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今年2月にオープンして以来、次々と大ヒット記事を生み出しているサイトがある。
「ポケットモンスター」の田尻智氏や、コーエーテクモゲームスの襟川陽一・襟川恵子夫妻、そして伝説の編集者“Dr.マシリト”こと鳥嶋和彦氏――。「ゲームの企画書」と題し、次々と業界の大物にインタビューしていく連載企画は、これまで7回掲載されており、いずれもネット上で大反響を呼んでいる。もっとも反響が大きかった鳥嶋氏のインタビューに至っては、あれ1本で「数日間、大手ゲームニュースサイトに匹敵するくらいのアクセスがあった」という。

伝説の漫画編集者マシリトはゲーム業界でも偉人だった! 鳥嶋和彦が語る「DQ」「FF」「クロノ・トリガー」誕生秘話(電ファミニコゲーマー)
サイトの名前は「電ファミニコゲーマー」。名前からはまるで「電撃」「ファミ通」「niconico」「4Gamer.net」の4つが合体したような印象を受けるが、それもそのはず、立ち上げたのはカドカワの子会社であるリインフォース。代表取締役と編集長は元4Gamer.netのTAITAIこと平信一氏が務めている。ある意味、これまではライバルだった4媒体をつなぐサービスともいえる。


電ファミニコゲーマー(アプリ版)。オープン当初はiOS用アプリとしてスタートし、その後Android、PCからの閲覧にも対応
ただ「ゲームの企画書」の濃密さに比べると、「電ファミニコゲーマー」のサイト本体についてはまだぼんやりした部分も多い。メインコンテンツは他サイトから記事を引っ張ってきて紹介する“キュレーション”。「ゲーム版SmartNews」と言えば聞こえはいいが、見かたによっては「まとめサイト」のようでもある。キュレーションの対象も、「電撃」や「ファミ通」といったグループ内にとどまらず、個人ブログやまとめサイト、プレイ動画など幅広く、良くも悪くも「雑食」な印象を受ける。
一体「電ファミニコゲーマー」とは何なのか。大ヒット連載「ゲームの企画書」はどのようにして生み出されているのか。「電ファミニコゲーマー」の編集長であり、「ゲームの企画書」も手掛ける平氏にお話をうかがった。

リインフォース代表取締役・平信一氏。「電ファミニコゲーマー」の編集長であり、「ゲームの企画書」も平氏が担当している。4Gamer読者には「TAITAI」のペンネームでおなじみ

「ゲームの企画書」これまでの取材対象とブクマ数。7本中実に3本が1000ブクマ超えというとんでもない打率
「エイジ・オブ・エンパイア」が電ファミ誕生の原点
―― 「電ファミニコゲーマー」(以下「電ファミ」)の名前は「電撃」×「ファミ通」×「ニコニコ」×「4Gamer.net」の合体を思わせますよね。この媒体は、そもそもどういうきっかけで生まれたんですか?
平信一(以下、平):
一応、公式見解では4つの媒体はそれぞれ関係ないということになっています。この名前は川上(量生。カドカワ代表取締役社長)さんのアイデアですね。
―― 4Gamerで川上さんが「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき」を連載されていて、平さんはその担当でしたね。あの記事がルーツだったんでしょうか。
平:
明らかにルーツですね。あの連載自体が川上さんとのいろんなご縁から始まっていて。川上さんとはもともとネットゲームの友達だったんです。ドワンゴがダイヤルアップの通信サービスをやっていたころ、PCゲームの通信対戦サーバを提供していたんですよ。そこで「エイジ・オブ・エンパイア」や「DOOM」をプレイしていたメンバーの中に、ドワンゴの古株だった川上さんたちがいて。ただ当時はゲームの中だけのやりとりで、実際に会ったことはなかったですね。

任天堂・岩田氏をゲストに送る「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」最終回――経営とは「コトとヒト」の両方について考える「最適化ゲーム」(4Gamer.net)
―― 川上さんはドワンゴのサーバー管理者でもあり、プレイヤーでもあったんですね。
平:
そのときはドワンゴがどういう会社で、川上さんが社長であることも知らなくて。ただ当時の僕はプレイヤーとしてそこそこ有名だったので、川上さんは僕のことをよく知っていたそうなんです。それが最初の出会いだったんですが、しばらくするとそのゲームからも離れてしまって。で、2007年ごろにドワンゴがニコニコ動画をリリースして、すごく盛り上がったじゃないですか。あまりに面白かったので、4Gamerでもいろいろ取材をして記事を書いたんです。それを川上さんが目ざとく見つけて、編集部に直で電話をかけてきたんですね。
―― 川上さん側からアプローチしてきたという。
平:
それで1回取材させてもらったけど、そこからまたしばらく間が空いて。そのあと川上さんがジブリに入社したので、今度はこちらから連絡して取材させてもらったんです。その記事がすごい反響を呼んだことが、あの対談連載のきっかけの1つですね。

ジブリは決して続編を作らない有名ゲームスタジオのようなもの――スタジオジブリに入社したドワンゴの川上量生氏が見た,国内最高峰のコンテンツ制作の現場とは(4gamer.net)
―― 川上さんに書いてもらうのではなく、対談連載という形になったのは?
平:
もともと川上さんのブログは読んでいて、編集者としては川上さんに何か書いてほしかった。でも、そんなの面倒くさいよって話になり、「対談を書き起こしますから」ということで強引に決めていったんです。ちょうどゲームメディアのいろんな課題が表面化してきたころで、何かしら他の道を探らないといけないという思いもあって。そのヒントを川上さんから得られるといいな、という下心もありましたね。だからあの連載は、当時の僕の疑問や悩みに対して、川上さんが真摯に答えてくれている。それが面白くなった1つの理由かなと思っています。
―― 「電ファミ」や母体となるリインフォースも、そうした川上さんとの縁から始まったわけですね。
平:
今思えば、角川とドワンゴの経営統合の話が裏にあったんでしょうけど、川上さんから個人的に「ファミ通とゲームのポータルをやりたいと思っているんだけど」と相談をされたことがあって。とはいえ、それは「4Gamerとは競合になるので協力は難しいです」みたいなやりとりをしていたんです。それで当時の4Gamer編集長だった岡田さんにも相談をして、個人で行くよりは4Gamerとして参加できる枠組みであればやりやすいですと話したところ、リインフォースという会社の形で関係各所に筋を通す方向に固まっていったんです。
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