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江戸時代の身分制度を示す言葉として扱われていた「士農工商」は、もう学校では教えられていない!? そんな話題が、春先からTwitterを賑わせています。
少なくとも昭和の時代に教育を受けた世代は、武「士」、「農」民、「工」(職人)、「商」人の順の上下関係を示す言葉として、「士農工商」を記憶しています。しかし東京書籍のFAQページを見ると、Q5の項目に「士農工商」の記述がなくなったことが扱われています。FAQページの対象となっている同社の教科書を読んだところ、確かに「士農工商」の記述は見られませんでした。変更が加えられたのは、平成12年度の教科書から。意外にも、16年も前から「士農工商」は消えていたのです。


修正の理由は2点。1つは近年の研究成果から、「士農工商」自体が、身分制度を表す語句として適当でないと判明したことです。江戸時代の身分には、基本的に「武士、百姓・町人等、えた・ひにん等」があり、ほかにも天皇や公家、神主や僧侶などが存在。単純に「士農工商」という表現やとらえ方はされていなかったということです。
もう1つは、「士−農−工−商−えた・ひにん」という、上下関係の認識も適切ではなかったことです。武士こそ支配層として上位にはなりますが、ほかの身分に支配・被支配の関係はなく、対等なものでした。また、えた・ひにんも「武士−百姓・町人等」の社会から排除された「外」の民として存在させられ、ほかの身分の下位にあったわけでなく、武士の支配下にありました。
これらの見解から、東京書籍では「士農工商」の記述を廃止。あわせて、明治維新にて「士農工商」の身分制度を改めた政策と認識されがちだった「四民平等」も、平成17年度の教科書から使用されなくなっています。
このように、近年の研究成果や新説により、歴史的解釈の変更が持ち上がった場合、教科書出版社はどう対応するのか? 東京書籍に問い合わせたところ、教科書は通常、4年ごとに改訂をしているとのこと。同社ではそのたびに編集委員会を組織。記述や擁護の使用についてあらためて検討し、変更を加えているそうです。
かつては賄賂政治の権化のように扱われていた田沼意次が、先進的な経済戦略を備えた政治家として再評価されるなど、研究により旧来の歴史認識が変わることは少なくありません。現行の小学校用教科書は平成27年度に改訂されたもので、32年度からはまた刷新されます。もし年下の人と話す機会があれば、授業の内容など聞いてみると、自分の経験との差違を楽しめるかもしれません。
(沓澤真二)
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