アメリカの深海から、生物の進化をひも解くのに重要なカギとなる、4種の深海生物が発見されました。この4種はいずれも珍渦虫属(チンウズムシ)に分類されます。珍渦虫は、体の4分の3を閉める中空部が口腔の役割をしており、脳、エラ、目、じん臓、肛門を持たないという、まか不思議な生物です。
このニュースが発表されたのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリップス海洋研究所(Scripps Institution of Oceanography)のサイトです。珍渦虫が報告されて以来、生物の臓器の進化を知る上で重要な生物とされてきましたが、分類学上においては60年近くも謎の存在でした。今回プロジェクトチームにより新たに発見された新種を遺伝子解析することによって、分類学上の位置を正しく決定することができたと説明しています。

スクリップス海洋研究所のサイト。イラストは新種のひとつ「Xenoturbella monstrosa」

新種のひとつ「Xenoturbella churro」。日本でもおなじみ「チュロス」に似ていることから命名
このプロジェクトチームの一員である、スクリップス海洋研究所の生物学者 Greg Rouse氏が、初めて新種の珍渦虫を見つけたのは12年前。遠隔操作の深海探査機で、モンテレー湾海底の二枚貝をさらっていたときのことです。発見された新種はその外見から、冗談交じりに「紫色の靴下」と呼ばれていました。とくに今回発見された新種のひとつ「Xenoturbella monstrosa」は靴下似の外見もさることながら、これまでは3センチ以下だった珍渦虫の6〜7倍にあたる、実に20センチという大きさが特徴。まさに見た目も大きさも靴下そのものでした。
同氏は「この発見は、生物の進化を理解する上でいくつか影響を及ぼす」とし、「珍渦虫の分類を固めることによって原始における生物の進化をさらに理解することができる」とコメントしています。
分類を固め、遺伝子を解析することにより、珍渦虫の奇妙な構造は退化したものでなく、進化的に単一のものであることもわかりました。つまり珍渦虫が、すべての命の源である海洋生物の「進化のパズル」における重要なピースとなるということです。ひいては生物全体の進化の過程も明らかになっていくかもしれません。今後の研究が期待されます。
(Jun)
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