京都大学は2月17日、遺伝病「家族性自律神経失調症」の治療薬候補化合物を発見したことを発表した。

家族性自律神経失調症とは、遺伝子からタンパク質を作る過程に関与する「IKBKAP遺伝子」の変異により生じ、正しい設計図コピーおよびタンパク質が作られなくなることで発症するというもの。ユダヤ人に多くみられ、症状としては意識を消失するほどの息こらえや劣成長、摂食障害、味覚鈍麻などが現れる。若くして亡くなる患者さんも少なくないが、全身の細胞においてDNA上の遺伝情報を書き換えることは不可能とされ、その治療法はまだ確立されていない。
しかし、今回京都大学医学研究科の萩原正敏教授率いる研究グループは東京大学、東京医科歯科大学と共同研究を行い「IKBKAP遺伝子」の機能に着目。患者由来の細胞に投与すると、IKBKAP遺伝子の変異があっても正しい設計図のコピーと正常なタンパク質が作れる化合物を発見した。
さらに同研究グループは世界で初めて、患者細胞においてIKBKAP遺伝子産物がtRNA修飾に関与することを発見。化合物投与によりその機能の回復も示している。

この研究は独立行政法人科学技術振興機構(JST)などから支援を受けて行われたもの。研究者らは「今回発見された化合物は、家族性自律神経失調症の根本的な治療薬となることが期待されるだけでなく、他の遺伝子疾患にも応用できるとして新たな治療法への道を拓く成果」だとコメントしている。
(太田智美)
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