「以前ご入院してくださったしまりすくん! 皮膚移植手術を受けてくださいました」――先頃、ぬいぐるみ修繕のビフォー&アフター写真のツイートが話題になりました。表面の生地がはがれた痛々しい姿の“しまりす”のぬいぐるみが、修繕後、見事なまでにきれいな姿となり、よみがえっています。


投稿主は「フモフモランド&ぬいぐるみ病院(@cocoro_bz)」というアカウント。“フモフモさん”というぬいぐるみを販売している「フモフモランド」と「ぬいぐるみ健康法人 もふもふ会 ぬいぐるみ病院」(以下、ぬいぐるみ病院)の公式アカウントです。ふむ、なにやら“かわいい”の香りがしてきましたよ……。
ぬいぐるみ病院のWebサイトを見ると、そこにはなんともかわいい世界が広がっています。ここでは、ぬいぐるみを修繕・メンテナンスしてくれますが、“病院”とあるように、人間と同じような扱いをしています。いや、人間相手の病院より至れり尽くせりかもしれません。

ぬいぐるみ病院に入院するときにはまず「もんしんひょう」を記入し、治療(修繕・メンテナンス)のコースを指定。全身を洗浄する時に使用するフランス製トリートメント剤の香りも選べたりします。もうこの時点で人間相手の病院のほうが負けてる感じが……。

治療内容には、全身綿入れ替え、部分綿入れ替え、全身エステ(シャンプー・マッサージ・トリートメント)、ビーズ袋再生手術などがあり、冒頭のツイートにあったような重症例では“皮ふ移植手術”なども行います。

病室の様子も一部公開されており、横になった入院患者さんたちのそばにはお世話しているナースさんが。ナースさんも、そしてドクターもぬいぐるみです。入院前にナースさんを選べるほか、「ご家族さま専用ページ」から入院後の患者さんの様子を知ることもできます。


2〜3週間の入院期間を経て元気になり、めでたく退院となった患者さんにはお祝いのリボンと万が一の化膿止めのキャンディが処方されます。もおおお……一から十までかわいいいなあああ! このぬいぐるみ病院の世界は、フォト絵本「ハイ!こちらぬいぐるみ病院です。」にもなっています。

このかわいい世界観を作り上げたのが、ぬいぐるみ病院の理事長(別名:かわいい子お世話係)の堀口こみちさん。もともと、堀口さんのやっているぬいぐるみ店「フモフモランド」のお客さんを対象としたサービスでしたが、お店のお客さん以外からも問い合わせがくるようになり、全てのぬいぐるみを対象とした“ぬいぐるみ病院”が誕生します。
どうして、このような“病院”を作ったのか、堀口さんにお聞きしました。
―― “治療”“入院”など人間の病院と変わらない表現をしていますが、この世界観はどのようにして生まれたのでしょうか?
堀口さん もともと、ぬいぐるみをモノとは思っていないので自然なことでした。以前から、かばんの修理屋さんや洋服屋さんがぬいぐるみの修繕をしたり、クリーニング屋さんが洗ってくれたりということはありましたが、「クリーニングの洋服と同じ扱いをされるのでは」「冷たい真っ暗な部屋に置かれてさびしいのでは」と心配されるご家族のお声があり、私たちのぬいぐるみ病院では“大事なかわいい患者さま”として心を込め、尊敬を持って、お預かりしたぬいぐるみに接しています。

―― ぬいぐるみといつも一緒にいるのが子どもの場合、その子の了解をとってほしいと、ぬいぐるみ病院のサイトに書いていますね。ぬいぐるみと人との関係について深く考えているんだなぁと印象的でした。
堀口さん 毎日一緒にいるぬいぐるみと離れると不安になる子どもや、ぬいぐるみの香りがトリートメントなどで変わると不安になる子どもが実際にいます。引っ込み思案で人と話ができない子どもが、ぬいぐるみの前では自分のありのままでいられたり……。そのぬいぐるみをお友達にしていることで、バランスをとっているんですね。中には“もう大きいのに(それなりの年齢なのに)、いつまでもぬいぐるみといて大丈夫?”と心配されるお母さんもいますが、大人であっても問題ありません。海外出張にぬいぐるみを同行させているバリバリのビジネスマンの方もいらっしゃいます。
―― そうなると中には子どものころからずっと一緒にいるぬいぐるみが患者さんで来ることもあるんでしょうね。その場合、やはり難手術になりますか?
堀口さん 例えば、皮ふが弱くなっている場合、裏から補強して皮ふを強くする手術を行いますが、できるだけ質感や顔の雰囲気が変わらないよう心掛けています。ただ、“年齢”とともに手術が難しくなっていくのは事実です。

―― これまでの患者さんで特に印象深い症例は?
堀口さん おひとり、おひとりに“物語”があるので……思いの強い方が多いのですね。(もんしんひょうに)「命」と書いた方もいました。その時、ああ私たちは命をお預かりしているんだな、と深く受け止めました。ほかに、お子さんを亡くされた日にお迎えしたぬいぐるみの治療をお願いされたことも印象的でしたね。お子さんを亡くされて、もうその“子”しかいないのですと……。
堀口さんのお話を聞いていると、ぬいぐるみには命が宿っていると思えてきます。少なくともその“子”の家族にとっては、命の宿った存在であるのは間違いありません。ぬいぐるみ病院の世界観は、ただ単に“かわいい”を目指したものではなかったのです。
ぬいぐるみ病院には毎月1000件ほどの申し込みがありますが、1日6人の患者までしか対応できないので現在1年待ちという状況。今後、スタッフを増やして対応していくとのことです。多くのぬいぐるみとその家族がここで幸せになるといいですね。

(写真提供:ぬいぐるみ健康法人 もふもふ会 ぬいぐるみ病院(R))
(五月アメボシ)
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