ライフネット生命保険は15日、創業者である出口治明会長が6月25日の株主総会をもって代表取締役会長を退任すると発表しました。ねとらぼ編集部から会社が近いご縁もあったので、出口会長と立ち食いそばを食べに行きながら退任理由と今後について語ってもらいました。

出口治明会長


立ち食いそばを食べに行く機会があったので少し話をうかがいました
いつもお昼は立ち食いそばやワンコインのお弁当だという出口会長、この日は500円の鶏肉せいろそばを注文。退任理由については「ブログやFacebookで語っている通りですけれど……」と、自身でつづった文章をスマホで見せてくれました。
1つは次世代の育成。ライフネット生命は昨年で創業10周年を迎え、これまで出口会長は会社を軌道に乗せることに注力してきましたが、次の10年は30代の新任取締役を前面に立ててサポート役に回るとのこと。客層も大半は30代が中心なので、同社のイメージを考慮し若い経営陣を押し出した方が望ましいと考えたそうです。
「6月から新たに取締役となる2人は32歳と37歳。ぼくは4月で69歳、2人足してぼくと同い年。古希(こき)のおじさんよりは、30代の若い2人の方が将来にとって頼りになるでしょう」と、出口会長は朗らかに笑います。
また創業時から「常に社員に寄り添おう」と、コールセンターの終業時刻(22時)までに講演などが終われば必ず帰社して社員の顔を見て、週末も東京にいれば必ずオフィスに顔を出すようにしていたとのこと。しかし昨秋ごろから時折そのまま帰宅するようになったことを振り返り、「僕の体が陣頭指揮ではなく後陣に回るように促している」と感じたといいます。

今後の活動については、「当面は名刺の肩書きが『代表取締役会長』から『創業者』へと変わるだけでしょうね。次世代育成と、ライフネット生命を一人でも多くの方に知ってもらうための広報活動を、一所懸命やるといったところでしょうか」。
ライフネット生命保険では2カ月に1回社員向けに「出口塾」を開催。出口会長が講師をしながら、若い社員に本を読み互いにディスカッションさせることで、これまで得てきた経営・仕事についての知識や経験を学んでもらっています。
「どんな組織であっても高齢者の生きる価値は、若い次の世代に経験をちゃんと引き継いで、育てることにあります。ライフネット生命の次の10年も60歳とか50歳に託すのは面白くも何ともないですが、30代の2人に託すというのは本当に楽しみでワクワクします。30代だったら10年後も間違いなく元気に働けますから」(出口会長)
新任取締役の2人について「孫悟空の術で生み出した、ぼくの分身のようなものです」とも語っていた出口会長。還暦後にネット生命保険の先駆けとしてベンチャー企業を成功させたその経営手法や精神は、次世代へ受け継がれているのでしょうか。そばは5分とかからず食べ終え、膳を下げながら店員に「おいしかったです、ごちそうさま」とお礼を告げていました。
(黒木貴啓)
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