日本科学未来館は、7月15日から新しい展示としてメディアラボ第15期展示「アルクダケ 一歩で進歩」を公開します。人の歩き方を撮影して解析することで、年齢やその意図などを推定可能な、犯罪捜査への活用なども期待される技術を楽しみながら学ぶことができます。公開前日に開催されたプレス体験会にて、さっそく体験してみました。今回体験できる展示は、歩き方の個性計測と認知能力計測の2種類。

「アルクダケ 一歩で進歩」展示スペース
まずは、歩き方の計測から挑戦。体験者は、10メートルほどの歩行路を2往復するだけで、その様子が撮影・解析され、結果をカードに印刷して持ち帰ることができます。

歩き方計測の様子
ほとんどの人が意識したことがない「歩き方」の個性とはいったい? 計測でわかる項目は以下の8つでした。
- 足の運び方の左右対称性
- 背筋の伸び
- 腕の前振り
- 腕の後ろ振り
- 腕の振りの左右対称性
- 歩幅
- 歩行周期(ペース)
- 歩行速度
記者(30歳)の歩行年齢は、なんと20歳! 10歳もサバを読んでしまいました。この歩行年齢は、これまで約4000人の歩き方を研究した結果とくらべて導き出されたものです。中年太りや猫背は年が上に見られやすく、20代は小さな腕の振り方をするなどの傾向があるようです。

記者の計測結果
また、直前6人の体験者の結果が歩行路横の壁にあるモニターに表示されるので、グループや家族で一緒に体験するとおもしろそう。記者の結果は右下の水色。歩行年齢が若かったにもかかわらず背筋の伸びが一番悪く、歩行速度と歩幅と腕の振りが一番高い数値となっています。単純にはしゃいで歩いていただけということでしょうか……。

直前6人の体験者の結果が表示・比較される
本体験では8つの項目で歩き方の個性を説明していますが、犯罪捜査などで個人特定を行う場合は、また違う方法で解析されているようです。基本的な流れは、防犯カメラなどに写った犯行現場の映像から犯人と思われる人物のシルエットを抽出し、別の場所で撮影された映像から一致する(特徴が近い)人物をリスト化となっています。
続いて、認知能力計測にも挑戦。こちらは、両手にスイッチを持ちながら足踏みし、目の前にあるモニターに表示される計算問題に二択で答えるという内容。計算と歩行というデュアルタスクをいかにこなせるか、歩行速度、歩行安定性、計算中の歩行速度、計算中の歩行安定性、解答時間、正答率がグラフ化され判定されます。


モニター上部のKinectと床の感圧パネルなどで測定
2回挑戦した結果はどちらもB判定。計算問題を3レベル中もっとも難しいモードにしたせいもありますが、歩行安定性が悪いことが目立ちます。うまく歩いているつもりが、足踏みの位置がバラバラになっていたようです。
1度目は慣れない計算にとまどい正答率が低く、2度目は計算に集中し正答率はアップしたものの歩行安定性が落ちてしまいました。計算と歩行の両立、なかなか難しいものです。この認知能力計測は、高齢者支援や医療などの現場での活用が期待されているそうです。


計算の正答率と歩行安定性の両立は難しい
ちなみに、「アルクダケ 一歩で進歩」という展示名は、体験に参加して歩くことで、科学の進歩に役立つという意味も含まれています。体験前や体験後の結果の印刷時に、研究へのデータ提供についての説明がたびたび表示されます。結果をプリントアウトして持ち帰るためには、データの提供が必要となります。

映像などのデータは研究に活用される
上記2つの体験を楽しみつつ、犯罪捜査や高齢者支援などでの活用が期待される技術の研究に関わるというのは、ここでしかできな体験かもしれません。日本科学未来館では、2016年4月11日までに10万人の歩き方に関するデータが集まることを期待しています。
(林健太)
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