学校は楽しい場所だから
学校で暮らすのを目的とした「学園生活部」。
タイプの異なる4人の部員が明るく楽しく学校で過ごしている。それがアニメ放映中のマンガ「がっこうぐらし!」です。

「がっこうぐらし!」第5巻表紙より。左から順に、優しく賢いまとめ役・若狭悠里、シャベルを持った特攻隊長・恵飛須沢胡桃、元気いっぱいの丈槍由紀、真面目で物静かだけど芯の強い直樹美紀
かわいい女の子がいっぱいのふわふわ作品だね!
特に目を惹くのは、右上の丈槍由紀ことゆき。ピンクの髪の毛に帽子が似合う。学校をこよなく愛しており、クラス中の友人と親しくしている、笑顔いっぱいのみんなのムードメーカー。毎日を楽しく、学校で過ごしています。

あ、あれ……?(1巻22・23ページ)
学校には誰にもいない、ということを除けば。
ちょっとちょっと、ゆきは一体何を見ているんだ!? 学校の周囲にいるのは、変わり果てたかつてのクラスメイトたち。生き残った友人たちと住んでいる「学園生活部」の生活圏内以外の場所は、荒廃してボロボロに。
ゆきはそれでも、「今までどおり事件は何も起きていなくて学校は平和」だと思い続け、虚空に語りかけます。
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世界はこんなにも残酷だから
どうやら日本の広範囲で、この現象は起こっている。噛まれれば“かれら”と同類になる。あるいは大勢に襲われて死ぬ。

切り込み隊長、くるみの武器は、シャベル1本(3巻149ページ)
「助かる」あてが全く見つからない。そもそも「助かる」ってなに? この学校を出ること? 外に出ても“かれら”だらけで、帰る場所なんてないよ。行くあてなんてないよ。
みんな気丈に振舞っているけれども、限界です。高校生の女の子、楽観的になれなんてほうが無理。みんなのまとめ役の若狭悠里ことりーさんと、戦闘部隊の恵飛須沢胡桃ことくるみは、精神的にパンク寸前です。

パニックになるりーさん。普段はゆきの前ではこんな姿は見せないのだけど、限界は必ずくる(5巻98ページ)
ただ暮らすのは疲れてしまう。そこで作ったのが、学園生活部。部活の合宿ということにしちゃおうと、りーさんと、顧問となる佐倉慈ことめぐねえが考案しました。
つまり「ごっこ」。ここはまだ学校として機能している場所。規則正しい生活を送って心の平穏を保とう。私たちは、部活中。だから大丈夫。大丈夫。
学園生活部は、今日も元気です
みんな心が潰されてジエンドだった可能性は大でした。しかし心にフタをした(理由や病状は不明)ゆきは、事件が起こった現実が見えなくなり「学校生活楽しくすごそ!」と言うようになった。彼女の明るさが、奇しくも生存者たちの心の支えになります(詳しくは4巻のめぐねえの部活動日誌を読もう)。

学校行事はちゃんとやろう、だって、ここは学校だもの(2巻39ページ)
ゆきは天真爛漫。いつも明るく、元気です。学校大好き。みんなのこと大好き。毎日楽しい!
りーさんやくるみにしてみたら、「楽しい!」なんてまかり間違っても言えません。ゆきがおかしいのは分かっている。ただ彼女に合わせていけば、楽しい日々を送っていることにできる。毎日学校生活を送っていた、あの戻ってこない日々を今までどおり送るふりができる。
いいじゃん。ゆきにあわせましょうよ。それで少しでも平穏が得られるのなら。ただし、ゆきの身は、私たちが守る。
この思考自体に大きなズレがあること、分かっていますとも。正しいか否かの問題じゃない、そうするしかない。

第三者から見たら、ゆきをめぐる環境はおかしいとしか思えない(3巻47ページ)
直樹美紀ことみーくん。途中合流したショートカットの後輩。ゆきの精神にしがみついているような学園生活部を、外から来たみーくんは疑問の目で見ています。
ゆきの心の病みに頼っているなんて、あんまりじゃないか。とはいえゆきの心を治した時どうなるんだろう、みんな追い詰められた日々に潰され、心の安定をあっという間に失ってしまうんじゃないだろうか。自分がそうなりかけたように。
みんなを救う最後の砦、ゆき
ゆきのいるシーンは、本当に和みます。彼女のペースに合わせてさえいれば、とりあえず生存者同士のいさかいは抑えられる。離婚寸前の夫婦が、自分たちの赤ん坊を見て心を落ち着けるかのごとき行動です。
リフレーミングという言葉があります。物事の枠組みを外し、別の枠組みで見直すことです。「助けが来ないかもしれない生活を送る意味なんて無い」という思考の型を「たくさんある時間の中でいっぱいみんなで楽しめたらステキなことだ」と変える。これがゆきの力。

ゆきだって、がんばっています!(5巻105ページ)
おっと、大事なことをいい忘れていました。
ゆきはかわいいです!
「やだこの子何言ってるの、何見てるの、怖い!」。そのとおりです。怖いですよ。
「がっこうぐらし!」はサバイバルホラーというよりも、サイコホラーです。ゆきの妄想に依存して暮らすことで日々が成立している。いつプツッと糸が切れるかも分からない。いつ悪化するか、突然治るか分からない、フラッシュバックでパニックを起こす少女に依存する生活は本当に危うい。
ゆきは自分のことを「頭が悪いから」と言います。難しい話は理解できない。なんとなく、何かでみんなが悩んで限界なのは分かる。でも、きっとそれは、みんながわたしをかばってくれているからだろう。
せめて何かしたい。だから、笑顔でいよう。
明るくみんなを勇気づけたいという優しさ。みんながゆきの明るさに頼っている部分はあるけど、なによりゆき自身が、みんなを励まそうと、がんばっている。
こんな健気な子、幸せにならないとだめだよ……!
でもね。“かれら”が滅んで住んでいる地域が平和になったら、幸せなのかな。ゆきの精神状態が治ったら幸せって言えるのかな。
現実社会では、学校や社会生活の中で、多くの人がストレスと戦っています。りーさんやくるみの戦いと同じ。一生懸命働いている、学んでいるって、すごいことだ。だからこそ、読者側もゆきの明るさに身を任せてしまっても、いいと思うのです。その分彼女の、本当の幸せを祈りたいな、って。

まもなく発売の6巻。とある大きなイベントを越えた後、学園生活部が向かったのは……?
(c) Nitroplus/海法紀光・千葉サドル・芳文社
(たまごまご)
夏だからこそ読みたいホラー漫画
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アイアムアヒーロー(花沢健吾)/これはゾンビですか?(木村心一/さっち/こぶいち/むりりん)/さんかれあ(はっとりみつる)
魔法少女・オブ・ジ・エンド(佐藤健太郎)/ゾンビ屋れい子(三家本礼)/ 彼岸島(松本光司)
提供:エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ 編集部/掲載内容有効期限:2015年8月30日







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