなんて忘れてしまいそう。


SF世界が広がるジオラマ……


実はPCや周辺機器でもあった!
この作品は、第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で優秀賞を獲得したジオラマ&ガジェット「プラモデルによる空想具現化」。PCや周辺機器を、プラモデルを用いてSF世界のジオラマに改造した作品だ。2月5日から国立新美術館などで始まったメディア芸術祭受賞作品展に展示されている。

展示コーナーには戦場風の作品と宇宙ステーション風のものが2点設置されている。展示台には単眼鏡が用意されているので、来場者は精巧な作りをじっくり観察したり、ジオラマの世界に入り込んだような臨場感を味わえる。

単眼鏡でじっくり楽しめる展示に


筐体は中が丸見え。塗装やプラモデルの改造で要塞基地のようになっている。ちゃんとディスクのスロット部分も(右)

モニタ前は戦場。右手前や中央奥の戦車はマウスになっており、画面でマウスポインタを動かせる

メカニックな建物の中にUSBポートを発見。作業員がコードをつなげる仕草をしている。キャラクターがそれぞれ違う動きをしているのも楽しい
内部が丸見えのPC筐体は、兵器ロボットや兵士がいてまるで要塞のよう。周りに置かれた戦車3台も実はマウスで、周辺機器もジオラマの世界を壊さない形で組み込まれている。また単純にPCパーツをいじったのではなく、電子回路や配線などを壊さず保って、作品をPCとして使用できるようにもなっている。空想とリアルの同居に興味を刺激される。


筐体内ではグラフィックボードにまで塗装が(左)。むき出しのマザーボードの上にある人工衛星は、中にUSBポートを納入できるなど手が込んでいる(右)
「兵士たちの目線で双眼鏡をのぞくと、自分が兵士になったようなおもしろさがありますよ」と製作者の池内啓人さんは笑顔で鑑賞方法を解説してくれた。普段から自作のジオラマを鑑賞して楽しんでいて、内覧会ではマイ双眼鏡を持参し、会場でもジオラマをのぞいては喜んでいた。ジオラマ愛がハンパない。
受賞については喜びを表しながら、「プラモデルというおもちゃや趣味のものが美術館に展示されることの意味について、しっかり考えていかなくてはと思いました」と、娯楽分野のものがアートとして評価されることへの深い思いを口にした。


アートとして評価されたジオラマPC。とにかく見どころ満載
「プラモデルによる空想具現化」は国立新美術館の会場に展示される。会期は2月16日まで。
「たくさん用意できるので展示には単眼鏡を置いていますが、双眼鏡のほうがジオラマが立体的に観察できて迫力が違いますよ」と池内さん。見に行くときは双眼鏡の装備を。
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