飲み屋街のイメージがある東京・赤羽に、とてもファンシーな絵本・児童書の専門店「青猫書房」があります。猫好きとして、店名に魅かれるものを感じたので行ってみました。

JR赤羽駅東口から徒歩7分。喧噪(けんそう)から外れ、大きな通りから1本入ってしばらく歩くと、素朴な住宅街の中に真っ白いスタイリッシュな建物が表れました。「青猫書房」の飾り文字と猫のシルエットが描かれた看板、そして入り口の上から下がっている猫のシルエットが、まるで絵本の世界へ誘っているようです。さっそく入ってみましょう。



店内は広々としており、爽やかな木の香りが鼻腔(びくう)をかすめます。青猫書房がオープンしたのは2年前。有名な木造の建築家による建物で、広い店内にはたくさんの絵本や児童書が並んでいます。

入り口に段ボールでできた猫ちゃんのインテリアを発見。この日は雨が降っていたので傘立てを利用したのですが、傘立てにも2匹の黒猫ちゃんが顔を出していました。


よく見ると、店内のあちこちに猫ちゃんの人形や置き物が隠れています。絵本を選ぶだけでなく、猫ちゃんを探すのも楽しそうです。




店主の岩瀬惠子さんは、本と猫の話題になると話が止まらなくなるくらい、本と猫を愛している方。「青猫書房」という店名は、ちょうど店のオープンが決まったときに黒い子猫を拾ったことが由来だそうです。
「黒猫書房だと、(クロネコヤマトの)宅急便屋さんと同じになってしまうと思い、黒い毛のことを『青毛』と表現することもあるので『青猫書房』にしました。また、これはあとづけですが、絵本の『11ひきのねこ』シリーズでは2作目からは猫たちの体の色が青くなります。そして、萩原朔太郎の詩集にも『青猫』というタイトルのものがあります。いろんな理由があって『青猫書房』という店名にしました」(岩瀬さん)
黒い子猫、もとい青い子猫を拾ったとき、既に4匹の猫を飼っていたという岩瀬さん。当時流行っていた大河ドラマの「黒田官兵衛」から「官兵衛くん」という名前をつけ、ミルクを飲ませて育てたのだとか。




外に飛び出してしまった際、交通事故の心配があるとの理由でお店には出ていない官兵衛くんですが、「おじいちゃんになって眠ってばかりになったらお店デビューもあるかも?」と岩瀬さん。
猫の本のコーナーも
多くの絵本や児童書が取りそろえてある青猫書房。どのような基準で選んでいるかも聞いてみました。
「長く読み継がれて来て、今後も読まれていってほしい本と、お客さんにオススメされた本を基準に選んでいます。特に『どうぶつ会議』(岩波書店)は1954年発行なので、62年間も読まれています。ベストセラーの『いないいないばあ』(童心社)は1967年発行です。これはみなさん、小さいころに読んだことがあると思います。『スーホの白い馬』(福音館書店)も1967年発行。この絵本は横長の絵本ですが、モンゴルの広い風景を表現するために横長なんです。絵本の形にもきちんと意味があるんですよ」(岩瀬さん)


店内には猫の本のコーナーも。猫の本は目についたら入荷するようにしているそうです。




子ども向けの本だけでなく、大人でないと意味の分からない絵本や、大人になってあらためて読むとまた違った感想を抱きそうな絵本、詩集のコーナーも。


店の奥にはカフェスペースもあり、ドリンクを飲めるようになっています。このスペースは展示室も兼ねており、この日は「ポーラセーツ」という、白いお皿にシールを貼ったり絵を描いたりした作品が展示されていました。展示は1〜2週間で入れ替わり、取材日の前の週は猫のイラストが人気の画家、ヒグチユウコさんの原画が展示されていました。ほかにも、読書会や読み聞かせなどのイベントが週1回ほど行われています。





本選びの相談にも乗ってくれる
友人が2カ月ほど前に出産し、出産祝いに絵本をと考えた筆者。絵本をプレゼントしたい気持ちはあるけれど、果たしてまだ2カ月の赤ちゃんに絵本を読んで分かるのか? という疑問も浮かびます……。



こんなときは岩瀬さんに相談です。
「昔は、2〜3歳になってから読み聞かせをする親御さんが多かったのですが、今のお母さんたちはすぐに育休から復帰するので、子どもといる時間が限られています。そのため、0歳児のうちから読み聞かせをする方も増えているんですよ。先日も0歳児を連れたお母さんがお店にみえましたが、お母さんが読み聞かせをしてあげると、声と絵に反応してじっと聞き入っていました。絵本も、抽象的な図形が描かれているだけで大人が読むとよく分からないけど、赤ちゃんが見ると喜ぶという作品が増えていますね。また、赤ちゃん用の絵本は、危なくないよう角が丸くなっていたり、赤ちゃんがしゃぶってもへたらないような丈夫で安全な紙が使われています」(岩瀬さん)




岩瀬さんに赤ちゃんにオススメの絵本を数冊選んでもらい、その中から2冊をプレゼントすることに決めました。

大人になってから絵本を読む機会はあまりありませんが、たくさんの絵本に囲まれて触れてみると、とても心が洗われました。小さいころに読んだ思い出の絵本に出会うたび、懐かしさもこみあげます。1冊の本に心救われたというエピソードをよく聞きます。絵本にはそんな力が隠されている――「青猫書房」はそう感じられる場所でした。






(姫野ケイ)
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