宇宙飛行士が無断でサンドウィッチを宇宙船に持ち込んで宇宙へ飛び立ってしまう、という事件があったことをご存知でしょうか。この行動が宇宙食の開発などにどんな影響を与えたのかが分かるアニメーションムービーが公開されています。
主人公は、宇宙飛行士のジョン・ヤングさん。1965年に打ち上げられたジェミニ3号に登場する際、NASA(米航空宇宙局)には内緒でコンビーフサンドウィッチを船内に持ち込んでしまいます。

ヤングさんはジェミニ宇宙船、アポロ司令・機械船、アポロ有人月着陸、スペースシャトルの4つを経験している唯一の飛行士
安全上の問題から、宇宙に地上食を持ち込むことは禁止されていたのにヤングさんはなぜコンビーフサンドウィッチを持ち込んだのでしょうか。


宇宙に向けて出発するシャトルには、スペースデブリなどさまざまな障害がつきもの


と、突如現れたコンビーフサンド。こいつが波乱を巻き起こす
宇宙にはスペースデブリ(宇宙ゴミ)や宇宙線などたくさんの危険があります。例えば地上では安全においしく食べられるサンドウィッチですら、宇宙では危険因子となり得ます。食べ物が飛散して計器などが故障する可能性があるからです。これを防ぐため、1960年代当時、宇宙食はパッケージ入りのピューレなどが主流でした。


この当時宇宙食といえばピューレやパッケージ入りが主流。しかし、ヤングさんはコンビーフサンドを無断で持ち込んでしまう
しかし離乳食のような宇宙食に不満を持つヤングさんは、勝手にコンビーフサンドウィッチを持ち込み宇宙へ。このとき、ヤングさんは自分が持ち込んだものが飛行士たちの命を危険にさらす原因となるということを十分理解していませんでした。


「食べてみましょう」とサンドウィッチを勧めるヤング氏と食べちゃうグリソム船長(おい
当時ヤングさんとジェミニ3号に搭乗していたガス・グリソム船長のやり取りが動画にも使われています。
グリソム船長が「何だそれは」と問うと、ヤングさんは「コンビーフサンドですよ」と悪びれることなく回答。その後グリソム船長に「どんな味か食べてみましょう」と勧める始末です。2人は「少し匂うな」などと朗らかに話していますが、閉鎖空間における臭気は敬遠される傾向にあり、現在でもにおいの強い魚料理などを嫌う飛行士は少なくありません。


2人のやり取りにキョトン顔のNASA職員と、宇宙船を漂うバラバラコンビーフサンド
当然、宇宙空間でサンドウィッチが原型を留めるはずはなく船内でバラバラに。グリソム船長はバラバラのサンドウィッチを食べながら「最高のサンドウィッチってわけではないね」とジョークを飛ばしています。
このやり取りに激怒したのがNASAの地上スタッフとアメリカ合衆国議会です。無断でサンドウィッチを持ち込んだヤングさんはこの後こっぴどくしかられることとなりました。


軽はずみな行動とNASAにこっぴどくしかられたものの、その後の宇宙食改革へつながった
しかしこの行動は宇宙飛行士の生活に食事の質がとても大切であると知らしめ、宇宙食開発を革新的に進歩させました。
またヤングさんはその後、ジェミニ宇宙船、アポロ司令・機械船、アポロ有人月着陸、スペースシャトルの4つを経験している唯一の飛行士としてNASAに42年間勤務し続けました。
(Kikka)
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